(4)
7.
僕はたぶん、正確には十五秒から三十秒のあいだ、ぼうっと玄関先に立ち尽くしていた。それからハタと気づいて、スニーカーを突っ掛けると、ドアを開けて通路に飛び出した。手すりから身を乗り出して、テンコの姿を探したが、彼女の姿は見渡す限り、どこにもなかった。僕は「テンコ」と声に出して呼んでみた。返事はなかった。もう一度声を大きくして呼んでみようと思ったが、時間を考えて止めた。こういうところが僕のA型たるところである。そしてそれが自分の嫌いなところでもあるのだ。
僕は手すりに両肘を付いて、ポケットからマイルドセブンライトを取り出して吸った。高校生ぐらいの若いカップルが、自転車に二人乗りして笑いながら通り過ぎた。僕はいったい何をしているのだろう、と考えた。煙草を吸い終わると、足元のコンクリートの通路で踏み消して、吸殻を外に蹴り飛ばした。
部屋に戻ると、リビングのテーブルの上に取り残された、二つのマグカップを流しのシンクに置いた。二つ。確かに二つある。洗おうかと思ったが、明日の朝にすることにした。朝になっても二つあることが確かめられるように。
流しの前に突っ立って、そんなことを考えている自分に気がついて、僕は両手で頭をぼりぼりと掻いた。ホントに、オレはいったい何をやっているんだろう?
自分がまだ会社帰りのネクタイをした格好のままだと気づき、その場で全部脱ぎ捨てると、風呂場に入って熱いシャワーを浴びた。目をつむって頭からシャワーを浴び続けた。そして考えた。あの頬に感じた唇の感触は本物だった。湿度も、触感も。それはけして冷たいゼリーのようなものではなく、血の通った人間のものだった。確かに。僕は頭からシャワーを浴びながら、ぶるぶるっと頭を振った。
バスタオルで頭を拭きながら風呂場から出ると、僕はそこでようやく留守電のランプが点滅していることに気づいた。僕は全身をバスタオルで拭いながら、ファックス兼用の留守電のスイッチを押した。用件は一件です、という無味乾燥な機械の女性の声が告げると、ピッという発信音の後にメッセージが聞こえてきた。
―― もしもし、アサコです。……またかけます。
機械の声がメッセージを九時半に受けたことを伝えていた。僕はバスタオルで頭を文字通り掻き毟りながら、叫び出したい衝動をどうにかこらえた。
実を言うと、僕は今年のアタマからツイていると思っていたわけではない。ツイていると思い始めたのは、初めての会社に入って無我夢中で二ヶ月が過ぎて、ここに引っ越してからのことである。むしろ、会社に通い始める前の三月ぐらいまでの僕は、世界で一番ツイていない、と思っていた。
その第一の原因がアサコである。
ちなみに第二の原因は第一志望の大手出版社をすべて落ちたことだ。
僕と土田麻子は大学の同級生だ。学部は違うが、同じ軽音楽サークルに所属していた。彼女が入ってきたのは二年になってからだった。友達に連れられてサークルにやってきた彼女を初めて見たときは、信じられないくらいにキレイだ、と思った。放っておけば僕が彼女に惹かれてしまうのは目に見えていた。だから彼女のことはなるべく見ないようにしていた。高嶺の花なのだと。そんなわけなので、どういうわけか彼女が僕のバンドのボーカルをやることになっても、なるべく女性として見ることを避けていた。小心者の僕は、彼女に恋して傷つくことを恐れていた。ベースの宮本同様、同じバンド仲間としてだけ見るようにしていた。
それがある日、当時住んでいた高円寺のボロアパートでいつものようにぼうっとジェフ・ベックかなんかを聴いていたところに、アサコが泣きながら電話をかけてきた。スグルのことが好きなの、と。僕は腰が抜けるほど驚いた。電話を切った後で、僕は信じてもいない神様に何度も何度も感謝した。世界で一番ツイていると思った。
そんなことで、僕はサークルで一番の美人と、三年になってから付き合うことになったのである。僕らは正確に言うと、二年三ヶ月ほど付き合った。途中で、僕は留年して五年目の学生生活を送ることになり、彼女は一足先に卒業してレコード会社に就職した。つまり、それが去年の話だ。彼女が会社に勤め始めてから僕らのリズムはおかしくなった。まず、彼女がレコード会社の宣伝という、傍から見るとやたらと派手な仕事を始めたことも原因のひとつだ。彼女は生き生きとして、忙しそうだった。学生のときから比べると、会える時間も少なくなったが、タマに会うと彼女は目を輝かせて、本当に楽しそうに仕事の話をするのだった。僕は内心それが羨ましくてしょうがなかった。自分が酷く子供に見えた。だからある日、アサコが酷く真面目な顔で、あなたわたしと結婚する気があるの、と問い詰めてきたときに僕は即答出来なかった。本心はこのまま行けば当然結婚するものと思っていたし、アサコが僕には過ぎた女であることも分かっていた。でも、僕は、うーん、分からない、という曖昧な答えしか出来なかった。そのときの僕は彼女に対して多大なコンプレックスを抱いていた。ひとつには僕が留年する原因となった、僕の就職の失敗がある。僕は第一志望の大手出版社にことごとく落とされてしまった。いまだに学生の身分である。かたや、彼女は巷で大ヒットを飛ばしている新人アーティストの担当宣伝ウーマンとしてバリバリに仕事をこなしている。そのときの僕は男としてのプライドが即答を拒んでいた。
僕の答えを聞いて、彼女は酷く落胆したように見えた。しかし、プライドだのコンプレックスだのという言葉がアタマに飛び交っていた僕には、それ以上何も言えなかった。そのころから僕らはぎくしゃくし始めた。彼女の話によると、彼女はますます忙しくなり、会える時間は極端に少なくなった。そしてちょうど一年前の今ごろ、彼女が僕に告白した。会社の宣伝部の先輩とホテルに行ってしまったと。僕はそれを聞いて愕然とした。高校のころからバンドを始めた僕は、それまで自分で言うのもヘンだが、結構モテていた。しかし、アサコのような激しい告白をされたことはなかった。しかも、アサコのようなキレイな子から。だから、僕はいつのまにか、アサコだけは僕を裏切ることはけしてない、と勝手に思い込んでいた。それだけに僕のショックは大きかった。アサコは泣きながらゴメンと謝った。僕は許そうと必死で努力をした。一度出た別れ話も、お互いにもう一度やり直そうと話をした。しかし、結局はアサコの方から離れて行った。アサコは僕が嫌いだと言った。僕の目が嫌いなのだと言った。僕はなかなかそれが信じられなかった。あんなに激しく泣きながら好きだと言ってくれたアサコが、こんな風に変わるなんて信じられなかった。僕は彼女がきっぱりと僕とはもう会わない、と言い残して去って行ってからも、なかなかそのことが信じられなかった。しかし、年末も近付いたころ、同級生の噂で彼女がその先輩と婚約したことを聞き、彼女は僕の元には帰って来ないのだということをようやく僕は受け入れた。要するに彼女は結婚というものをしたかっただけなのだ。そして僕は極度の人間不信に陥った。しばらくは誰とも付き合う気になれなくなった。現在の僕に彼女がいないのも、この人間不信によるところなのだ。
こうして、世界一ツイていると思っていた男が、世界一ツイていない男になったわけだ。
確か宮本の話によると、彼女は先月結婚しているはずである。その彼女がいまさらいったいなんだと言うのだ? しかも、よりによってこんなときに。今となっては、僕にとってアサコは過去の亡霊のようなものだ。より正確に言えばトラウマだ。
僕はもう一度バスタオルで頭を掻き毟った。
ベッドに入っても、今日もなかなか寝付けなかった。僕は昨日と今日のことをもう一度反芻してみた。妙だ。僕はまるで当たり前のように、幽霊――まあ自称ではあるが――と会って、当たり前のように会話して、おまけにキスまでされた。しかも彼女はここで死んだと言っているのである。改めてそのことを考えると、背筋がぞくっとするような恐怖を覚え、思わずベッドから上半身を起こして薄暗い辺りを見回した。僕はふう、と溜息をひとつつくと、ベッドサイドの電気を点けて、煙草に火を点けた。煙を吐き出しながら、これが当たり前の反応なのだ、と思った。それなのに何故僕は彼女に対して恐怖を覚えないのだ? しかも、彼女を目の前にすると、彼女の言っていることが全て本当のことに思える。幽霊だということも、それほど不思議にも思えない。いったい僕はどうしてしまったのだろう? やっぱり僕は幻覚でも見ているのだろうか? だとしたらキッチンのシンクにある二つのマグカップはどういうことだ? 今朝みた口紅の跡は?
僕のアタマは混乱する一方で、目はらんらんと冴える一方だ。僕は寝るのを諦めてベッドから起き上がると、煙草をくわえたままサッシを開けてベランダに出た。心地よい風が吹いてくる。手すりに両肘をついて、煙草をゆっくりとふかした。見下ろすと、眼下の駐車場には一日の仕事を終えた個人タクシーの車が帰ってきたところだった。何事もなく一日が終わったと言わんばかりに。遠くで環八を走る車の音が微かに聞こえる。どこかで犬の声がする。何もかもいつもと変わらない。普段と同じ静かな夜だ。僕は煙草を深く吸い込むと、煙を夜気に向かって静かに吐き出した。煙は微かに吹いてくる風に押し流されて、消えて行った。短くなった煙草を手すりに押し付けて消すと、吸殻を放り投げた。吸殻は放物線を描きながら駐車場の屋根でわずかにバウンドした。僕はもう一度溜息をついた。僕はいったいどうしたというのだろう? 気でも狂ってしまったのだろうか? 真面目な話、一度医者に診てもらった方がいいのかもしれない。知らぬ間にストレスが溜まっているのかもしれない。遅れてやってきた五月病の一種なのかもしれない。それともアサコから受けた傷が今ごろ幻覚となって現れてきたのかもしれない。とにかく僕は変だ。僕はどうかしてる。それは間違いない。僕は何度目かの溜息をつきながら、しばらく夜空を見上げていた。
8.
翌朝の僕はきっと酷い顔をしていたに違いない。僕はすっかり混乱したままだった。頭が全く整理がつかないまま、明け方にようやく眠ったせいで、今日も酷い寝不足だ。
ぼうっとした頭で、シンクのマグカップを洗った。やっぱり二つあった。だが、それがいったいどうしたと言うのだ?
僕は歯を磨きながらアサコの留守電を思い出した。それは今となっては傷口から入り込む雑菌のようなもので、頭痛の種にしかならない。僕の頭は一度にそういくつも処理出来るほど高性能には出来ていない。とりあえず、アサコのことは頭から追い出すことにした。
いつものトーストとコーヒーの朝食を摂りながら、このままじゃダメだ、と思った。そのうち寝不足で参ってしまう。もし本当に幻覚を見ているとすると、と考えて、次第に狂っていく自分を想像してぞっとした。とにかく一度医者に相談してみよう。トーストを齧りながら、電話帳を引っ張り出してきて、病院の「神経科・精神科」というページを開いた。一番近いところ、と探してみると、駅前にあった。受話器を取って電話すると、予約したいのですが、と言った。一週間後の六時なら取れますという答えが帰ってきた。僕はそれでお願いします、と言って名前を告げて電話を切った。システム手帳に予定を書き込みながら、こういう医者も案外混んでるものだな、と思った。
相変わらず混み合う田園都市線の吊革につかまりながら、窓に映る自分の顔を見た。まるでお通夜にでも出るような顔だ。おまけに右側の髪の毛が立っている。僕はその寝癖を撫で付けながら、昨夜のキスの感触を思い出した。それは確かに甘酸っぱかった。
会社は相変わらずガラガラだった。僕はおはようと言う気力もなく、十五分遅れのタイムカードを押すと、椅子に腰を落として、既に一日を終えたような溜息をついた。僕が宙を見つめてぼうっとしていると、隣の香取さんが声をかけてきた。
「安川さん、どうかしたんですか?」
「え、なにが?」
「まるで幽霊でも見て来たような顔してますよ」
「えっ?」
僕は心底どきっとした。そして、どうして分かったの? という言葉を飲み込んだ。
とにかく、仕事をやる気分ではなかった。僕はなんとなく昼過ぎまで会社で時間をつぶし、それからホワイトボードに行き先を適当にいくつか書いて、出かけます、と香取さんに声をかけた。
「いってらっしゃい。戻りは?」
「電話する」
これは要するに戻らずに直帰する、という意味の一種の暗号のようなものである。香取さんは暗黙の了解で、というか内心は恐らくまたかと思っているのであろうが、分かりました、といつものように答えた。
さぼることに決めたはいいが、どこか行くアテがあるわけでもない。外に出ると、昨日とは打って変わった抜けるような天気で、むっとするほど暑かった。ひとまずバスに乗って渋谷へと出た。駅前で降りると、とにかく冷房の効いた涼しいところで昼食を摂ることにした。
僕は汗ばむような陽気の中をスクランブル交差点を渡って、道玄坂に出た。坂の途中の二階にある喫茶店に入った。この店は案外と空いているし、渋谷のど真ん中にある割には静かで隠れ家っぽい店なので、さぼるときによく使っている。考え事をするにはもってこいの場所だ。
僕は店の一番奥の席に座ると、クラブハウスサンドウィッチとコーヒーを頼み、氷の浮かんだ水をひと口飲んで、ネクタイを緩めた。程なくサンドウィッチとコーヒーが届けられ、僕はそれを食べながら、何から考えるべきかを考えた。
自分がおかしいかどうかは自分では判断できない。昨日の朝見たマグカップに付いた口紅の跡を思い浮かべながら、この際、幻覚ではない、という前提で考えることにしよう。
結局、昨日と同じことを考えてしまう。果たして本当にテンコは幽霊なのか?
僕はサンドウィッチの間から皿に落ちたトマトをフォークで拾って、口の中に放り込みながら考えた。
1. テンコが幽霊だという確証はない。
それから、ピクルスを食べ、コーヒーをひと口すすって考えた。
2. テンコが幽霊ではないという確証はない。
僕はコーヒーをもうひと口すすって、煙草に火を点けた。ダメだ。これでは一向に先に進まない。何か大前提が必要だ。順番が必要だ。
ここはひとまず、テンコの言っていることが本当である、という前提で考えることにしよう。
とすると、この場合の核心は、テンコが果たして本当に死んでいるかどうか、ということになる。僕は頬杖をついて、煙を吐き出した。まずは、本当に川島典子という人間が存在していたかどうか。それから確かめてみることにしよう。おお、なかなかに論理的な順番のような気がする。僕は一歩前進したような気がして、ひとりほくそえんだ。
しかし、よく考えてみると、まだ何も解決していないのだった。
方法が必要だ。新聞はどうだろう? だいたい、日本では一年間にどれだけの人間が自殺しているのだろう? ふと思い出してみただけでも、小学校のときに近所のお爺さんがひとり、中学のときには同じ町に住む叔母がひとり、去年大学の同級生がひとり。僕の周りだけでもこれだけの人間が自殺して、いずれの場合も確か新聞には載らなかったように思う。とすると、新聞を調べてみてもあまりアテにはならない。一番確実なのは上智大学に行って、学生部に訊いてみることだが、そんなことを外部の人間に簡単に教えるものだろうか? 待てよ、テンコの言う通り、彼女が今年二十二になる予定で、四月に自殺したとすると、今生きていたら四年生ということになる。要するに上智の哲学科の四年生を見つけて訊けばいいのだ。どうしたらいいだろう? 確か、サークルには他の学校から来ている奴もいたな。大学に戻って、サークルの後輩の中に上智の四年生がいるか訊いてみるという手がある。と、そこまで考えて、宮本を思い出した。あいつに訊いてもらえばいいか。しかし、考えてみるとなんて説明すればいいのだろう。川島典子という学生が果たして本当に存在したかどうか。そんなことをどうやって訊けばいいのだ。それに、だいたいにおいて、宮本が絡むと話がややこしくなる傾向にある。
次第に面倒に思えてきた。もう少し手っ取り早い方法はないものか。
僕はコーヒーを飲んで、煙草をフィルター近くまで吸った。そうか、不動産屋だ。あのおっさんに訊いてみるのが一番手っ取り早い。少々ダイレクト過ぎる気もしないではないし、もし間違いだったら結構みっともない話ではあるが、この際、旅の恥は掻き捨てだ。いや、旅はしてないから、喉元過ぎれば熱さ忘れるだ。いずれにしろ、ちょっと例えがずれてるかもしれないが、この場合、それはよしとしよう。とにかく、答えが一番早いのはそれだ。
今日は寝不足のクセになかなか冴えてるぞ、と思っていると、携帯が鳴った。嫌なタイミングだ。昼間の携帯っていう奴はどうしても馴染めない。こういう仕事をさぼっているときはなおさらだ。せっかくいい思いつきが浮かんだというのに、仕事の電話だったらどうしよう。僕は憂鬱な顔でワイシャツのポケットから携帯を取り出した。ディスプレイを見ると、見覚えのない番号が並んでいる。少なくとも会社からの呼び出しではなさそうだ。ほっとしかけたが、そういえば昨日も知らない番号の着信があって、そのまま切れたことを思い出し、切れるのを待った。五回。六回。切れない。嫌な予感がする。僕は通話ボタンを押した。
「もしもし」
「もしもし、スグル? アサコ」
嫌な予感というものはどうしてこう的中するのだろう?
「久しぶり」
「昨日留守電に入れちゃったんだけど」
いつもの湿度の高いアサコの声だったが、今日は語尾が消え入るようで、まるで涙声に聞こえた。もしかしたら本当に泣いているのかもしれない。
「聞いたよ。どうかした?」
「会いたいの」
彼女の声の湿度はさらに増して、僕の気分もそれにつれて重くなっていった。気のせいか手にした携帯まで湿度で重さを増したように感じる。僕は内心溜息をつきながら言った。
「ねえ」
「なに?」
「結婚したって聞いたんだけど」
「したわよ」
「だったら今ごろ……」
「離婚したの」
僕は絶句した。今や、彼女の声は明らかに涙声になっていた。
「もしもし、スグル、聞いてるの?」
「あ、ああ」
「明日会えない?」
「いいよ」僕は断る理由がすぐには思いつかなかった。
「何時ごろなら大丈夫?」
「合わせるよ」僕はもうどうにでもなれ、と思っていた。
「じゃあ、三時に青山のスパイラルカフェ」
「分かった」
「待ってる」
「じゃあ」
僕は通話ボタンを切ると、深く溜息をついた。どうしてこうなるのだろう? 話がややこしくなる一方だ。元々僕は頼まれると嫌とは言えない性格だ。いまさらアサコに会ってどうなるというのだ。もしかしたらよりを戻したいと言ってくるかもしれないアサコのことを考えて、一向にそのことに魅力を覚えない自分に気がついた。確かにアサコはキレイだ。僕に最初にフェラチオをしてくれたのも彼女だ。しかし彼女は僕を裏切った。彼女は結婚というものをしたかっただけなのだ。
そこまで考えて、それだけが理由とは思えなかった。僕のアタマは違うことで一杯なのだった。昨夜のキスの感触がまたアタマに甦った。胸が詰まるような思いがした。
3. 僕はテンコに恋しかけているのかもしれない。
結局のところ、それが一番厄介なことだった。
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