世界編 #11 外の世界についての考察

「えっと⋯⋯どういうことです? ほんにん?」

 つちよごれてめんどうしたふうぼうのそのおとこのことを、たしかにしょうじょほんにんと言った。

「そう、このかたしろ――ぞまりさん。ですよね?」

「⋯⋯。」

 ぞまりなにわない。なにえないのだ。300ねんだれともせっすることなくきていたかれは、こえすのにかなりかんがかかっていたのだ。

しょうねんちからりるまでもなかったね、まさかごほんにんにおいできるとは。だいじょうわたしたちはなにもしません。⋯⋯というか、なにもできないですから。」

「⋯⋯そうか。」

「ひとつおねがいがあって来ました。いんせきへきこわすの、やめてくれませんか。」

「⋯⋯かべ⋯⋯?」

 ぞまりは、ふらふらとがる。

「おまえらは、何故なぜここにこもる?」

 たずねられたしょうじょは、しばらくかんがえたのちしょうねんみみもとささやく。

「ごめんなさい。」

 けいすいへいきをれられ、こうすきあたえられることなくぜつするしょうねん

わたしれてきたんですけど、やっぱりかれかせるわけにはいかないので。」

 しょうじょしょうねんかかえると、もともたれさせた。

「さて⋯⋯あなたはまるで、この300ねんそとかいていないようなことをいますね。あなたの能力ちからならこのかべえるなんてかんたんなはずなのに⋯⋯何故なぜです?」

 ぞまりなにわない。

きょう。ですよね?」

 ぞまりだまってしょうじょかおている。

「いちはやかいしたのはくろ――十六夜いざよいさんだったはずです。⋯⋯300ねんまえのことはかりませんが、でんしょうなどからるいすいするに、くろふくすうてきせいしゃでした。」

「⋯⋯てきせい⋯⋯?」

「はい、じゅつにはひとそれぞれてきせいというものがあって、それにじゅつしか使つかえないということが、さいきん――といっても50ねんまえですが――けんきゅうによってわかったんです。あなたは“つち”、あお⋯⋯すいさんは“おと”。むらさき坩堝るつぼさんが“ていこう”、そして十六夜いざよいさんが“”と“なまず”。“”はえんぽうわたのうりょく、“なまず”はぶっしつせいぶつせんざいしきねんおくのうりょくで、どちらもめずらしいてきせいです。」

 しょうじょとおくのそらて、はなしつづける。

十六夜いざよいさんは、かいがこうなったときにはもういてたとおもいます。そしてあか――かがりも、それをさっした。」

 くびにかけたペンダントをぞまりせる。

「⋯⋯やけにじょうくわしいとおもったが、かがりむすめか。」

ただしくはきゅうだいですがね。」

 ペンダントははんしゃして、木々きぎあわあかうつす。

かべてっきょだって、せいちからわせればむずかしくないはずです。でも、かがりはそれをしなかった。なぜか?」

「――だから、か。」

「そうです。そとかいは、いまはまだひとえるしろものではありません。」

「⋯⋯そんなに、さんなのか?」

「イエスともノーともこたえられるしつもんですね。かないんですか?」

「⋯⋯。」

 ぞまりは、かおよこらす。

きましょう。ぜつぼうはせずにむとおもいますよ。」

 しょうじょごういんぞまりくびつかむ。そのたんかれらのきんめんがり、そらへといていく。

「――なにをした?」

「あぁ、かっのうりょくりてしまってごめんなさい。でも、こうでもしないとあなたは、いつまでもかべこわそうとしてしまうから――。」

「それもそうだな。」

おどろかないんですね。」

「――こうもながいこときてると、かんじょうなどってしまう。てん寿じゅまっとうするのがひとつとめのひとつだと、さとったよ。」

 いたがんばんかべたかさをえ、そとかい二人ふたりうつる。

「⋯⋯これは⋯⋯。」


 そとかいは、なにかった。

 “”のじょうたいが、そこにはあった。


ひるさまです。」

ひる?」

「はい。こうはいしたそとかいしんてんつくるため、くなってもなおひるさま能力ちからかいを“えて”らっしゃるのです。」

「⋯⋯しゅうきょうじみてるな。」

「そうかもしれませんね。」

 しょうじょはクスッとわらう。

「――でも、あながうそとはいきれませんよ。ひるさまは、あなたのまごにあたるじんぶつです。」

 ひらぞまり

「それはおどろいた。――まさかかいてきとされたおとこまごが、かいすくおうとしているとはな。」

 あしもとつちすいてきちる。⋯⋯ながらくらなかったあめである。

「――いたかったな――。」

 あめが、る。

「⋯⋯もどりましょうか。かれましたら、そとかいきょうってしまうかもしれません。それはごこうそむいてしまいますので。」

「あぁ⋯⋯もどろう。」

 あめぬぐぞまりかおは、よわいさんびゃくえるろうのものではなく、一人ひとりわかもののものだった。

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