第3話 距離
「聡!おまたせ!いこうか?」
あの時とは別人と言っていいくらいの明るい声
それは俺といるときにみせる姿
「おう!いこうか?」
その日は二人で買い物をしにいく約束をしていた
なんでも男の物がほしいとか
「男も物って・・・だれに送るの?」
「ひみつかな?」
「そうか・・・」
なんか釈然としないものの
たぶんお父さんのプレゼントとかかな
と思ってその時は過ごした
街の中二人で歩く
手こそつながないがそれは俺の中ではデートに等しい行為だった
服屋に行っては
「これは?」
とか
「どうかな?」
と聞いてくる翼
その表情は愛くるしく
ただ幸せだった
一通りの買い物を終えて
駅に帰る途中
彼女携帯がなる
その表示をみて気まずそうに
「ごめん」
といい少し離れて通話する
その様子にすこし違和感を覚えた
しかし、彼女からしたら俺はただの友達
出過ぎたことは言えない
数分後彼女は顔を曇らせ帰ってくる
「どうしたの?」
そう聞きたくなるほど暗い顔
「ううん、なんでもない・・・」
歯切れ悪く終わるその言葉に
違和感があったがそれ以上追及は出来なかった
その日はそのまま帰った
それから数日
翼は浮かない顔をしてた
その日々に俺は聞きたい気持ちを抑えることができなくて
つい聞いてしまった
「翼?最近、なんか辛そうだけど・・・大丈夫か?」
俺ができる最大の言葉
「ああ、うん、大丈夫・・・」
翼が答えるがそこには大丈夫の欠片はない
「・・・な?俺じゃ話し相手になれないかな?」
そこにには翼の心配もあったがこれはただのエゴだとそのあと気づいた
話し相手にすらなれない俺が嫌だった・・・
そんな不純な気持ちで聞いてしまったそんな自分に罪悪感が有りながらも
翼は
「・・・えっとね・・・今彼氏がいるんだけど・・・」
すこし意識が遠くなるしかしそこは自我を保ちながら
「・・・そうなんだ・・・でなんかあったの?」
なんとか冷静を装い聞き返す
「本当はこの前買ったプレゼント彼に上げるはずだったんだけど・・・ドタキャンされちゃった」
悲しげに語る翼・・・
あー、無力だ・・・・
そんなことしか思い浮かばなかった
「・・・そうか・・・」
言葉が出なかった
聞いたくせに言葉が出ない
かっこ悪い・・・
そしてそのあとに俺は自分のプライドのために
「じゃ、俺と過ごさない」
この言葉は正直翼のためではなかったような気がした
だが言わずには入れなかった
「え?聡と?・・・」
沈黙が流れる
正直俺は賭けだった
恥じも外聞もないただ自分の欲を満たす行為だった
「・・・うん・・・一緒にいよ」
その言葉に喚起した
「本当に?」
つい聞き返す
「うん、聡といたい」
ただ浮かれた気分になった
彼女からした一瞬の暇つぶしかもしれない
でも、それでもいいと思った
そうやって彼女との約束をとりつけただ浮かれた気分でその時を待った
また意識が今に戻ってくる
「あ~なんかあれから少しずつ変わったな・・・」
窓の外の駅は街に近づいてる
そこから俺の思いは加速していく
久しぶりの列車からの景色が徐々に見慣れた景色が流れる
「あ~もうそろそろかな・・・」
言葉をつぶやきまた思いはあの頃に流れる
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