2日目 時は金なり(お題:宝の持ち腐れ)
時は金なり
【意味】
時間はお金と同様に貴重なものだから、決して無駄にしてはいけないという戒め。
特に若い時間は非常に価値があるため、高値で取引される。特に未成年の時間はコンビニの時給の何倍の高く買い取ってくれるので、特に都会では若者の時間売りが社会問題となっている。例えばコンビニであれば、実際に働いているのは40代以降の中年から高齢者に集中している。40代ともなれば時間を売っても大した金にならない。若い働き手が集まらないのだ。であれば時給を上げて募集をかけてもそもそも採算が取れなくなる。コンビニの店員は、そうした時間を無駄にした哀れな中年の最後の砦となっている。
◆◆◆
「出ないなぁ」
天井からは朝から降る雨の音がけたたましく鳴り響いている。窓の外では紫陽花が静かに並んで咲いていた。道路を挟んだ向かい側はアパートの外壁工事をしているらしく、布か何かが覆いかぶさっていた。
「今回は結構回してるんだけどなぁ」
部屋の主は今年の4月に大学生となった。念願の一人暮らしとして家賃3万のボロアパートを自分の城とした。今ではその大学にも行かなくなり、自分の城を守ることに専念するようになった。
「残高あとどれくらい残ってたかな。後で確認しとかなきゃな」
若い人間の時間は特に高く買い取られる。未成年であれば1時間あたりおよそ5000円が相場といったところか。働けば1日8時間でも4万円だが、24時間分売れば実に12万円となる。大学に入ったばかりの若者にとって12万円という額は如何に大きいか、想像に固くない。
「1日売れば12万、10日売れば120万だもんなぁ。若者でよかった」
大学へ入る際、試しに24時間分を売りに出してみた。手元に福沢諭吉が12人、あまりにあっけなく貰えたので最初は詐欺かと思った。その金でアパートを借りた。あまり調子に乗って高い場所に住むのも馬鹿らしいと思ったので3万のボロアパートに住むことにした。
間もなくソーシャルゲームに没頭するようになった。ここ最近は雨続きで、外へ出る気力も湧かず、家で何もせずゴロゴロするのが日課となっていた。
「……今回はなかなか難産だぞ」
有料ガチャ1回あたりおよそ500円、10連は少し割引されおよそ3000円。それでも自分の時間1時間にも満たない。最高レアが出る確率はおよそ0.3%。常に最高レアが出るまで回し続けた。
「あれ、”お支払いできませんでした”?」
手に持っているスマホには「お支払いが正常に完了できませんでした」の文字列が表示された。クレジットカードの与信残高やプリペイドカードの残高が不足した際にこういったエラー文が表示されるのだが、彼の場合はネット上で自分の時間を売り、それをそのままスマホに充当する形を取っている。
「まぁいいや。適当に10万分チャージしとくか」
時間を売る際、時間単位ではなく金額単位で時間を指定することもできる。10万円であれば未成年であれば1日弱となる。
未成年であれば。
時間の買取価格は未成年が最高値となり、20を超えてからは1年毎に半額となる。つまり、20歳の1日は6万円、21歳になれば3万円、少し飛んで30歳にもなれば1日の価値は……自分で計算してみよう。
若い時分から時間を大切にし、自己の研鑽に励む人間であれば、今後を見据えた計画的な動きが取れるはずだ。しかし、彼のように、時間の価値を理解できない人間は、若い時間ばかり吸い取られ、安月給でしか雇ってもらえないような環境で老後を迎えることになる。
時は金なり
【意味】
時間はお金と同様に貴重なものだから、決して無駄にしてはいけないという戒め。
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