私に星は届かない
既に薄らぐ意識の中、私は病院のベットで床に着いていた。隣では、友人が私の名前を呼んでいる。
「なあ!××、起きてくれよ!」
返事をしたいが、声が出ない。体が上手く動かない。
私の人生は最悪のスタートだった。3歳の時に両親が他界。すぐに施設に預けられたが、そこでも境遇のせいか周りからは避けられた。
幼いながらも私は自分が『世界から必要とされていない存在』だと気づいた。
将来の夢なんてものを考えることもなかった。
しかし、小学生、中学生と時を過ごすにつれ、色んな世界を知った。それまでは自分の世界は『施設』だけだったが、それに『学校』が追加され、『近所の公園』が追加された。
そこからは早かった。あるひとつの世界では私は必要とされていなくても、ほかの世界では私を必要としているところがあるはず、と考えて何にでも一生懸命取り組んだ。その結果勉強も、運動も、一応それなりの成績は収められるようになった。
「ねえ!××!起きてよ!」
また友達の声が聞こえてくる。こちらも返事をしてあげたいのに。
それから、仕事では中堅所の営業を勤めていた。彼氏なんてものは私からは縁遠いものになってしまい、私はいわゆる『仕事人間』という種類の人種になっていた。
それでも、行く所行く所で出会う人達との話は楽しかった。
そしてある日、私は突然に倒れた。
原因は自分で考えてみても分からない。過労でも病気でも無さそうだし。
何となくわかる。私は今から死ぬのだろう。周りではまだ聞き覚えのある声が響いている。
私の夢は最初はなかった。……今もないが、最悪のスタートの割にはとてもいいゴールを切れた。
私より成功した人生を歩んでいる人達……星には届かなかった。星には届かなかったが、幸せだった。
私に星は届かない。
手に届く星 篠崎優 @sinozayu
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