第23話 ヤーガム


 地面から突然現れたものの正体───ヤーガムは、しばらく転移向かって口を開けたまま固まった後に、ゆっくりと再び地中へと戻っていった。


「……なんだそりゃ」


 思わずといった風に、ライラさんがそう言葉を漏らした。


「ヤーガムは地面に擬態して、ひたすら獲物を待つ生き物なのよ」


 師匠の解説通り、ヤーガムが地中でもぞもぞと動くとみるみるうちに地面と同化していき、数秒後には何もいなかったかのように地面と同化してしまった。


「すごい……本当に何かいるなんてわからないです」

「たしかにこうも見晴らしが良くて何もいなそうな場所じゃ、こいつに気づくのはそうそう無理だろうな」


 私とライラさんが難しい顔をすると、師匠は少しだけ肩をすかした。


「まあ、さっきのライラみたいに気づいてからでも対処は間に合うから、そこまで気を張る必要もないけどね」


 そんな師匠の締めくくりで再びクーロックへと向かって歩みを進めだした私たちは、また何もない草原をただ歩く作業に戻された。

 しかし先程までとは違って、師匠によるヤーガムのような面白い生き物の話を聞きながらの旅になったため、ライラさんはともかく私は最初の頃のような活気を取り戻していた。


 そうしながら進んでいくうちに日も暮れ始め、クーロックに辿り着いたころには完全に辺りは暗くなってしまっていた。

 それでもしっかりとクーロックまで辿り着けたのは、クーロックの周囲にだけ光が灯っていたからだ。

 クーロックに辿り着いた私たちを待っていたのは、その光を灯していた、四人組の人たちだった。

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