第21話 違い
「ペリットちゃん、魔力が抑えきれなかったのよね?」
「はい」
師匠の確認に頷くと、師匠は頭を抱えるような仕草をした。
私には心当たりがないほど過剰なその反応に、私は妙な不安感に駆られた。
「あの……何か不味かったのでしょうか?」
私がおそるおそるそう尋ねると、師匠はまたもやどこかうわの空に答えた。
「ええ……本来なら、不発に終わるはずなのよ」
「不発?魔法が、ですか?」
「ええ」
師匠はそれ以上語らなかったが、私には何の話なのかさっぱり理解ができなかった。
先程の状況───つまり、魔力が抑えきれなくなった時は、魔法は不発に終わるということなのだろうか?
私は魔法を習ったわけではなく、狩りをしていく上で自然と身に着いたものだったので、よくわからない。よくわからないが、体感でいうならばそんなことはありえないような気がした。
だってそうだろう。不発に終わるならば、溜まった魔力はどこに行くというのだろうか?
先程みたいに暴走してしまう方が余程自然だと、私にはそう思えた。
「……ひとまず、この件は後にしましょうか」
それから少し重たい空気が流れた後、師匠が切り替えるように手を叩いた。
「結果だけ見るなら、上々ね。足はなくなってしまってるけど、それ以外はほとんど損傷なし。ペリットちゃんの戦い方なら、今回のように相手の足を奪うのが一番だと思うわ。それにしても……」
師匠が何かを言おうとして、すぐに口を閉じた。
「どうかしたのですか?」
「いえ……ふと、ペリットちゃんは対人戦闘の方が向いてるなって思っただけよ」
「対人……」
それは、ハンターとしてもカナドラとしても活動したことのある師匠だからこそ出てきた感想なのだろう。
人と戦うということが頭の中には全くない私にとって、それは衝撃的な言葉だった。
「それだけだから、気にしないでちょうだい」
師匠はそう言ってすぐに話を戻したが、私の頭の中ではその言葉がこびりついて離れなくなってしまったのだった。
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