第19話 グリズリーの狩り方
私たちは目標であるグリズリーを探しながら、グリズリーの狩り方を考えていた。
一見人の力では到底勝ち目がないと思えるほどの巨体を誇るグリズリーは、なり攻撃的な害獣であり、その剛腕で見つけた他の生き物を見境なく壊して回ると言われている。
何が彼らを突き動かすのかは分からないが、それは繫殖期でない場合は同種に対しても同じ反応を示すそうだ。
「ペリットちゃんは、どうやってグリズリーを狩ってたのかしら?」
「えっと、衝撃波で相手が力尽きるまでダメージを与えるっていう感じです」
「衝撃波……それだと中がぐちゃぐちゃになっちゃいそうね」
「はい……」
実際、私が狩ったグリズリーは漏れなく内臓や血が中で混ざり合ってしまっていて、綺麗な状態の肉はほとんど取れないことが多かった。
「それだとダメ、ですよね」
「そうね」
師匠も悩む隙もなく頷いたが、私にはそれ以外にグリズリーに対抗する術を持っていない。
そのことを師匠に伝えると、師匠は腕を組んで俯いた。
「あの斬撃は通じないのかしら?」
「はい。グリズリー相手だと、威力が足りなくて」
「衝撃波というのは?」
「大気を揺らして衝撃を与える魔法なのですけど、近距離じゃないとすぐに力が霧散してしまうので、インファイトする感じでやっています」
「それが、素手格闘ってわけね」
「はい」
私の小さな身体では、当然普通に殴るだけでは意味がない。
元はといえばこの衝撃波の魔法を使うために生み出されたのが、私の魔法仕込みの素手格闘というわけだった。
「そうね、衝撃波でしか倒せないのならそれは仕方ないのだけど……例えばその攻撃を頭に集中させたりはできないのかしら?」
「グリズリーくらい大きいと、頭は届かないのです。跳べば届きますけど……」
「確かにそれは危険ね」
一撃が重いグリズリーに対して、ろくに回避行動をとれない空中へと跳ぶのはかなり危険な行為だ。
死んでしまっては元も子もないので、頭を狙うことで得られるメリットと比べればそれは取るに足らないものだった。
「それじゃあ、足を狙ってまずは相手をダウンさせてみましょうか。いざとなったら私が助けに行くから、ペリットちゃんは足にのみ衝撃波を与えるようにすること。いい?」
「はい!」
無事に作戦が決まってしばらく歩いていると、森の中を進む私たちの前方から何者かが茂みの中を動く音が聞こえてきた。
その音は何かの群れがいるにしては少なく、そして静かな音だった。
「師匠……」
「ええ。この感じなら、おそらくグリズリーね。念のために私が先導するわ」
そう言って師匠は剣に手をかけると、これまでより一層慎重に森の中を進んでいった。
私もできるだけ心を落ち着かせてから、物音を立てないように師匠の後をついて行くのだった。
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