第18話 狩り方


「うーん……」


 師匠は森の中を進んでいきながら、ふとそんなうなり声を上げた。

 その顔は深刻というよりはただ困り果てているようで、師匠の眉間にはしわが寄っていた。


「どうかしたのですか?」

「いえ、別に問題があるわけではないのだけど……ただ、ペリットちゃんが思ったよりも遥かに強かったのが誤算だったわね」


 師匠はそう言うと、意を決したように振り向いた。


「ちょっと危険かもしれないけど、グリズリーにしましょうか」

「グリズリーですか」


 グリズリーと聞いても私が平然としているのを見て、師匠は少し驚くような仕草をした。


「あら、怖くないの?」

「グリズリーも、よく狩っていたので」


 私は村で過ごしていた頃のことを思い出しながら、そう答えた。

 グリズリーの肉は村でも特に人気で、狩って帰るとよく喜ばれたものだ。


「そう……やっぱりナーチってすごいのね。それじゃあ、追加で毛皮を傷つけない狩り方の練習をしましょうか」

「……はい!」


 私が元気に返事したのを聞いて、師匠は満足そうに頷いた。

 毛皮を傷つけない狩り方。

 私にとって新鮮味を帯びているそれは、私の心を躍らせるのに十分なものなのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る