第7話 道


「帝都に行くなら、まっすぐカルシアロードを通っていけばいいんじゃないですか?」


 今後の計画を、なんて言って地図を取り出してきたカーミアさんに、私はそんな質問をぶつけた。


「まあ、普通ならそうね。でも、私たちには色々あるのよ」

「色々……?」


 まあまあ、と私をなだめたカーミアさんは、地図上の端っこの、山の麓を指差した。


「ここがティーメル村ね。そこからずっと続いてる道がカルシアロードなんだけど……」


 そこで言いとどまると、ティーメル村から帝都まで繋がっている道をなぞっていたカーミアさんの指がふっと逸れた。


「私たちはこっちのアーザム領に寄らなきゃいけないの」

「アーザム領?」


 カーミアさんが指差したのは、帝国領を東西にかけて通っているカルシアロードの右上にある大きな渓谷だった。


「そう。ここに魔族が隠れているって言う情報があってね。まあ、だいたいは見つからないのだけど」

「そうなんですか?」

「ええ。この村にいるのも、魔族の隠れ家が───って話だったのだけど、結局はただ噂話が誇張されて広まっていただけだったわ」


 カーミアさんは遠い眼をしながら、深いため息を吐いた。


「魔族が姿をくらましてからもう十年……面白そうな話ももうないかしら」


 カーミアさんは隠す気配もなくそう呟くと、私に向かって悪戯そうにほほ笑んだ。


「ペリットちゃんは王国を目指しているのでしょう?私もついて行こうかしら」

「えっ!?困ります!」

「ふふっ、どうして?」

「それは……」


 返答に困ってしまう私。

 どうにかしないと……と頭を回していると、ふと先程のカーミアさんの発言を思い出した。


「カ、カーミアさんは私たちみたいな子供のために、魔族と戦ってたんじゃないんですか?」


 私の言葉を聞いたカーミアさんは、少し悩むような素振りを見せた。


「……そうね。でも、そんなの半分は建前よ。本当にそう思ってるなら、押さえつけてでもペリットちゃんには子供らしくしてもらうもの」

「……」

「私はね、もう進むべき道がないから。だから、面白そうなことに顔を突っ込みたいだけなのよ」


 そう言って少し寂しそうな顔をしたカーミアさんに、私は何も言うことができなかった。

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