第2話 ティーメル村


 私の村があった山を越え、さらにその先の山を越える。

 長老たちの話では、そこに他の村があるらしい。

 その村からは、私たちが暮らしていた山を領土に含むカルシア帝国の帝都へと繋がる街道があり、ジルダニケ王国を目指すにしても、まずは帝都を訪れるべきだと長老が言っていた。

 その理由までは聞いていなかったが、私は長老を信じて帝都を目指すつもりだ。そのためにも、まずはお金というものも稼がなければならない。

 それに、仲間も──


(……)


 私の心が、ずきりと痛んだような気がした。

 私は一つ深呼吸をすると、行き場のないもやもやをしまい込んで、その村へと歩みを進めたのだった。




「ようこそ、カルシアロード最後の村・ティーメル村へ」


 私がその村──ティーメル村へと辿り着くと、村の入り口で待ち構えていた門番の人に声をかけられた。

 伸ばした髪を角に巻き付かせるようにして作ったお団子ヘアーのおかげか、普通の人間だと判断してくれたようだ。

 私は胸をなでおろしてから、長老から授かっていたペンダントを取り出して見せた。


「グレ村から来ました」

「グレ村って……ああ、あの山奥のか。一人でかい?」

「はい」


 帝国内の各村や街は、それぞれがシンボルとする動物が決められている。

 そして、帝国の住人であると外部で示したい時には、その動物が彫られたペンダントを身分証明として提示しなければならないのだ。


「……はいよ。ごゆっくり」


 門番の人は数秒ペンダントを手に取っていじくりまわすと、すんなりと村に入ることを許可してくれた。

 私も余計な詮索はされたくなかったので、そそくさと逃げるように村の中へと入っていったのだった。

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