第47話魔王と聖なる乙女〜 それぞれの能力(ちから) 〜
※過去・魔王封印のはじまり、一万年前編からスタートです。
※ハル達は登場しません。
ーーーー
神竜様を祀る神殿の元聖騎士と、呪術師の一族の娘の間に生まれたファラットとディアは10才に成長した。
ディアは母方の祖父から贈られた黒い【白数珠】のお陰で魔物を生み出すことはなくなり、両親や村人も安心していた時に事件は起きた。
「うっ、うっ、うぅ」
「お~い、なきむし、ディア。 まものを、だしてみろよ」
「だしてみろよ」
「や、やめてよ」
ファラットやディア達は村外れの一軒家で、ひっそりと暮らしていた。
ディアは両親やファラットの言いつけを守り、家から出ることはなかったが、この日は違った。
両親とファラットが留守の時を見計らって、3人の10才ぐらいの男の子達がディアを森の中へ無理やり連れ出して、
「おとなたちは、こいつがまものを、だせるからちかづくなって、いっているけど、ガセじゃねぇ?」
「おれたち、みたことねぇもんなぁ」
「なぁ」
「うぅ、どいでよぉ。 うちにかえしてよ」
「まものを、だしたら、かえしてやるよ」
「こいつ、ファラットがいないと、なにもできないもんな!」
「あいつも、こいつに、あまいよな~」
「やっ、やめて、にいさまのこと、わるくいわないでぇ!」
「なっ、こいつ、くちごたえしやがって」
「このやろう!」
「やっ、やめて、かみ、ひっぱらないで」
2人の男の子はさらにディアを虐めるが、最後の男の子は、
「お、おい。おまえら、やめろよ」
「ガルーシェ、なんでだよ!」
「ディアのくせに、なまいきなんだよ」
「やっ、やめてよぉ」
「ほんとにやめろって!よくわかんねぇけど、さっきから、
「……ガルーシェの
深緑色の髪と薄紫色の瞳を持つガルーシェは村長の孫息子で、昔から不思議と感覚が鋭く、自然発生した “ 魔物 ” の存在を、よく言い当てていた。
当時は名前がなかったが、
「ああ、でも、
「や、やめて、これは
苛めっ子の1人が、ディアの【
引っ張り合う力に耐えられなかった【白数珠】の紐はブチッと切れて、ジャラジャラっと【白数珠】が地面に散らばった。
「あ、お、おれしらねぇぞ」
「う、うぅ」
「おい、泣くなよ。おまえが、わたさないのが、わる……い」
「な、なんだ? この “
「
「ううぅ、やめ……て、でて……こないでぇ」
「おい。マヤ、ダルク、むらまで、はしるぞ」
「「へ、ガルーシェ?」」
「はやく!
ガルーシェは “ 感知 ” の力でディアが黒い渦から出現しようとしている魔物を抑え込んでいる事に気付いて、マヤとダルクの腕を掴んで、森の中を走り、助けを呼ぶ為に村へ急ぐ。
その途中、ディア達の家の近くでファラットと出会い、
「ガルーシェにマヤとダルク。 おまえら、ディアをみなかったか? いつも、いえから、でるなって、いってるのに……」
ファラットの最後の独り言のような呟きは誰の耳にも届かなかったが、ファラットと遭遇してマヤとダルクの表情は蒼白になっていく。
「「…………」」
「なにか、あったのか?」
「ディアのネックレスがこわれて、くろいうずがでた」
ファラットの問いかけに、ガルーシェが分かりやすく答える。
その答えを聞いたファラットは息がとまりかけたが、必死に息を吸い込み言葉を絞り出す。
「どこにいる!?」
「あっちだ!」
「おれがなんとかするから、おとなたちに、ほうこくして、むらのけいびをかためろっ!」
「わかった」
「「……へ」」
いまいち状況を把握しきれてない、きょとんとしてるマヤとダルクは、そのままガルーシェに任せれば大丈夫だと判断して、ファラットはガルーシェが指さした方向へ駆けていく。
ーーーー
「ディア、ディアどこだ?」
ファラットはガルーシェが指さした方向へ走り、ディアを探し続けるが、
「みつからない、かくれているのか……」
ディアは自分の
ディアの
【白数珠】が壊れたことで溢れだした
走り続けたファラットは、木々が生えていない、円形の広場のような場所へ見付ける。
「ここなら、じゅうぶんなひろさがあるな」
ファラットは地面に落ちている枝を拾い、地面に魔方陣を
描き終えると、魔方陣の外側に立ち、両手を左右に広げ、翡翠色の瞳を閉じる。
「すぅ、はぁ 〈 いにしえから、このちに、すまうものよ。われのまりょくをたいかに、かのちから、われとちをわけし“まものつかい”のそしつをもつものを、ここへ、しょうかんせよ! 〉 」
ファラットの召喚の呪文を唱えると、魔方陣から蒼白い光が溢れ、魔方陣の中心に、眉毛を八の字にして、泣いているディアが現れた。
「にい……さま……」
「ディア、さがしたぞ! ケガはないかっ!?」
ファラットはディアに駆け寄り、震える身体を抱き締める。
ディアはファラットの問いかけに、ふるふると頭を横に振る。
「ガルーシェたちは?」
「あんしんしろ、だれもケガしていない」
「………ごめんなさい」
「ディア?」
「くっ、でてくる。 にいさまぁ、おさえられなくて、ごめんなさいっ!」
ディアはファラットの胸の中に
ディアの感情に “ 共鳴 ” するように、黒い渦が集まっていき、その黒い渦は稲妻で身体中が覆われた3匹の狼の魔物に変貌し、遠吠えが森中に響く。
「ディア、おちついて『ライトニングウルフ』を」
「あっ、ラ、ライト……ニング……ウルフだ。 にいさま、ごめんなさぁい!」
「……だいじょうぶだ。 おれがなんとかするから、なくな」
(
ファラットは取り乱すディアを見て、ディアの “ 魔物使い ” の
ディアを “ 魔物使いを召喚 ” する為に描いた魔法陣を確認する。
(まほうじんはぶじ、これなら)
ライトニングウルフはガウッ、ガルルゥッと、戸惑いつつ、警戒しながら後退り自分達を睨む。
(なんだ? ああ、そうか、
ディアは戸惑いで全く理解していないが、ディアの “ 魔物使い ” と、ファラットの “ 召喚士 ” の “
ディアの “ 魔物使い ” は、本来なら “ 魔物 ” 呼び出して “
ファラットの “ 召喚士 ” も “ 精霊や、あらゆるスキル持ち ” をこの地に “ 召喚 ” して “
つまり、このライトニングウルフは
村人達は魔物に対する恐怖心で、そのことに、まだ気付いていないが、ディアが
(おれが、まわりからディアを……おとうとをまもらないと)
「 〈 いにしえから、このちに、すまうものよ。われのまりょくをたいかに、かのちから、だいちのちからをやどし “ せいれい ” を、ここへ、しょうかんせよ!! 〉 」
ファラットの呪文にあわせて、魔方陣が蒼白く輝き、3体のトンカチとスコップを持った “ 土の精霊・ノーム ” が召喚された。
「つちのせいれい・ノームよ。 われのめいにしたがいライトニングウルフをたおせ!」
土の精霊ノームはファラットの “
(きがいをくわえるきがない、こいつらをたおすのはかわいそうだけど、ディアのちからがおよばなくなったら、ひとをおそってくるかもしれない)
ノームはスコップで穴を掘り、巨大な岩石を掘り上げ、ライトニングウルフに投げつける。
ライトニングウルフは抵抗出来ず、岩石の下敷きになり、ノームがトンカチで岩石を砕くと、ライトニングウルフも粉々に砕け散る。
「おにいさま、たおしたの。 すごぉ……「ディア!ディア、だいじょうぶか⁉︎」
ディアは言い終わる前に地面に倒れ込む。
それを見たファラットは慌てて、倒れたディアを抱き起こすと、ディアの顔色は真っ青だった。
「う、うぅ」
「ディア、ディア、
“ 反動 ” それは “ 使役 ” や “ 召喚 ” した “ 魔物 ” や “ 精霊 ” が、
(だから、この、ほうほうは、
「ディア、すぐにいえにつれてかえるからな。もうすこし、しんぼうしろ」
“ 風の精霊・シルフ ” は癒しの
(おれに、もっと、まりょくがあれば)
ファラットはディアを背負って、家に向かって走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます