第43話イーディス~ガルフォン~

※主人公視点

ーーーー



「待って、ティティ⁉︎」

「お、おい、お頭ッ‼︎」


 私はガルフォンとティティを呼び止めるが、ティティはフゥに乗って、フィル君とイーディスが姿を消した森の奥へ、消えて行く。


「ヤ、ヤバい」

「やべぇな」


 私とガルフォンの呟きが重なる。

 何がヤバイと言うと、ティティのぶちギレモード&イーディスの組み合わせが“最悪”だ。そもそもティティが冷静でも、あのふたりは相性が悪い。


「あー…イーディスって、さっきの兄ちゃんだよな?」


 ガルフォンが私にそう聞く、私はコクコクと頷く。


「お頭の前世と、相性が合わねぇ、あの兄ちゃんだよな?」


 ガルフォンはティティから聞かされているのか、そう念押してくる。私はコクコクと頷く。


「えー…、人間ひとや他種族の魔力の質や違いに鋭い種族の、兄ちゃんだよな?」


 もうガルフォンが何を確認したいのか、分からないけど、私はコクコク頷く。


「……他人ひとのデリケートな部分に、無意識で触れる、兄ちゃんだよな?」


 ん?……う、うん。そうかな?そうだったね。私はコクコクと頷く。


「……やべぇな」

「え?……きゃっ!」


 ガルフォンは私をまた俵担ぎで持ち上げると、3人と1匹が消えて行った方に、全速力で走っていく。


「ちょっ、ちょっと、ガルフォンッ!」

「嬢ちゃん。舌噛むから、喋るなよ~!!」


 ガクガクと私の体は揺れて、私の目線の先、私達が居た場所が遠ざかって行く。


「フィル君達の場所、分かるのぉうわぁ!?」

「分からねぇけどっ」

「じゃ、どうするの?探索魔法やスキル持ってないよぉ」

「それだぁ!」


 ガルフォンはそう叫ぶと、ガルフォンの“感知・探索”スキルを発動する。


「見つけたぁ!!」


 そう叫ぶとガルフォンは、さらにスピードをあげて、走り出す。私の身体が上下にガクガク、左右にブルブル揺れる。


「ひゃ、ひゃぁぁぁぁぁ!」


 私の悲鳴が木霊する。



「「うわぁぁぁ」」


 私とガルフォンから絶句した声が重なる。


「ふたりとも、もうやめて下さいっ!」


 フィル君の虚しい説得の声。


「イーディスが…成長しない…以上…無理」


 ティティはそう言うと霞を作り、イーディスの視界を奪う。


「それはお前だろう。かの霞をなぎ払え〈台風テューポーン〉」


 懐かしい口喧嘩+氷魔法&魔術魔法の応酬が続く大惨事。

 そして何故かフィル君は蔓で木に縛られ、結界で守られているから無事。多分、イーディスの魔術だよね。

 私とガルフォンはフィル君の元へ向かう。


「フィル君!」

「坊主っ‼︎」

「ハルッ!ガルフォン、此処は危険です。離れてっ‼︎」

「お頭と兄ちゃんに、何かあった⁉︎」

「……………………それが…………ティティの………“生い立ち”に触れました」

「???」

「や、あーー…なんで触れっかなぁ」


 かなり、ながーい間を置いて答えたフィル君の言葉に、私は意味不明だったが、ガルフォンは心当たりがあるのか、頭を抱える。


「坊主と嬢ちゃん、ふたりを止める方法、なんかあるか?」


 私はふるふると、フィル君はブンブンと頭を横に降って『止める方法はない』と、ガルフォンに伝える。


「あー…、了解」


 ガルフォンは、まだ氷魔法を使うティティと、魔術魔法を使うイーディスを見つめながら、右手を空高く上げて、拳を作る。


「ねぇなら、俺の空間テリトリーにすれば解決だな」


 すると、先程まで、氷魔法と魔術魔法の応酬を繰り広げていた、ティティとイーディスがピタッと止まる。

 フィル君を拘束していた蔓と、結界も解け、フィル君は自由を取り戻して、両手を握ったり、開いたりした。


「魔法と魔術を空間にしたんですか?」

「ああ。これが一番だろ」

「………上手くいくといいんだけど」


 魔法と魔術を使えねぇ以上、落ち着くんじゃねぇと、ガルフォンは言うが、千年前は口喧嘩でさえ止められなかった。そう、上手くいくかなと、私は不安がいっぱいで、イーディスとティティを見守る。


「………ガル。…追い付いた……のね。……イーディス……次は……容赦しない……から」


 ティティはイーディスを威嚇すると、スタスタとガルフォンの横に戻る。

 千年前以前なら、氷魔法を無効化されても、イーディスと口喧嘩していた、ティティがあっさりと引いたことに私が驚いていると、イーディスがスタスタとガルフォンの元へ、瞬間移動ぐらいのスピードでやって来て、ガシッとガルフォンの両手を掴み。


「今のどうやった」

「はぁ!?」

「空間支配か?ただの人間ひとで、これ程の支配を可能にする、そなたの魔力量は尋常じゃないな。聖女ムツキ並みの魔力量?いや、それ以上の魔力量と、その魔力を受け入れる膨大な器があり、そして何より、魔法を使うそなたのイメージが素晴らしい。魔法と魔術を無効化する、イメージしにくいものを、完璧にイメージ出来るとは…(賛美の言葉がかな~り続く)」

「「「こ、これは」」」


 私、フィル君、ティティの声が重なる。


 イーディスはこの『闇の森』の、中心部の森が侵食していない、ドーナツの空間部分にある、庵で“とある理由”で、エルフ達種族から離れて暮らし、物心がついた時から“ひとり”だった。

 彼は『闇の森』から、いや、庵から滅多に出ず“引きこもり”の魔法&魔術の研究に没頭して行った。


 千年前に山賊に拐われたムツキが、山賊共の不注意で【闇の霧】を浴び、人喰い花ブラッディ・アウラウネの元に誘導され、今回と似たような内容で、ブラッディ・アウラウネが騒がなければ、出会うこともなかっだろう。

 そしてムツキ達の旅に同行した、理由も“聖女”の魔力と“聖女のみが使える聖属性魔法”に“興味”があったためだ。


「属性魔法は、何を持ってる。持っていないのかッ!では、スキルで先程の空間支配をしたのか?何【魔石】の力だとっ!?生まれ持った能力ちからでもないのに、ここまで使いこなせるなんて、尊敬に値する」


 ガルフォンはドン引きながら、イーディスの質問に答えているが、イーディスのマシンガントークに耐えられなくなったガルフォンは、


「嬢ちゃん、助けてくれ」


 目が合った私に助けを求めた。イーディスはガルフォンの声に反応して、ガルフォンの目線を追うように、後ろへ振り向き、


『…春、お願い。、わたしに身体を貸して』


 の耳に、よく知る声が聞こえる。そして、見覚えがある銀色と緋色の光の粒が私を覆う。

 この光は魔王の封印が解かれる直前、ルティルナの都で、最初にガルフォンの異空間にフィル君と居た時に、私を覆った光と一緒だった。前と違うのはの意識は途絶えなかったことだけー…。



ーーーー

※補足・ラストの銀色と緋色の光の粒は26話『不思議なお茶会?と目的』の最後の方で出てきた光と同じです。

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