第16話リディエール公爵家

「あ」


 私は咄嗟に口を両手で押さえた。


「なんで嬢ちゃんが知ってんだ?」

「どうして知ってるんですか?」


 2人の当然の疑問に私は


 ヤバいどうしよう

 どうやって誤魔化そう


「…ーースゥ、ハァ」


 息を吸って吐いて


「い」


「「い」」


 2人の声が重なる。


「言えない」


 私は『言い訳』が思い付かなかった。


「…ハル」


 フィル君はそっと私の肩に優しく手を置いた。

 私にはが話してって言ってる様に感じて


「ごめん。まだ言えない」

 まだ勇気がない。


 そう答えるしかなかった。


 私達のそんな様子を見ていた顔に傷がある男は自分の頭をガシガシとかきむしりながら


(イチャつきやがって)

「えーと、あ~なんだ。嬢ちゃん正解だよ」


 男のその言葉にハッとするとフィル君の眼線は私から男にうつり


「…お前。まさか!?」


「????」


 どういうこと?


 私が???になってると男がパチンッと指を鳴らす。


 ボワッン!


 イスが3脚出現した。


「あ~、なげぇ話だから座れ」


 じーーーーー。


 フィル君の疑いの眼差しに男はドカンと先に椅子に座る。


「なぁんにも仕掛けねぇよー」


 男のその言葉に私も2脚の椅子をあっちこっち確認する。


「フィル君。魔力の気配はないから大丈夫そうだよ」


 私がそう言って椅子に座る。


「…ハルは…………ーだね」

「今なんて?」

「なんでもない」


 フィル君も椅子に座った。


「フゥ」


 男は頬付きながらため息を吐いた。顔に『イチャつくんならよそでやれ』と書かれてる気がした。


 うん。きっと気のせい。


「俺はガルフォン、昔の名前はガルフォン・リディエール。前公爵ガリダナ・リディエールの長男だった」


 ガルフォンは先程までの砕けた口調が急に改めて昔話は始まった。



  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 ー3年前ー


 代々リディエール公爵家は【】のスキルが強いため国王陛下から魔王の封印の"監視"の役目を仰せつかっていた。あの日も恒例の魔王が封印されてる『静寂の森』から2km程離れている『深淵な森』にある別荘へ


 父:ガリダナ・リディエール(49歳)

 母:ルリーナ・ディアーナ・リディエール(46歳)

 俺:ガルフォン・リディエール(26歳)

 弟:ガルダ・リディエール(15歳)


 ……父の弟…俺の叔父、ガリジェダ・リディエール(45歳)と数人の使用人も一緒だった。

 叔父は公爵家には珍しいだったが、王女が降嫁される家柄だった為さほど不思議はなかった。


「兄さまー。早く早くー!」

「急ぐなよー。ガルダ」


 別荘へ走るガルダの後を俺は歩いていた。

 ガルダはお母様似の金髪に薄紫の瞳で太陽の光で金髪がキラキラと光っていた。


「ルリーナ。私とガルジェダは“封印”の様子を見て来るよ。3年の“猶予”があっても油断はならないからな。子供達…ガルダの事は頼んだぞ」


 お父様は心配そうなお母様の肩に手を置いてそう言った。


「ええ、承知しました。貴方『静寂の森』は魔物もいますからお気をつけて」

「お義姉様。安心して下さい。私も一緒ですから、魔物も一瞬で倒してお兄様には指1本も触れさせません!」


 叔父様はお母様を安心させる様に騎士の敬礼をしながら、パチン!とウィンクして言った。


「もう。相変わらずふざけて」


 気を緩んだお母様がやっと微笑んだ。



「兄さまー!もっと強く押してー!」

「ガルダしっかり掴んでろよ!」


 俺とガルダはお父様手作りのブランコで遊んでいた。


「ガルフォン、ガルダ」


 お父様が俺達を呼ぶとガルダはブランコから飛び降りて


「おい。危ないぞ」

「大丈夫だよ!」


 地面に着地した。


「父さまー!叔父さまー!」

「お父様、叔父様。もう行かれるのですか?」


 俺達は馬に乗っている父と叔父の近くへやって来た。


「別荘に到着したばかりで『静寂の森』までまだ距離があります。休んでからでも」

「年に2回の“監視”だ。早く終わらせてお前達と過ごしたい。ガルフォン、お母様とガルダを頼んだぞ」

「僕も僕もー。母さまと兄さま守る」


 えへへとガルダは太陽の様な笑顔でそう言った。


「……………」


 この時の俺は叔父様の影に気付いていなかった。気付いていたら“悲劇”は止めれたかもしれない。

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