第112話 意外と簡単なところにあったりする

 飯崎が起きている時間帯に家を出ると、俺が筆箱を探しに行こうとしていることに気づかれてしまい飯崎がついてくる可能性がある。

 責任感の強い飯崎のことなので、自分が失くした筆箱を俺1人だけに探させるなんてことはするはずもなく、絶対一緒に探しにくるだろう。


 そうならないためには飯崎が寝静まっている時間帯に行動を起こすしかなく、俺は夜中に家を出た。

 作戦通り飯崎は寝静まったまま、俺が家を出たことには気付いていない。


 どこを探せばいいかは見当もついていないが、とにかく可能性があるところをしらみ潰しに探していくことにして、通学路から捜索を開始することにした。


 たまに抜けている部分がある飯崎のことだから、通学路のどこかに筆箱を落としていてもおかしくない。

 そう思って隈なく通学路を探してみるが、通学路に筆箱は見当たらない。


 通学路は捜索範囲が広過ぎて見落としがある可能性もあるし、何より真っ暗な夜道をスマホのライトだけを頼りにして捜索しているので、見落としがない方がおかしい。


 とはいえ、全ての時間を通学路の捜索に費やしていると朝になってしまうので、ある程度通学路を捜索して筆箱が見当たる気配がなかったので通学路の捜索は諦めることにした。


 通学路の捜索を終えた俺は毎日見ている学校とは全く異なる姿の学校に到着する。


 夜の校舎には人気が全くなく、鍵がかかっており校舎の中には入れない。

 とはいえここで門前払いされて帰宅していては真夜中に家を飛び出した意味が無くなってしまうので、今できることをやるしかないと思い駐輪場やグラウンドなどをくまなく探してみた。


 しかし、筆箱は見当たらない。


 恐らく飯崎も自分の思い当たる場所は全て探しただろうし、俺もこうして隈なく捜索をしているというのに筆箱が見当たらないとなると全く違う別の場所に筆箱がある可能性もある。


 とはいえ、飯崎の今日の行動全てを把握しているわけではないし、やはり飯崎と一緒に捜索しないと筆箱の発見は困難なのだろうか。


 いや、ここで諦めていいはずがない。見つからないのには何か理由があるはずだ。


 可能性があるとすれば、やはり飯崎が勉強をしていた図書室に置いてあるか、帰り道で落としたか、もしくは落ちていた筆箱を誰かが拾って保管しているか……。


 しかし、落ちている筆箱をわざわざ保管する奴なんているのだろうか。

 校舎で落ちている筆箱を見かけたら先生に渡すか落とし物入れの中にでも入れるのが普通だ。


 まだ俺の頭の中には浮かんできていない可能性なんていくらでもあるはずだ。諦めずに考えろ俺……。


 --待てよ?


 確か飯崎はくるみと金尾、小波と一緒に勉強をしていたと言っていた。

 となればくるみたちなら飯崎の筆箱について何か知っているかもしれない。


 そうと決まれば善は急げ。


 日付を跨いではいたものの、くるみが夜型であることを把握していた俺はくるみが寝ていないことを祈りながら急いでくるみに電話をした。

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