第78話 結局運命なのかもね

「どうしてこうなるんだろうな」


「……腐れ縁でしょ。多分ね」


 ジャンケンを終えた俺たちは予定通り2つのグループに別れ、くるみのプレゼントを探すためにショッピングモール内を歩き回っていた。

 予定通りではなかった、というわけではないが、予想していなかったのは俺と飯崎の2人でグループになったことだ。


 5人でのじゃんけん勝負は長引くかと思っていたが、意外にも一瞬で勝負は決まった。

 俺と飯崎が2人ともパーを出し、それ以外の3人がチョキを出したのだ。


「腐れ縁か……。まあ腐れ縁も何も家族なんだからな。そりゃ縁もあるか」


「……そうね。今でこそ家族として接してはいるけど、もしママが今も生きていて私とアンタが同じ家に住んでいなくて、普通の幼馴染のままだったらどうなっていたのかしらね」


「え、それってどういう……」


「--なっ、なんでもないわ。とにかく早くくるみのプレゼントを探しましょう」


 今のはどういう意味の発言だったんだ?

 今の発言に特に意味はなくて、何も考えずにただ羽実子さんが今も生きていたとしたら、俺たちの関係がどうなっていたのかを気にしただけの発言なのだろうか。

 それとも今の状況に納得がいっておらず、もし羽実子さんが生きていれば今とは違う状況になっていたのに、と考えていたのか、一体どちらなのだろうか。


 気になる、かなり気にはなるが今日の目的はくるみのプレゼント選びだ。先ほど金尾たちに今日の目的を忘れるなとか言っておきながら俺が別のことを気にするわけにはいかはい。

 それに、今回は2グループで1つずつプレゼントを選び、より良いものをプレゼントすることになっているので、余計に集中してプレゼントを選ばなければならない。


 そうは言っているが、飯崎と2人きりという状況のせいで、既に俺はくるみの誕生日プレゼントのことよりも、今この状況をどう乗り切るかということばかりを考えてしまっている。


 他ごとを考えるなというのが難しい状況ではあるが、もう片方のグループと落ち合うまでのタイムリミットは1時間。とにかく今はプレゼントを選ばなければ。


「そうだな。早く探そう」


 そして俺たちはくるみのプレゼントを選び始めた。




 ◇◆




 くるみのプレゼントを選び終えた俺たちはもう片方のグループと合流するために瀬下に電話をしていた。電話で店内中央にあるエスカレーター付近に集まることを決め、俺と飯崎はエスカレーターに向かって歩いていた。


「いいプレゼントが見つかって良かったわ」


「おう。まさかくるみがアロマなんて好きだとはな。イメージとは違いすぎて意外だわ」


「まぁたしかにアロマとか使ってそうなイメージはないかもね。でも本人がそう言ってたし多分間違いないわ。瀬下くんたちはどんなプレゼントを選んでるのかしら」


「向こうの3人、センスなさそうだからな……」


「そうね……。さっきのノリだとプレゼントにクレープとか渡しそうだもの」


 瀬下たちのセンスを疑いながらエスカレーターに向かって歩いていると、俺たちと反対方向から女の子が走ってくるのが見えた。それもかなりのスピードで走ってきている。


「なあ、向こうから女の子が走ってきてるんだけど


「本当ね。ぶつからないよう気をつけないと」


 その女の子はトップスピードのまま走り続け、周囲のお客さんがその女の子を必死で避けている。

 他人事だと思って会話をしていた俺たちは、徐々に近づいてくる女の子にぶつかられないように身構えていた。


 しかし、その女の子が近づくにつれて俺は違和感を感じた。


「……ん? なんかあの女の子どこかで見たことがあるような……」


「……たしかに、あの後ろで髪結ん出る感じとか……」


 そしてその女の子は俺たちの横を全速力で駆け抜けていき、俺たちは目を見開いて、その女の子が走って行った方向を振り返る。


「「くるみ⁉︎」」


 理由は分からないが、涙を流しながら全力で店内を走り去っていったのは俺たちがプレゼントを選んで渡そうとしていた相手、くるみだった。

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