第74話 嫉妬深いことを嫉妬してる側も嫌に感じてる

 私は幼馴染の瀬下が大好きだ。


 私の実家はド田舎で周りに家もあまりなく、近くにあった唯一の家に住んでいた瀬下とは幼少期から仲が良かった。

 瀬下を好きになったのは知り合ってからしばらくしてからのことだったと思うが、幼少期から高校2年生の今日までその気持ちは一度でも変わったことはない。


 それなのに、高校生になった私は瀬下を嫌いなフリをしている。


 その理由は私が嫉妬深いからだ。


 自分でこんなことは言いたくもないが、嫉妬深 "過ぎる" と言った方が正しいだろう。


 高校に入ってすぐ、瀬下が私たちのマンションに友達の女子3人を連れてきたことがあった。

 瀬下は顔も整っていて男子の中でもモテる方なのは理解していたが、まさか私と一緒に住んでいる家に女子3人を連れてくるとは思っていなかった。


 せめて男子も呼んでいれば私もまだ気に障らずに済んだのだが、女子だけを3人も私たちの家に呼ぶという行為には心底腹が立った。


 なぜ瀬下が男子も呼ばず女子3人を家に連れてきたのかは定かではないが、女子だけを連れてきたという事実に間違いはない。

 幼馴染である私が同じ家にいるってのに、女の子3人だけ連れてきて遊ぶなんてことが許されると思う?


 瀬下の愚行を何とか飲み込もうとは思ったのだが、いつまで経っても瀬下を許すことはできなかった。


 私は昔から瀬下のことが好きで、その気持ちは今も変わらないどころか日に日に大きさを増している。

 それなのに、瀬下は全くそんなそぶりも見せないで女子3人を連れ込んだのだ。


 私は瀬下と2人で同じ家に住んでいるという2人だけの秘密があるのが妙に心地良かった。  

 好きな人と自分たちしか知らない秘密を共有するというのは誰でも熱くなる展開だろう。


 そんな秘密の場所に、ズケズケと女子3人が踏み込んできたことがどうしても許せなかった。


 恋愛とは見返りを求めるべきものではないし、求めたからと言って必ず帰ってくるものでもない。

 それを分かっていても自然と見返りを求めてしまう。


 私にとってそうであるように、瀬下にとっても私たちの家が特別な場所であってほしかったのだ。


 私たちの家に入り込んできた女子3人に対して酷く嫉妬した私は、いてもたってもいられず女子3人に学校で嫌がらせをするようになってしまった。


 机に変な落書きをしてみたり、黒板にその女子3人と瀬下以外の男の相合い傘を書いてみたりと行き過ぎたイジメはしていないものの、ちょっかいをかける程度の嫌がらせはしばらくの間続いた。


 普通ならいくら嫉妬したとは言え、その相手に嫌がらせをするなんてことはしないはずだ。

 しかも、それを気づかれないようにこっそりやっているのだからタチが悪い。


 いや、自分でやっておきながら自分でタチが悪いって言うのも変だとは思うんだけどさ。


 それで私は気づいた。


 待て、私、めちゃくちゃ嫉妬深くないか? と。


 自分が嫉妬深い人間だとは思っていなかったが、この状況を見るに私たちはどうやらかなり嫉妬深いらしい。


 このまま嫉妬が続けば私はヘタをすると人を殺めるなんてことも……って流石にそれはないけど、嫉妬深すぎる自分に嫌気がさして私は嫉妬をしないように気をつけようと決めた。


 嫉妬をしないためにまずどうするか、ということを考えた私は瀬下のことを嫌いになろうと決めた。


 これが私と瀬下が仲が悪い原因である。


 正直莉愛ちゃんに天井くんのことを好きなフリをしていてしかも同棲していると聞いた時は驚きを隠せなかった。いや、隠し通したつもりけど。


 だって私たちと境遇同じすぎない⁉︎


 いくらなんでもそんなことある⁉︎ って感じだよ‼︎


 一緒に住んでるところも、本当は好きなのに嫌いなフリをしているところも、境遇が同じ過ぎて私はどうしても莉愛ちゃんを応援せずにはいられなくなってしまった。


 何はともあれ、いくら同棲しているからと言って、これからも私たちの関係が改善されることはまずないどたろう。

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