第47話 久しぶりのメッセージ

 俺は休日の朝から自室のベットに寝転がりながら携帯で漫画を読んでいた。


 昔は古本屋に行って立ち読みをしたりもしていたのだが、携帯を持っていればそんなことをしなくても今時無料で見れる作品が沢山あると気がついてからは携帯に張り付いて漫画を読むことが多くなった。


 まあ漫画を沢山読む時間があるってことは友達と遊ぶ時間が少ないってことに他ならないんだけどな。


 悲しいからこれ以上は考えないでおこう。


 今日も自分好みの漫画を厳選して読んでいると、1件の通知が携帯に入ってきた。


飯崎莉愛

<予定空けといて>

-11:26


 飯崎からメッセージ?


 俺は自分の目を疑った。


 いや、まさか飯崎から連絡が来るなんて……。


 俺は訝しみながらも、寝転がっていた体を起こし、トークアプリを開いて飯崎とのトーク画面を開く。

 ……見間違いじゃない。確かに飯崎本人のアカウントからメッセージが送られてきている。


 これまでも飯崎からメッセージが送られてきたことがなかったわけではない。


 しかし、これまでのメッセージ内容は夜ご飯がいるかいらないかとか、何時に帰ってくるかという業務連絡的なことだけだった。

 あとはプリン買ってきて、とかアイス買ってきて、と俺を顎で使うような内容のメッセージばかり送ってきている。


 なのでこうして普通にメッセージが送られてくるのは初めてに等しかった。


 6月26日に予定を空けておけばいいのか? 本当にそのままの意味で受け取ってもいいのか?


 こんなのそのままの意味で受け取る以外解釈のしようがないしな。


 それにしてもなんで急に俺のことを誘ったりなんか……。


 ……あ。


 そういえば6月26日は俺の誕生日だ。


 自分でも忘れていたが、そう考えれば辻褄が合うのか?


 いや、6月26日が俺の誕生日だったとしても辻褄は合わない。

 去年の誕生日、もしかしたら飯崎から何かお祝いされたりするのではないかという俄かな期待を抱いていた俺だったが、結局飯崎は母さんが買ってきてくれたケーキを一緒に食べることもなく、ずっと自室にこもっていた。 


 となると、今年になって急に飯崎が俺の誕生日をお祝いしてくれるなんてことはあり得ないはずだ。


 いや、でも飯崎が俺の予定を確認してきたことと、その日が俺の誕生日であることが偶然重なるとも思えない。


 何か裏がありそうだ。


 これは本当に飯崎が送ったのか? 友達がいたずらで俺に送ってるってことはないか? いたずらだとしたらタチが悪過ぎだけど。


 今日は確かくるみと遊びに行くと言って家を出て行った。

 ということは、これはくるみの策略である可能性が高い。


 だとしたら俺はどうするべきなんだ?


 俺がここで快く飯崎からの指示を受け入れて、6月26日は空けておくことを伝えたとして、それをくるみが見たら後で「やっぱ天井くん莉愛ちゃんのことすきなんじゃん‼︎」なんて言いながら茶化されそうだ。

 とはいえ、断ったら断ったで「天井くん最低だね。そんなクズ野郎だとは思わなかったよ」と言っていつものぶりっ子キャラとは正反対のドスが効いた低い声で蔑んできそうだし……。


 ……ダメだ、裏を読めば読むほど最悪のシナリオはいくらでも想像がつく。


 こうしてしばらく頭を悩ませて返信が遅れてしまったら俺が返信に困っていると思われてしまう。

 それは癪に触るので、端的かつ迅速に返信をしよう。


天井

<オケ>

-11:50


 俺が思いついた一番短い返信はこれだった。


 流石に短すぎたかとも思ったが、返信した瞬間に既読がついたので俺は思わず身構えてしまう。


 な、何かこの後返信が来るのか? 来るとしたらどんな返信が来るんだ⁉︎


 そんなことを考えながら俺は携帯とにらめっこを続けた。


 携帯を握りしめながら飯崎からの返信を待つが、結局返信がないまま時間だけが過ぎていき、それ以降飯崎から返信が来ることはなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る