第23話 尾行って結局みんな好き
私は今くるみと瀬下くんと合流するために駅のロータリー前で携帯を弄っている。
今日はくるみと瀬下くんと遊びに行く約束をしている日なのである。
今日私が2人を遊びに誘った理由は藍斗を尾行するためだ。
藍斗は瀬下くんとくるみ以外関わりがないと思っていたので、藍斗から金尾さんと二人で遊びに行くと聞かされた時はかなり動揺してしまった。
藍斗が瀬下くんとくるみ以外の人と交流を持っていた事には驚かされたが、その相手が金尾さんという事にも驚かされた。
金尾さんは学校に来ても毎日寝てばかりで誰かと交流を持っている様子はなかったし、思わぬ伏兵ね……。
藍斗が金尾さんとどこに何をしに行くのか、あまりにも気になった私は藍斗を尾行する事にしたのだ。
「おまたー‼︎」
テンション高めのくるみと、その後ろに瀬下くんの姿が見えた。二人が同じタイミングでくるとは思っておらず、私は思わず目を見開いた。
私たちも人のことを言えた状況ではないが、この二人は仲がいいのか悪いのか、本当によくわからない。
「莉愛ちゃんの方から私たちを誘うなんて珍しいね」
「あ、そ、それはその……まぁ色々というかなんというか……」
い、言えない。藍斗と金尾さんを尾行しようとしたけど、一人じゃ心細かったから二人を誘ったなんて言えない‼︎
2人には私が藍斗を尾行しているって事に気が付かれないように行動しないとっ。
「あれ、あれって天井君じゃない?」
そう言ってくるみが指を刺した方向には藍斗と金尾さんの姿があった。
藍斗の姿は確認済みだったが、私が2人と会話をしている間に金尾さんと合流をしたようだ。
「へ、へぇー。きょ、今日は誘ってないはずなのになんであんなところにいるんだろう。なんて偶然なのかしら」
「……偶然?」
くるみが私を懐疑的な目で見つめてくる。流石に私たちが待ち合わせをした時間に偶然藍斗が駅にいるのには違和感があっただろうか。
「あれ、しかも天井くん、同じクラスの金尾さんと一緒にいない?」
「ホ、ホントウダ。ナンデフタリガイッショナンダロウネ」
「……莉愛ちゃん。そういうことですか」
「そういうことってどういうこと⁉︎ 私はただ、保護者として天井の行動を見守らないといけないって義務があるだけで別に2人がどこに行くとかなんで一緒にいるとか、そんなことが気になってるんじゃないんですけど⁉︎」
「はいはい、自爆乙です」
くるみに私の魂胆を悟られて焦ってしまい、私は自ら今日の目的をペラペラと話してしまった。
まぁ偶然駅で藍斗と遭遇するなんてあるわけがないしね……。こんなことしてたら2人に愛想尽かされても仕方がないな……。
そう思った私は藍斗の尾行を中止する事を決心し、3人で普通に遊ぶ事にした。
「……ごめん。今日は普通に遊ぼっか」
「え? なに言ってんの莉愛ちゃん? 天井くん尾行するんでしょ? こんな面白そうなことやめる訳ないでしょうが‼︎」
「……え?」
私が二人に気を遣って尾行はやめて普通に遊ぼうと提案すると、くるみは目を輝かせて私の提案を退けた。
と、とはいえ藍斗と仲のいい瀬下くんは流石に拒否するでしょ……。
「ま、まぁ、くるみは言い出したら止まらないからな。しょうがない、付き合ってやるか。しょ、しょうがなくだぞ⁉︎ しょうがなくだからな⁉︎ 藍斗には内緒だからな⁉︎」
このままでは2人と仲が悪くなってしまうと思い尾行をするのをやめようとしたが、結局二人は私と同類だったようだ。
「だって天井くんが同じクラスの女の子と二人っきりで遊びに行くとか面白すぎない?」
「間違いねぇな。あいつが金尾さんと仲が良かったなんて一言も聞いたことないわ」
「金尾さん以外の人と仲が良くても驚くけど、毎日寝てばかりの金尾さんと仲が良いのは本当に驚いたわ」
「まだ2人が仲のいい友達と決まったわけではないぞ‼︎ よし、そうと決まったら尾行開始だ‼︎ あ、ほら二人が動き始めたよ‼︎」
予想以上にくるみがノリノリで楽しそうなので、逆に藍斗を尾行するのが申し訳なくなって来たわね……。
とはいっても私もあの2人の仲は気になる。
こうして私たちの尾行作戦は開始された。
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