第21話 女の子と2人で遊びに行くのはカップルじゃなくてもデートだと思う

 金尾とラインで約束をした日から2週間が経過し、金尾と遊ぶ日を迎えた俺は駅で金尾を待っていた。


 当日になってもまだ実感が湧かないが、まさか教室でずっと寝ているだけの金尾とこうして一緒に遊びに行く事になるとはな……。

 昼休みに眠りにつきそのまま寝過ごしてしまい授業に遅れて金尾と会話をしたあの日以来、金尾の様子に特に変わったところはなく学校では相変わらず寝てばかり。会話どころか折角友達になったラインを続ける事もなかった。


 一度会話をして連絡を取ったからには多少声をかけた方がいいのだろうかと悩みもしたが、相手が俺から話しかけられないことを別段気にしていないのであれば俺にとってこれほど心地よい距離感は無い。


 俺は誰かと仲良くなるのが苦手という訳ではないが、ある一定の距離感を保って接してくれる人でないと友達にはなれないと思っている。

 そう思うようになったのは飯崎と俺がそれはもう誰が見ても疑う余地も無い程仲が良かったころ、飯崎意外と遊ぶ事を楽しいと感じなくなり、飯崎さえいればいいと思ってしまうようになったからだ。


 俺と飯崎は本当に気が合っていたし血のつながった家族と遜色ない距離感で接することができており、そのせいで飯崎意外と関わることが面倒臭くなってしまった。


 そのせいで、と言うのは言い方が悪いな。


 俺は世界に一人自分の事を理解してくれて気を遣う必要もなく、一緒にいて楽な存在がいればいいと思っている。

 その当時は本当に飯崎だけいればいいと思っていたし、実際それで何も問題はなかったので寧ろその事実に気がつけた事は俺にとって得でもあった。


 なので、寝てばかりで俺の生活にあまり干渉してこない金尾は俺にとって丁度いい存在だった。


「お待たせたてまつりました」


「初っ端から口調変だな」


 これまでは学校で金尾と喋る事はなかったので気が付かなかったが、金尾の話し方には微妙に特徴があり話していて面白い。

 金尾が喋っているところを見るのは珍しいので金尾の口調が変で面白い事にも気が付かなかったが、金尾普通にが動いてる姿を見るのってレアだよな。学校でもあまり見たことない奴多いんじゃないか?


 みんなのイメージする金尾は恐らく教室で机に突っ伏して眠っている姿だろう。


「金尾って朝一番に学校来てる?」


「毎日一番乗りだね。早起きして誰よりも先に来てたくさん寝るのが私の仕事だから‼︎」


 それなら家でギリギリまで寝てから学校に来るのでも睡眠時間的には変わらないのではないか、と言う野暮な話は金尾にするのはやめた。


「寝るのもいいけど学生の本文は勉強だからな。ちゃんと起きて授業受けような」


「学校では寝てばかりですが、休日は意外と今日みたいに活発に行動してたりするんですよ?」


「確かに、ちゃんと動くんだな」


「人をレトロなラジオ機か何かと勘違いしてません?」


「大丈夫。勘違いじゃなくて事実だから」


 金尾と話しているのは妙に居心地が良く、会話も自然と弾む。


 こんなところ、飯崎に見られたらどう思うんだろうな。まあ俺のことが好きでもない飯崎が俺と金尾さんが一緒にいるところを飯崎にみられたからといって飯崎にはダメージゼロだろうけどさ。


 俺も飯崎の事は嫌いなので、飯崎が誰か別の男と喋っていたところでダメージは……ない。多分ない……いや、きっとない。


「それじゃ、いきますか」


「うむむむむ‼︎」


 そして俺たちは電車に乗り込み、目的地に向かった。

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