裏話No.16:押し寄せる不安を彼は

 



 今回までの数話で『ハト』である筈のデーラ伯爵の思考を明かしました。


 勿論主軸はデーラ伯爵ですが、この数話でアリティーが周りからどういう風に見えているかという事も、ある程度は一緒に示すことが出来たのではないかと思っています。




 猫を被ったアリティーは、近い人間からは「庇護欲を擽る人」、遠い人間からは「平凡な王子」として見えています。

 実際はアレ(執着が強く、頭が回り、周りを意のままに動かすのが得意)ですから、「よくもまぁ立派に猫を被り切ったものだ」と私自身、書きながら少し感心してしましましたよ、えぇ本当に。(笑)




 さて。

 ではデーラ伯爵についても、ちょっと触れてみたいと思います。


 今まで作中で出てきた貴族家の中でも、特に私がその対比に気をつけて書いているのが、実はモンテガーノ侯爵家、テンドレード侯爵家、そしてデーラ伯爵家の3家だったりします。


 この3家は、オルトガン伯爵家と大きく関わりがある……というか、子供達の『やらかし』被害に遭った事がある家々でもありますが、私が気をつけている事というのが、この3家のオルトガン伯爵家へのスタンスの違いです。



 モンテガーノ侯爵家は、何度手を出して自分が痛い目を見てもめげずに手を出してくる、所謂『懲りない家』。


 テンドレード侯爵家は、オルトガン伯爵家が舐めてはならない人物だと分かっていながら、諦めきれずに手を出してくる、所謂『警戒しつつ手を出す家』。


 それらに対してデーラ伯爵家は、もう痛い目を見たので関わりたくない、所謂『腫れ物には触らない家』。


 そんな感じです。



 デーラ伯爵家はマリーシアの『やらかし』被害者ですが、そこでも描写した通りの野心家です。

 だから勿論相手を貶める機は、決して逃しはしないでしょう。


 しかし彼には幸いにも、自分の力量を把握し相手の力量を測ることに長けています。

 そして同じ伯爵位を持つ家同士なので「権力でのゴリ押しが出来ない」という理由も相まってか、彼はオルトガン伯爵家の面々のことを「現状相手にする事は出来ない相手だ」と思っているフシがあります。


 なおかつ、本来プライドの高い彼は決して負け戦と分かっている戦いには挑みません。

 彼は『保守派』所属の家ですが、意外と慎重派なところなんかはもしかしたら派閥の気質に合っているのかもしれませんね。(笑)



 しかし挑まない理由に「家同士の爵位差」が含まれている辺り、彼の過去の野望『侯爵位への陸爵計画』を阻止したマリーシアの功績は高いです。




 さて。

 デーラ伯爵は最後に不貞寝を決め込みましたが、それでも明日は来るように、物語も進みます。


 次話以降では「アリティーへと齎された『失敗報告』が、一体今後どのような風を起こすのか」という辺りを特に楽しみにしていただければ嬉しいところです。


 おそらくそれは、いずれ今作史上最大の勢力を持った台風の目となることでしょう。 (←預言者の風体。笑


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