第6話 姉と涼
四月になり新年度が始まった。2年生に進級して文系と理系に分かれクラス替えがあった。僕は理系である。特筆すべきことはそれほどない。幼馴染二人と同じクラスになったことと、クラスに転校生が来たことくらいである。ちなみに、幼馴染は男女各1名、転校生は女である。
転校生の女子生徒は明るい子だったので、すぐにクラスになじんでいた。僕の幼馴染の女性の方が彼女の前の席だったので2人はそれなりに仲良くなったようであるが、僕は皆にばれないように気を付けながら、彼女を避けたいた。幼馴染の二人は気が付いているのかもしれないが、特に何も言われない。そっとしておいてくれるようだ。
まあ、避けている理由は微妙なものなのだけど…
とりあえず、僕の高校生活は平和である。
問題は家庭生活である。姉が骨折した。今度は右腕を。
つまずいた人に後ろから押されたらしい。前に小さな男の子が歩いていたので、ぶつからないように斜めに飛んでよけたのだ。階段の途中で…。
他にやりようがなかったのだろうか?
本人は「とっさに人がいない方へ飛んだ私を褒め称えよ!」などと言っていたのだが。まあ、他に怪我人がいなくて幸いである。
姉が利き腕を骨折してしまった。問題である。大問題である。
まずは、入院中。こんな感じである。
「涼。食べさせて。」
「姉さん。左手で食べられるでしょ。スプーンあるし。」
「魚とか、きんぴらごぼうとかスプーンで食べるのめんどくさい。」
ため息をついて、箸を持つ。
姉は左手で味噌汁を飲み、
「さかな~。」
と言って、口を開けた。
魚を食べさせると、
「ごはん~。」
と言って、口を開ける。
「ご飯はスプーンで食べられない?」
「片手だとめんどくさい。」
確かに、ご飯をスプーンで
結局、汁物以外は僕が食べさせた。看護婦さんに仲のいい
食事以外でも、プリンが食べたいとか桃缶を買ってこいとかわがままを言う。
他にも、着替えを手伝え、体を拭け、と僕に命令をする。このあたりの事は看護婦さんがやってくれた。入院中は。
退院後。ギプスはしばらく取れない。右腕を吊った状態である。
間の悪いことに、母が長期の出張で家を空けている。姉の世話は僕がすることになる。まあ、母がいても姉は大抵のことを僕に頼むのだけど…。
まず、食事は僕が作る。これはもともと両親が共働きなので、姉が遅くなる日は僕が作っていたので問題ない。朝食は父も手伝ってくれる。
昼食の弁当も僕が作る。姉が片手しか使えないのでおにぎりやサンドイッチになる。3人分別の物を作るのは面倒なので父と僕の弁当も必然的におにぎりやサンドイッチになってしまう。
掃除や洗濯も問題ない、普段は姉がやっていたがたまに僕が代わりにやっていた。大学院生も結構忙しいようである。
問題なのは、姉の着替えと風呂である。僕に手伝わせるのである。やめてほしい。切実にやめてほしい。
退院した次の日の朝、部屋にいる姉から、「着替え手伝って!」と、大きな声で呼ばれたので姉の部屋へ入ると、素っ裸の姉がいた。がんぱってパジャマと下着を脱いだのだが、そこで面倒になったのだ。せめてパンツは履いてほしかった…。
姉の裸は見慣れている。姉も両親も、風呂上りに素っ裸で家の中をうろつくのだ。父はすぐに着ると汗でぬれるから、母は理由が不明(僕は質問したことがない)。おそらく姉は母の影響で。一度、姉に聞いたときは下着は部屋で付けたいと言っていた。意味かよくわからない。
普通に脱衣所で着るものを着てから出てくるように育った自分を褒めてあげたい。
居間でテレビを見ている僕の後ろを、風呂上りに素っ裸で歩いている分にはそれほど問題はない。素っ裸で僕の部屋へ入ってきて、マンガを借りて帰ってゆくのもそれほど問題はない。視界の端を裸が通るだけである。あ、服着てないな。くらいですむ。
しかしだ、下着を着せるのは問題である。もろに見ることになる。何故だかわからないが、恥ずかしい。ブラは仕方がないが、せめてパンツは自分で履いてほしかった。
抗議したら、次の日からはパンツだけは自分で着脱するようになった。
夜、風呂に入るのを手伝えと言われた。母よ、専業主婦になって帰ってきてください。
「面倒だから、あんたも一緒にふろを済ませればいいじゃない。」
2人で風呂に入ることになった。姉の背中と髪を洗った。
姉が僕の下腹部を見て、
「まあまあだね。」
と、言ったので。
「下品だよ。」
と、返したら、お腹をぺしっと叩かれた。
「こっちだよ。」
腹筋の事だった。下品なのは僕でした。くっ。罠だったのか…。
風呂を上がり、着替えを手伝い、姉の髪を乾かし櫛で
何故かついでに肩を揉むことになった。ギプスが取れるまでこれが続くのか…。
姉の裸をまじまじと見ることになって少し心配になる。以前、風呂上りに裸で歩く姉に、女性の裸に興奮しなくなったらどうしてくれると抗議したことがあるのだが、本当に心配になってきた。
姉はスタイルがいいのだ。将来、恋人の裸を見ても興奮しないなんて事にはならないよね?
姉が退院してから3日が過ぎて、大型連休、いわゆるゴールデンウイークに入った。母はいまだ出張中。父も仕事である。2人ともこの時期は毎年忙しい。もうしばらくすると、まとまった休みを取る。
休みではあるが、早起きをして朝食と父の弁当を作る。今日は父も手伝ってくれた。父が家を出た後、姉が起きて寝巻のまま居間に現れた。
「朝ごはん何?」
「ベーコン、卵焼き、サラダ、あときんぴらごぼう。」
ご飯と味噌汁は言うまでも無いので省略。
「目玉焼きも追加で。」
「了解。半熟?」
卵焼きがあるのに…。ベーコンと目玉焼きで食べたいのだろう。
「固めの半熟で。」
朝食を食べ終わった。
「涼、今日時間ある? 買い物に付き合ってほしいんだけど。」
「暇だよ。どこへ行くの?」
「化粧品と下着。」
「僕も行かないとだめなの? そんなに荷物にならなそうだけど?」
「涼も行くことに意味があるのよ。」
そう言って、姉はニヤリと笑った。
とてもいやな予感がする。
____________________
学校の記述が浮いている。
次回のためのつなぎの回なのであまり面白くない。
そもそも涼と志乃を出会わせるために無理やりひねり出したので二人が出会うまではあまり面白くない。申し訳ない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます