第7話 何処かで覚えのある場面

 1日の授業が全て終わり、学生達は馬車乗り場で自分達の迎えの馬車を待っていた。友人2人は先に馬車に乗って帰って行ったので、私はベンチに座り本の続きを読むことにした。


「それにしても・・読めば読むほどにこの悪役令嬢は酷いわね・・・元々ヒロインとヒーローは幼馴染で小さい子供の頃からお互いの事を思いやっていたのに・・。それにヒロインが身体が弱いのも気の毒だわ・・・。大体この令嬢は強引だわ。ガーデンパーティーで偶然ヒーローに出会って、恋に落ちて・・・自分の方が爵位が上なのを良い事に無理やり婚約をさせるなんて・・・。」


そこまで考えた時、私はふと思った。あら・・・?これって・・何処かで似たようなシチュエーションがあったような・・・?


その時―


「フローラお嬢様っ!申し訳ございませんっ!お待た致しましたっ!」


御者のボビーさんが帽子を持ってこちらの方へ駆け寄ってきた。


「あら、いいのよ。気にしないで頂戴。本を読んでいたから大丈夫よ。」


ボビーさんは息を切らせながら頭を下げる。


「本当に申し訳ございません。それでは参りましょうか?」


「ええ。」


そして私はボビーさんに案内され、自分の馬車に乗りむと、再び本の続きを読み始めた。


 この悪役令嬢は本当に神出鬼没で2人のデート現場には必ず耳障りな高笑いをしながら現れ、たっぷり嫌みを投げつけ、さらにヒロインにはありとあらゆる悪事を働いた。そのせいでヒロインはますます体調を崩し、寝込みがちになってしまった。

そしてついに見兼ねたヒーローが友人である公爵家の跡取り息子に相談し、彼は自分の父親に2人の恋を無理に引き裂こうとする令嬢の事を告げる。

そして公爵家の力添えで、ヒーローと悪役令嬢の婚約は破棄され、彼女は辺境の地に住む醜い侯爵家の第2婦人として嫁がされてしまう。

その後、ヒロインはヒーローと晴れて結ばれ、生涯幸せに暮らした―。



私はパタンと本を閉じた。屋敷に帰りつくまでにこの本を読み終えてしまった。

この本は今までにないパターンで面白かった。

だが・・・・。


「・・・・。」


何だろう?この寒気は・・・?何だか本当にこの話は現実に起こりえる話に見て取れる。


「あはは・・ま、まさか・・・ね・・・。」


そうだ、余計な事は考えてはいけない。この話はあくまで小説の中の話に過ぎないのだから。

そして私は窓の外を眺め、家に着くまでの間ぼ~っと外の景色を眺めるのだった―。




 屋敷に到着し、馬車から降りると2人のメイドとフットマンが私を出迎えた。


「お帰りさないませ、フローラ様。」


「ええ、ただいま。」


出迎えてくれた彼等に笑顔で返事をすると、1人のフットマンが私に手紙を差し出してきた。


「フローラ様、お手紙をお預かりしております。」


「まあ・・・またお手紙?珍しい事もあるものね・・・。今朝、クリスタ様からお手紙を頂いたばかりだと言うのに・・・。」


するとフットマンは言った。


「はい。そのクリスタ様からまたお手紙が届いて居ります。」


「え?!」


私は手紙を受け取り、送り主の名を見ると確かにそこにはクリスタ様の名前が書かれている。


「1日に2度もお手紙なんて・・・何かあったのかしら・・・」


手紙を見ながら私は首をかしげ、部屋に持ち帰ってじっくり読もうと決めた。


「ありがとう、この御手紙・・自分の部屋で読むことに決めたわ。」


するとメイドが言った。


「お嬢様、それならお茶と御茶菓子はお部屋にお持ちしましょうか?」


「ええ。お願い。これから着替えるから・・そうね、30分後に持ってきて頂こうかしら?」


「はい、かしこまりました。」


「それじゃ、よろしくね。」


私は彼らに見守られながら屋敷の中へ入って行った—。

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