〜2

「えぇ、今後はこの近隣をパトロール致しますのでご安心を。」


警察はこういう風に言っていたが、私は1ミリと信用出来なかった。それは何処にいようが一緒だった。誰でも怪しくみえてしまい、仕事に支障をきたすレベルであった。


自分の机にはたんまり溜まった仕事。パソコンには上司のネチネチした説教メールが届いている。それにうんざりしながらも、私は携帯を取った。


「もしもし、また?会社に居るんだから直接…うん、うん。警察が近隣をパトロールしてくれるらしいのから大丈夫だよ。はい、分かった、じゃあね。」


すぐに電話を切られた。私は友達が鬱陶しくなってきたが私の為だと思うと、怒るにも少し引けてくる。そして、パソコンのメールをチェックする。


「もっとボールペンを握って仕事に励め?…今はアナログの時代じゃないのよ、全く。若い奥さん貰ったって、噂で聞いたけどちっとも丸くならないじゃない。」


私はため息をつくと、誰かが近寄ってきたのだ、そうアイツだ。


「全然仕事が、出来ていないみたいですね。どうなされたのですか?」

「あはは、貴方には関係ない事ですよ。ちょっとしたミスですから。」


あまり話した事はないが、普通の男だ。皆は何故そこまで好きなんだろうと、私は思った。いや前言撤回、こんな人を物としか見てない奴はやっぱり無理よ。


「いえいえ、ちょっとしたミスも積み重ねればどんどんと大きくなり、やがて大変な事になりますよ。」

「うーん、それもそうですね…人に迷惑は掛けたくありませんし…。」


私は口車に乗せられて、今までの事を全て話した。彼が、聞いている間は口角があがっているような気がした。


「それは大変ですね。貴女は一人暮らしですから更に危険な事が起こっても、不思議ではありませんよ。」

「あはは、大丈夫ですって。何とかなりますよ、それじゃあ。」


彼が、何故私が一人暮らしである事を知っているのかは分からないが、すぐさま逃げてしまった。私が一人暮らしである事を、


その後は恐怖で頭がおかしくなりそうだった。彼が犯人だとするなら目的は?何のために?私とは接点がないのに?こんな疑問ばかり出てきたわ。


それで家に帰ったら、すぐに市松人形を抱きしめた。もう心身共々崩れかけていた私の心にはこのお人形しか心を埋めるものは、なかった。


「ねぇ、おばあちゃん。この事を何とか解決出来ないかしら…もう嫌なの、助けて。」


市松人形の顔は変わりなかったが、私にはとても力強く見えたのだ。まるで、おばあちゃんの目付きにそっくりだ。


ー次の日には彼と上司と友達が首吊り自殺していたのが発見された。そして、私の物は全て戻ってきた。この日からしつこい電話も物を盗まれる事もなくなった。


しかし、私はもう誰も信じない。お人形は誰かにあげてしまった、手には縄の痕のような土汚れが付いていたから。

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