39thキネシス:裏東京垂直落下通勤快特通過待ち
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日本の首都東京の陰に潜む、裏の世界。
アンダー東京。
無限に広がるビル群と砂に覆われたアスファルトの路上、その間を流れる無貌のサラリーマンの大河。
オフィスの依頼を請けたアンダーテイカーのチームは、そんな世界へ最上級危険オーパーツ『エッグ』を追い潜入。
目的のモノを前にした直後、チームの一員である忍者三姉妹は裏切り、エッグを奪い超高層の鉄骨のビルから飛び降りていた。
「行け行け行け! 絶対に逃がすんじゃないぞ!!」
「あのクソアマどもただじゃおかねぇ!」
「ここで俺らの口塞ぐでもない限りオフィスからもお尋ね者にされるだろうが!? 何考えてんだあいつら!!?」
一方、紐無しバンジーで階層ショートカットする気合なんか無い普通のアンダーテイカーは、ドカドカと建築用足場を踏み鳴らしながら大急ぎで鉄骨の塔を駆け下りていた。
苦労して上って来た塔をこうして戻らなくてはならないとあって、原因も原因なので全員殺気立っている。
アンダーテイカー同士が獲物を奪い合う事も、現場の実情としてなくはない事態だ。
しかしそれがオフィス仲介の依頼であった場合、オフィスの邪魔をしたという事になるので、制裁措置が取られる事になる。
アンダーワールドを監視するオフィス。アンダーテイカーに依頼の仲介し支援も行うオフィス。
当然ながらオフィスを敵に回すのはリスクが大きく、それこそが法に縛られないアンダーテイカーが順守する数少ない法になる、というワケだ。
今回の忍者三姉妹による行為は、依頼主たるオフィスへの明確な裏切りである。
その後の展開を考えれば自殺行為に等しいと思われたが、他のアンダーテイカーとしては何よりまず目的の品を取り返すのが最優先だった。
だというのに、鉄骨の塔の上り中には遭遇しなかったファージが出現。
「クソっ! 出たぞぉお!!」
「こんな時に! 狙ってやがったのか!?」
「まさか連携してるんじゃないだろうな!?」
忍者三姉妹との共謀を疑いたくなるほどの悪いタイミング。
「構っている暇はない! さっさと排除して進め!!」
キャップリーダーに指示されるまでもなく、先頭を行く毛糸の帽子のおっさんが足を止めずに発砲。
通常ならば銃口がブレて弾など当たらないが、きっちりファージに命中させるあたり、冴えない中年に見えてプロであった。
後方、上層階から来るファージは、陰キャ
下りの勢いに乗った突破力でもって、裏切り忍者姉妹とヴェレスの双子へ追い付くべく全速力のチーム。
しかし、
「マズい……! コイツら、まさか俺達がここに入るのを待ってたのか!?」
「広瀬! 別働隊はどうなってる!?」
「近くまで来ているはずだがこんなのどうするんだよ!? 援護射撃ったって弾届かないだろ!!」
一体排除すれば十体増える。
今までの静けさが嘘のように、ファージが急速に増えてきていた。
アンダーテイカーのひとりが言うように、まるで獲物が罠にハマるのを待ち構えていたようだ。
地上はまだ遠く、応援も来る見込みがない。
限りある弾薬を最高の効率で費やし、アンダーテイカーは無限に湧き出す無貌の怪物を弾幕で掻き分けていた。
◇
上層階のチーム本隊と同様に、
両者が激しい差し合いをしている最中でも、お構い無しに横槍を入れてくる。
そのファージを横一文字に叩き斬り、諸共に忍者も斬りに行く双子の片方。
忍者三姉妹の次女、
特殊合金同士がぶつかり合い、一瞬の火花を撒き散らした。
金髪ロングヘアの美女と黒髪ツインテが距離を取って正対するが、そこへ群がろうとするストリート系ファージ。
直後、ドゴンッ! と叩き込まれる対物ライフル弾が、ツインテ忍者へ続く何体ものファージを貫通する。
ヴェレスの双子、前髪パッツンの方の射撃。
反動の大きな対車輛兵器であるが、双子のパッツンの方は立て続けにこれを連射し、逃げるツインテ忍者を追い撃った。
迫ってくるファージへも、至近距離から大口径弾をブチ込み大穴を開けビルの外へ吹き飛ばす。
それを、妹を守るために阻止しようと、死角となる真上から襲い掛かる長女忍者の
そして、ヴェレスの双子、ウェービーヘアの方は長女忍者の方へ持っていた太刀をぶん投げ付け、
パッツンヘアの方がその太刀を空中でキャッチし、長女忍者へと叩き付けた。
「ッ……!?」
まるで真上が見えていたかのような反応に、クナイで太刀を弾いたものの、長女忍者も流石に度肝を抜かれる。
見れば、刀を投げたウェービーヘアの方は、逆に対物ライフルを受け取りファージへ撃ちまくっていた。
ヴェレスの双子。
お互いに対してのみ有効な、
産まれ付いてより精神が繋がっているふたりは、もはや個としての概念が無いのだという。
見たもの、聞いたこと、感覚や感想、印象、記憶まで共有し、戦場にあっては互いにカバーし合うので隙が生まれないのだとか。
太刀と対物ライフルというのも、近距離と遠距離の両方に対応する為、という以上の意味はない。
乱戦の中で姉妹の方に援護射撃しても、誤射で当ててしまうような恐れもなかった。
ギャングファージが金属板のスロープを上り無限に湧いて出る。
忍者姉妹の末っ子、
グラグラと不安定に揺れ、開けっ広げな側面から落ちていくファージ。
ヴェレスの前髪パッツンの方も揺れにより落ちかけたが、足場の鉄パイプに掴まり回り込んで一回転すると、遠心力に乗り高速で内側へ戻った。
「ふんグッ―――!?」
忍者顔負けの軽業に、反応が遅れた三姉妹の長女がガードの上から蹴っ飛ばされる。勢いに乗った上に脚力も相当なのか、交差した腕を衝撃が突き抜けフロアから落とされるところだった。
「
ツインテ次女がフォローに入ろうとしたところで、死角から容赦なく振り下ろされる大太刀。
身を屈めて前転しながら、次女の
縦に真一文字の斬撃はファージを叩き斬り、クナイはファージの頭に突き刺さった。
ドミノ倒しになりながら殺到をやめないファージを、飛び石のように踏み越えボーイッシュな末っ子が姉を助けに行こうとする。
鉄骨に
「――――ふわッ!?」
ところが、姉ほど達観していない幼い末っ子は、塔の外側を這い上がってくる大きな影に驚き取り乱してしまう。
それは、建築用の超巨大タワークレーンを強引にヒト型にしたような、鋼の骨格剥き出しなファージだった。
それもただのファージなワケがない。
アンダーワールドの中で長い時間をかけ成長し、強大な力を養った個体。
グランファージだ。
「お姉ちゃん大変! 大物が来ちゃった!!」
大声で警告を発すチビ忍者に、緊張が走る姉ふたりとヴェレスの双子。
金属の軋む音か、あるいはそういう唸り声か、凄まじい騒音と振動を伴って近づくのは、アンダーワールドにおける天災とも言える存在だ。
本来、断固として対決を避けるべき脅威である。
一瞬、忍者の長女とウェーブヘアのヴェレスの視線が交差した。腹の探り合いである。
忍者三姉妹は、掠め取った黒いタマゴを持って逃げれば勝ち。
ヴェレスの双子と他のアンダーテイカーチームは、卵を奪い返してオフィスに納品すれば勝ちだ。
そして、階下からはバカでかいファージの上位個体が接近中。通常のファージも依然無限湧きしている。
このまま争い続ければ、全滅しかねない状況だ。
だからと言って、ひと
隠穂もヴェレスの片方も、例え自分が死んでも相手を殺さずにはいられない状況だと完全に理解していた。
背中を向けた瞬間に迷わず殺しに来るだろう。
共闘は不可と判断する。
ならば、
「行きなさい
「フッ……!!」
長女忍者が黒い楕円の物体を塔の外に投げ捨てた、かに見えた。
しかしそれを、ちんまい末っ子忍者が空中でキャッチ。そのまま真っ逆さまに落下していく。
捨て身で使命を果たしにくる、というのに気付いたが、一瞬間に合わず。
ウェーブヘアのヴェレスの片方は、まず投擲態勢で隙を作った姉を撃ち殺し、それから落下中の妹を狙撃しようと考えた。
ドゴンッ! とブッ放された12.7ミリ弾は姉忍者の脇腹を肋骨ごと
無表情で取り繕うが、流石に全身から汗が噴き出ていた。
真下からの風で涙が上へと飛んでいく。
正確には、チビ忍者の狩菜が落ちているので、空気抵抗で涙が舞い上がって見えるのだ。
幼い故に、狩菜には姉ほどの覚悟はない。
使命に
常日頃から口酸っぱく言われ分かっていたつもりでも、やはり理解と感情は別という事だろう。
でも、
そんな忍者にあるまじき楽観論を抱きながら、チビ忍者は降下用装備であるウィングスーツのヒレを広げようとし、
「ふえ――――?」
鉄骨ビルを絡み付くように上がってきた、
鎌首を
「狩菜ぁああああああああああ!!」
偶然にも一部始終を目撃する事となったツインテ次女忍者、
すぐ隣で下方を覗き込むヴェレスのパッツンヘアの方も、他人事ではなかった。
今回の獲物である黒いタマゴは、たった今ファージに食われたチビ忍者が持っていたのだ。
しかも、グランファージが、2体。
もはや自身の生還すら絶望視する段階だが、それでもヴェレスのパッツンヘアは太刀を振り上げビルの外へ飛び出した。
ギョッ!? とするのは、今し方まで命の取り合いをしていた次女忍者だ。
それでもすぐに相手の意図を察し、パッツン美人を追ってグランファージのいる空中へと飛ぶ。
ムカデ電車のグランファージはすぐ下まで迫っており、落着の衝撃は大したことはなかった。
車体の真上を太刀で突き刺された途端、暴れるグランファージはビルに巻き付いたまま頭部を出鱈目に振り回す。
次女忍者は滞空中にどう動くか迷っていたが、電車ファージの背に乗った瞬間には、窓ガラスの破壊に挑んでいた。
妹を中から助ける為だ。
激しく動くムカデ車両から振り落とされそうになるが、そこは忍者。車体の上の出っ張りに指を引っ掛け、しがみ付く。
ところが、窓は割れない。
「クッ……!」(やっぱりファージってこと!?)
ムカデのような電車ファージが、胴をビルに叩き付けた。
ズガンッ! と
パッツン美女は太刀を手放していた。ムカデ車両のファージの上に突き刺さったままだ。
素早く胸元の鞘からコンバットナイフを、フトモモのホルスターから拳銃を抜き放つ。戦力は大幅ダウンだが無いよりマシだ。
上から下から押し寄せ続けるファージに、ビルの外側から上って来る2体のグランファージ。
重傷を負った長女忍者は、対物ライフルから逃げるのとファージへの対処で手一杯。それも、体力的に限界が見えてきていた。
次女忍者は、使命を果たせないばかりか妹まで失い、もうどうするべきか分からない。
ヴェレスの双子も武器と弾を失いつつあった。
パパンッ! と連射される拳銃。投げ放たれる棒手裏剣。
鉄パイプや刃物を持ったファージが撃ち抜かれるが、倒れた端から別のファージが迫ってくる。
処理するより増える速度の方が圧倒的に早い。
もはやフロアは仮面のヒト型ファージに溢れ、ビルの外に文字通りこぼれ落ちていた。
更に、吹きさらしの階を外から覗き込んでいる、巨人クレーンのグランファージ。
この瞬間、王を迎えた群衆のように、全てのヒト型ファージの動きが止まった。
取り囲まれていたウェーブヘアのヴェレスと長女忍者、パッツンヘアと次女忍者は、諦めないまでも打つ手がないままファージの王を間近から凝視し、
『パーティクルブレード、焼き斬れ!』
強烈な思念の声が響いたかと思えば、光の刃がグランファージを真上から一閃していた。
階内へ突っ込まれようとしていたクレーンの腕が、一泊遅れて落下を開始する。
ギギィイイ! キンキンキン! と、鉄骨の歪みか悲鳴なのか判然としない爆音が響いていた。
超高速で一旦下方へ駆け抜けて再浮上してきたのは、黒いフードにハーフジャケットの
その手には、黄金に輝く光の剣を
先のアンダープラハ、神の如き力を振るうファージドミナスからパクった
超高温の熱エネルギーと、刀身約1メートルの長さに収束する荷電粒子の運動エネルギーは、無数の鉄骨から成る全高150メートルのグランファージを一刀両断にする破壊力だった。
「死にたくなければ伏せろ!」
「吹っ飛ばすぞ!!」
次いで来る警告に、迷わず身を沈ませるヴェレスの双子と忍者姉妹。
それを待たずして撃ち込まれるグレネード弾に、着弾点から周囲のファージがまとめて吹き飛ばされた。
猛烈な勢いの射撃でファージを薙ぎ倒してくるのは、ようやくここまで降りてきたアンダーテイカーチームだ。
ひと塊になり四方八方のファージを撃ち、強引に後退させている。
「ヴェレス姉妹! ブツはどうなった!?」
「あそこ」
キャップのリーダーの詰問の声に、ウェーブヘアとパッツンの双子は同時に塔の外を指差した。
そこにいたムカデ特急の姿に、全てを察したリーダーは苦虫を嚙み潰した顔で、僅かな間
「ええいクソッ……!」
「おいおいおいどうするんだここまで来て!?」
「もうブツなんてどうでもいい! さっさと逃げるぞ!!」
「この状況でどうやってだ!? もう弾もない!!」
とりあえず逃げるにはビルを下りなければならないのだが、今回の仕事の内容であった黒いタマゴ奪還を諦める事もできない、というのが正直なところ。
そのどちらも難しいとなれば、チームのアンダーテイカーが大荒れになるのもやむを得なかった。
しかも、ファージは満員電車状態。
身体を半分にされたがタワークレーンのグランファージは健在で、ムカデ特急のグランファージと一緒にビルを揺らしまくるのだから、立っているのも困難。
そうしている間にも弾を消費し、生き残ることのできる時間は減り続けている。
他方、黒衣のフード姿はファージの中で無双していた。
黄金の剣がひるがえるや剣閃と共にファージが撒き散らされ、
もはやチームの中で唯一機能する戦力だ。そして最大戦力でもある。
少し前までは、思い切ってビルから飛び降り、リヒターの
ところがそれも、グランファージが2体も現れたことで没となる。忍者姉妹の末っ子と同じ目に遭いかねない。
グランファージでなくても、反応速度の高い動物なら落下中でも容易に捉えるだろう。
適当にブッ放された対物ライフルが何十体ものファージを撃ち抜くが、包囲にあいた穴をまたそれ以上ファージが埋めてしまった。
ヴェレスのウェーブヘアの方は弾の無くなったライフルを放棄、膝立ちで拳銃を連射する。
鉄骨の塔はメキメキと破断の音を響かせ、しかも傾きつつあった。バカでかいグランファージがしがみ付いている上に、押し潰さんばかりに締め上げているからだ。
生存がますます怪しくなってくる。
陰キャ
振り回されるアームの先端にはワイヤー付きのフックがぶら下がっており、遠心力上乗せでリヒターにぶつけて来る。
『フンッ! ハッ!!』
素人剣法ながら、理人はこれを斬り上げで切断。回転しながら本体を斬りにいく。
ここに横槍が入った。もう一体のグランファージ。ムカデのような無数の脚を生やす快速特急だ。
これはいったい如何なるヒトの思念の集合なのか。
先頭を投身自殺者の血に染めるヒト食い電車が、陰キャ超能力者の視界一杯に迫り、
一瞬で横にズレたリヒターが、荷電粒子ブレードで脇腹を一直線に斬り裂いた。
「ギャリリリリリリリィイイイイイイ――――!!」
急ブレーキ音のような騒音は、電車型グランファージの絶叫か。
このまま連結部ごとに一両編成にしてやろうか。
そんな考えが頭をよぎったところで、別のアイディアが理人の脳髄を叩いた。
『
そのままイメージを、キャップのリーダーや他のアンダーテイカーに
「これに乗って地上まで真っ逆さまだと!?」
「あのなリヒターこれは電車じゃなくてファージだろ!?」
「イカれてんのかこの超能力者!!」
「腐れタマゴなんざもーどーでもいいし!!」
内容を聞いて、鉄火場であっても非難
要するに、今現在襲ってきている暴走特急に無賃乗車して地上まで落下、陰キャ超能力者が土壇場で支えようというのだ。
頑丈な箱に入っていれば、他のファージからの攻撃もまぁ凌げるだろう。
運が良ければ、車両内の忍者の末っ子と
問題は、肝心な乗り物がグランファージの一体だという点だろうが。
『他にいい案があればオレは一向に構わないけどそろそろグランファージと
「ぬぅううう!!」
この間にも、空飛ぶ陰キャは
今最も働いている
実際問題、このペースでファージ集団を押し退け地上まで駆け抜けるのは絶対に無理だ。
「冗談だろ保岡さん!? 自分からファージに喰われて地上まで電車通勤なんて聞いたことねーよ!!」
「アンダーテイカーはファージの晩飯じゃねぇし!!」
「そもそもアレは上っ面だけ電車の形しているだけでファージだろうが!? ヒトが乗れるモンなのか!!?」
「そのまま飛び降りてリヒターに地面の前で止めさせる方がまだマシだろ!!」
断固として拒否する男性陣。
だが、
「いいわリヒター」
「やりなさい」
ヴェレスの双子の賛成により2票。
「落とすならすべて落としてリヒター!
「妹を助けられれば、まだ卵を持っているかも知れませんね……」
裏切り者だが忍者姉妹のふたりも賛成したので2票。
「クソッ! 分かったリヒター! 全員乗り込む準備をしろ! 一発勝負だぞ!!」
「マジか!? マジなのか!!?」
「残ればファージに嬲り殺し! 嫌ならグランファージに乗って墜落か!?」
「お前ら生きて戻れたら生き残った事を死ぬほど後悔させてやるからな!!!」
キャップのリーダー保岡も賛成に回ったことで、リヒター合わせて6票。
他のアンダーテイカーもやむを得ず、この計画に乗る事となった。
こんなことになった原因(の一端と思われる)の忍者姉妹にも恨み節だ。
『バーンナウト! 弾けろ!!』
空中を滑るように移動するリヒターは、ムカデ電車の目前で
「ピンポンポンポンポンポンポン♪ 続きましてー快特ΕΦΖΖ行き電車ー、当駅ききききには止まりまままいまー人身事故ここここ――――」
突如グランファージの周囲で流れる一部不明瞭なアナウンス。
陰キャ超能力者は猛スピードでビルのフロアに飛び込むと、床を擦って制動をかけた。
それを追い、駅を通過するかのような勢いでムカデ特急のグランファージがビルの中に頭から突っ込み、
『ライトニングヴォーテクス!!』
リヒターの手の中にある黄金の剣が螺旋に変形。
床と天井の広さにまでドリルの径が拡大すると、真正面から電車の先頭車両を粉砕した。
影文理人の
現状で最大威力の一撃となる。
見た目通りの圧倒的な重量と慣性エネルギーを誇っていた電車型グランファージだが、そのエネルギーは回転力により全て分散させられ、ビルに頭を突っ込んだ状態で止められていた。
「今だ乗り込め!」
「こいつ死んだのか!? てか何をやったんだリヒター!!」
「スゲェ……! なんて破壊力だよ」
一階上にいたアンダーテイカーチームは、最後の力とばかりに弾薬を消費しファージを突破。
砕けた先頭車両からグランファージの中へ。
直後、ビルの外に出ていた胴体に引きずられるようにして、落下を開始していた。
「ぅおおおおおおお!?」
「リヒターしくじるなよ頼むから!!」
「ママー!!!!」
屍と化した電車のグランファージが後ろ向きに落ちていく。
これを猛ダッシュで追って来る通常のファージとタワークレーン型グランファージ。
だが、頑丈極まりない車両に阻まれ攻撃が通らない上に、破断面から陰キャ超能力者が追い討ちを許さない牽制射。
『ライトニングカノン! スプレッダ!!』
かつてファージドミナスにも一発喰らわせた荷電粒子の砲撃を、更に無数の光線の形で拡散させファージの大群を薙ぎ払った。
これにより、鉄骨と鉄の足場で出来た超々高層ビルまで無数の輪切りにしてしまい、派手に倒壊させたが。
「うわヤベ……」
半ばからバラバラになり、倒れてくビルの姿に思わず
同時に、最後部車両から地面に落着した電車型グランファージも、身をよじる様にして順次に全体が落下していった。
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