アンダーウォーカー ~影文理人は超能力でスクールカーストを逆転し裏の世界を駆け巡る~

赤川

アンダーウォーカー ~影文理人は超能力でスクールカーストを逆転し裏の世界を駆け巡る~

スタートアップワールド

1stキネシス:影文理人の四捨五入すれば何ら特別な事など無い日常

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 静止した物体に働きかける超能力、サイコキネシスにより軽自動車や派手な看板、建物の瓦礫などが一斉に浮き上がった。

 かと思えば、それらは猛スピードで加速をはじめ、巨大なヒト型の何かへ次々と激突する。

 天災か戦争のような規模の破壊の嵐。夜の明かりもまぶしい無人の繁華街に、粉塵が巻き起こり爆音が響き渡る。


「ひゅわぁあああ……! す、すごいよぉ!!」


 荷物のように小脇に抱えられた愛らしい少女は、耳を押さえながらもその光景から目を離せなかった。

 異質な世界、超常の力、何もかも夢を見ているようだが、映画の中に飛び込んでしまったようで興奮が抑えきれない。


「やっぱダウンフォースじゃダメか……。なら単純な質量で……! フリック!!」


 そんな現象を引き起こしている本人、黒いコートのフードで顔を隠す少年は、美少女を小脇に抱えたまま反対の腕を振るっていた。

 この動きに同調するように、様々な物体がひとりでに動き出し宙を舞う。

 黒コートと荷物状態の少女、このふたりも空中を浮遊し、巨大な人影から逃げていた。


 自由自在に宙を飛行しながら、同時に周辺一帯を更地にするほど強力なサイコキネシス。

 更に、任意の対象を超高温で焼き尽くすパイロキネシス、超感覚ESPに属するテレパシーや透視クリアサイト、あるいは遠隔視リモートサイト

 これらを駆使する黒コートにフードを被る少年は、この普通の世界と隣り合う異質な世界で、あらゆる脅威に対抗してきた。


 そして今、


「ダウンフォース! 踏み抜け!!」


 これまでにない強力な敵を相手に、少女を守りながら自身の超能力マインドスキルを全力で振り絞る。

 振り下ろす意思を籠めたコブシ。

 軸足、全重力をかけていた足場を破壊され、巨大な人影は膝から崩れ落ちた。


 これは、戦いを決める一撃となったか。

 そう思わせる心のスキを突いたのか、あるいは意志無き巨人が自動的な攻撃を続けようとしただけか、巨大な人影は手にした凶器を少年少女のふたりへと投擲。



 反応が遅れた黒コートの少年を、身長を超える大きさの刃が真っ二つに引き裂いていた。



                ◇


 影文理人かげふみりひとは、自分が比較的冷静で常識的判断能力を持つ人間だと認識している。

 性格、人格共に、それほど一般的な人間から乖離しているとも思わない。

 少し特殊な家庭環境、少し不愉快な学校生活、それらの要素にしたって、この日本社会で似たような境遇にある人物は何人だっているだろう、と考えている。


 自分の持つ、いわゆる『超能力』にしたって、そう大したモノではあるまい。


 自分が持っているのだから、この地球上には似たような能力を持つ者が何人かはいるだろう。

 そもそも、自分が持つのは見えない指先で物をちょっと押す程度の能力。

 いわゆる『サイコキネシス』というヤツだが、率直に言ってなんの役に立つのか分からなかった。

 また、こんな力を持っていたところでメリットよりデメリットの方が大きいと、熟考と実体験の末に結論している。


「あ? なに、文句あんの?」


「文句なんかねーよなぁ? 俺らをイライラさせてるのはお前なんだからよぉ!? 迷惑料払うのはトーゼンだろ? な?」


「自分が悪いの棚に上げて、まさか俺らに怒ってるわけじゃないよなー? 影文クーン?」


 しかし、暴力的で短絡的で品性下劣なクズどもに数の論理で一方的に理不尽を押し付けられるにあたり、せめてパンチ力程度の威力は出せんもんなのかな、と少し思う理人である。


 学校の端、備品倉庫裏に連れて来られた目付きの悪い陰キャラ少年は、そこで罵倒され小突かれ突き飛ばされた末に足蹴にされ現金を奪われていた。

 いわゆる、カツアゲである。

 実行犯は3人。

 遊んでいる風に前髪を弄り、ワイシャツの前を開けているチャラ男系。

 大柄で体格のいい坊主頭、いつも上から見下ろしニヤついているニヤニヤ系。

 それに、主犯格である一見爽やかな好青年、だが素を出すと目が相手をあざ笑っている嘲笑系。

 人数が増える事もあるが、理人に暴行を加えるのは、だいたいこの3人が中心となっている。


「ほら素直に慰謝料出そうねー、影文クーン」


「ッて!」


「ああ!? なんだよ文句あるならはっきり言えよテメーはよ!!」


 ニヤニヤ系坊主頭が理人の足を踏み付ける。足の甲ではない、座り込んでいる理人の足首をだ。

 ゴリッ、と関節が嫌な音を立てるが、それが口から漏れただけでも坊主頭は癇癪でも起こしたように声を荒げた。

 かと思えば、チャラ男系が理人のポケットから勝手に財布を引き抜き、中身を抜く。


「浜奈、いくらあるって?」


「しょぼい、さんぜーん」


「ウソだろ三千ぽっちって小学生か。根暗クズ陰険で根性無しのクソ雑魚な上に貧乏とか底辺過ぎんだろ。お前なんで生きてんの?」


「大クンひでー! そんなホントの事言ったら影文くんショックで自殺しちゃうじゃーン!!」


「コイツにそんな根性ねーしホントの事言っただけだろ。それで死んでも俺のせいじゃねーし。てかマジで三千とかカラオケ代にもならねーだろ、死ねよ」


 この時点で暴行傷害窃盗のスリーアウトなのだが、チャラ男も坊主頭もそんなこと気にはしない。

 考えなしの馬鹿であり、また少年法に守られ学校も事を公にしないし処罰もしないと世間を舐めきっているからだ。

 そして、その考えは正しい。


 理人が暴行を受け現金を盗まれたのは、これが初めてではない。

 つまり、このイジメがはじまったのが、入学も間もない頃。

 明らかに殴られたと分かる怪我を負った理人は担任教師に事情を聞かれたのだが、事実をありのまま話した結果、


「騒ぎ立てればお前の将来にマイナスになるだけだぞー」


 という忠告を、後日受ける事となった。


 そしてその日に、「チクリ野郎」という汚名を受けると共に、徹底的な報復を喰らうハメにもなった。

 挙句、学校側から理人の保護者に、教師に対してウソの告発をしたという注意が行われ、ただでさえ険悪な叔父一家から散々な罰とペナルティを課せられる、と。

 ここまで散々にやられたら、もう誰かに訴え出ようとは思えないだろう。


 少なくとも、今は。


 邪魔な物でも蹴飛ばすように、理人の足が蹴飛ばされる。

 そうして目の前に屈み込んで来たのが、相変わらずヒトを嘲笑った目の同級生クラスメイト花札星也はなふだせいやだった。


「辛いよね。誰も助けてくれないし、誰も味方になってくれない。なんで自分がこんな目に遭うんだって思う?

 でもそれには必ず理由があるんだ。つまりこんな目にうのも影文くんの責任なんだよ」


 自分たちの行いの責任を完全に忘れたような、他人事として騙る好青年(擬)。

 一ヶ月以上もこんな目に遭っていると、理人としても相手がどういう神経をしているか大凡おおよそ分かってくる。

 外面が良く、誰に対しても良い顔をし、正しいことしか言わない善人。

 だがそれも全て、自分の優位な状況を作る為のアピールでしかない事を、理人は知っていた。

 教師の心象を良くし、生徒からは信頼を得る。学校の人気者。

 その裏では、どれだけ叩いても問題にならない理人のような者をいたぶり、追い詰め、そこに楽しみを見出すのだ。

 最初のうちは、誰もこの人気者がそんなゲスな根性をしているとは思わない。

 仮に後から気付いたとしても、大勢が花札星也支持で固まっている以上、誰もその勝ち組から爪弾き者にされたいとは思わないのだ。


 無論、理人自身にイジメに遭う責任などありはしない。

 仮に理人に罪があるとすれば、やや俯きがちで目付きも良くないところか。

 それを裁く権利など花札星也と仲間2名にあるワケもなく、また人相の悪さでいえば、3人の加害者は理人以上であったが。


「影文くんさ、僕らのこと見下してるだろ」


 加害者の立場でありながら、全く悪びれず罪悪感も感じさせず、まるで世間話のような気軽さで理人に語りかける花札星也。

 理人には、そんな態度もセリフも意味不明である。

 もし本気でこの人気者がそんなことを考えているのなら、完全に被害妄想か病気かなにかだ。


「そんなことない、って思ってる? いいや、キミ僕らのこと見下しているんだよ。舐めていると言ってもいい。分かるんだよ、その態度見てれば。

 謝らない従わない素直にならない、叩かれて蹴られてやっと不貞腐れたように言うことを聞く。

 僕らが疲れて諦めるのを待ってるだろ。黙っていれば分からないし徹底的に反抗してもそれを知られる事はない。

 そんな浅はかな考えに僕らが気付かないと思っている時点で相当馬鹿にされてるよね」


「マジでクソ野郎だな。生きているだけで害になる害虫だわ。コイツが生きているとかマジ許されねぇ」


「ヤベー俺らって実は雑魚扱い? スゴイネー! ここまでボコボコにされて脳内勝利宣言とか惨め過ぎてソンケーするわー! メンタル強過ぎでしょ!?」


 何ひとつ正しくない身勝手な理屈を事実のように押し付けられ、頭を蹴られ、大笑いされる。

 そんなご大層なこと考えているものか。腹が立って悔しくて何も出来なくてどうしていいか分からないだけだ。

 それを理人の抵抗のように決め付けられ、挙句に自ら進んで服従しないから見下している、とは超理論過ぎて恐れ入る。

 理人は常々、ヒトを害する側にも自分だけの屁理屈を組み立てる才能が必要であるのだろう、と考えていた。


「うん、こういうのは曖昧にしてダラダラ引き延ばされるのもよくないね。もうすぐ夏休みだから、休み明けに……そうだな、一日1万稼いで合計40万持ってきてよ」


「はぁッ!?」


 だが計算能力は最悪だ。


「『40万』ッ……なんてそれもうカツアゲって額じゃねーだろ!? そんな金巻き上げられたら警察だって動く――――づッ!!?」


「勝手に喋んなテメー! ホンッとテメェの立場ってもんをわきまえてねーな!!」


 何を言っても無駄。

 そう思えばこそ黙り込んでいた理人だが、流石に要求額が大き過ぎて思わず声を上げてしまった。

 そして直後に、横合いから頭に靴裏叩き付けられた。

 激痛と朦朧とした意識の中、倒れた理人の耳に、相変わらず平然とした好青年の声が響いてくる。


「コンサルタント料だと思えば40万なんて安いもんだよ。キミは空気を読まないし反抗的だし反社会的で学校という社会の不適合者だ。

 僕らがそれを矯正してあげるんだから、正統な対価ってところだろう?

 払えないなら、僕らが何かするまでもなくキミは学校にいられないだろうね。

 だってそんな性格じゃどうせ長くはもたないだろうし」


「これも人生経験だよ影文クーン。わがままばっか言っても世間は自分の思い通りにならないんだよねー」


「…………夏休み全部使ってバイトしても40万なんて無理だろ」


「出来ない出来ないってテメェに都合のいい事ばっか言ってんじゃねーぞクズ。それが通るとか甘いんだよ。ダメな奴は何やってもダメってハッキリわかんだな!」


 理人の考えとやらを勝手に代弁し、それを否定し、非難し、怒る。

 それに、理人が何を言おうが、そもそも話を聞くつもりが無い。

 力を持ち立場も強い側の花札星也たちは、会話などする気はなく、またその必要も無いのだ。

 ただ適当な言葉を並び立て、力で要求を押し付けるだけだ。


               ◇


 これが、影文理人の日常である。

 もともと理人の学校生活は、中学生の頃から楽しいものではなかった。

 とはいえ、目付きが悪い、根暗、陰キャ、そんな評価をされていても、距離を取られるくらいならまだ幸運だったのだろう。

 暴力を振るい、権力を振るい、数の論理でもって一方的に踏みにじられるよりは、遥かにマシであった。


(クソッ……! 実際どうすっかな。バイトったって一日8時間フルに働いても1万円なんて行かないだろ。高校生で時給1000円以上のバイトなんてそんな無い……無いよね?

 あの偽装優等生、微妙なライン攻めてきやがってッ)


 下校の道行、散々蹴られた頭や身体が痛み、惨めさも理人をさいなみ考えが纏まらない。

 高校最初の夏休みでは、目一杯バイトして金を貯める。それは当初からの目的だった。

 それで叔父の家を出られる、なんていうのは夢物語に過ぎないのは分かっているが、だからと言ってその稼ぎをクズ野郎にみつぐ事になるなど虚し過ぎる。

 だからと言って支払いを拒否すれば、夏休み後の高校生活はより悲惨なモノとなるだろう。

 それこそ、傷害罪など気にもしない坊主頭に対しては、命の危機を覚えるほどだ。

 仮に殺されたところで、元総理を父に持つチャラ男なら、本気で無罪を勝ち取りそうな恐ろしさがあった。


 いっそ本当に退学するか、という考えが頭をよぎぎる。

 だがそれも、あのゴミ3人の思惑通りかと思うと、その通りにしてやるのも腹立たしい。

 そもそも、今の保護者である理人の叔父夫婦は、こういう問題が起こること自体を許さない人達だ。

 相談できる相手も解決する手段も無く、どうしたものかと途方に暮れるしかなかった。



 そんなところで、同じように道往くヒトの中に、たまたま薄汚れた大人の姿が目に留まる。



 気になったことに、大した理由など無い。少なくともこの時は、そう思った。

 その人物は、見た目は50代から60代ほどか。外国人らしいが、正直理人には何人だとかはよく分からない。

 頭髪は後ろに撫で付けた品の良いロマンスグレー。だが、ベージュのコートは痛みと汚れが目立つ。元は良い品だったのだろう事が理人にも察せられた。


 だが、特に気を引かれたのは、理人から見えるその背中だ。

 疲れきり、道に迷い、目的も無くただ足を引き摺り前に進む、その姿。

 自分も背後から見られたらこんな感じなのだろうか。

 そんなことを思わずにはいられない理人だったが、


 フと少し先にある交差点に、明後日の方向を見ながら大型トラックを侵入させる運転手の姿が見えた気がした。


「ッ……と!」


 そして、理人は咄嗟にサイコキネシスを発動。

 

 前述の通り、理人の能力は大した力を持たない。

 だがそれでも、裾を引き危険を警告する程度のことは出来る。

 脚を引きずるように交差点へ入ろうとする、草臥くたびれた男性。

 そのコートが見えない手により引っ張られたその瞬間、生じた反応は激しかった。


「――――は!?」


 通常、見えないサイコキネシスの手で触れられたところで、大体の人間は反応が鈍い。ほとんどの場合、気のせいか勘違いだと思ってしまうようだ。

 ところがそのコートの男は、弾かれたように振り返ると、その目が理人を捉えてしまう。

 完全に想定外。

 サイコキネシスそのモノものは見えないのだが、理人は能力使用時に無意識にコートの男へ手を伸ばしていた。


 しかも、露骨に背を向け逃げ出してしまう理人。

 自ら怪しいと言っているようなものだが、それでも普通の人間なら、超能力の類で触れられたなどとは想像もしないはず。

 そう願うほかなかった。


 足を止めた男のすぐ後ろを、余所見運転の大型トラックが通り過ぎていく。信号無視だ。

 コートの男の視線は暫し目付きの悪い少年の背中を追っていたが、すぐに歩き出すと、その姿は雑踏の中に消えていた。


               ◇


 まるで悪いことでもしたかのように、目付きの悪い少年は背中を丸めて足早に裏通りを歩いていく。

 実際にしたのは、一応ヒト助けであるが。


(あービックリした。なんだったろ? さっきの。

 てか、サイコキネシスはバレないにしても、なんか変なポーズしているところは見られたか……。別に何をしたとかは、分からないよな?)


 理人は自分の能力が大したモノではないと考えている。

 だが一方で、これが希少な能力であることも自覚している。

 たとえ缶コーヒーすら持ち上げられないサイコキネシスであるにしても、他人に知られたら面倒な事態を招くという事も容易に予想できた。

 ヒト助け出来たことは後悔していないにしても、あの反応の仕方は少々気になる。


(まぁ……もう会う事もないだろ。一応、暫く滝紙通りを抜けるのはやめよう)


 とはいえ、所詮は名前も知らない第三者。

 己の人生で2度会う確率は非常に低く、帰って忘れてしまえばいいだろう。

 そう自分に言い聞かせて精神の安定を図ろうとする理人だったが、


「キミには借りが出来たようだ。危うく交通事故で命を落とすなどという無念に過ぎる最期を遂げるところだったよ。感謝する」


 何故か、進行方向上にある曲がり角から姿を現す、くたびれたコートのイケメンおじさんである。


 ビックリし過ぎて、ダンディおじさんのセリフが一切頭に入らなかった理人。

 はるか後方にいたはずのおじさんが目の前にいたり、結局しっかり顔を覚えられていたりで、頭の中は軽いパニックだ。

 咄嗟に逃げたくなるが、なにやら逃げ切れる気がしないし、顔を覚えられているなら尚更無駄な気がする。


「警戒するのは当然だ。見ず知らずの人間に接触される以上、それは当然のことだ。良い事だよ。

 そんな私がこうして前触れなくキミの前に立つのは、失礼だとは思う。

 だがそれでも私は、キミにこうして礼を尽くさねばならない義理があるのだ」


 しかし、上品なダンディおじは、目付きの悪い陰キャ少年に対しても非常に丁寧な態度だった。

 そして、やはり理人が何をしたのかは理解されている様子。

 そこに思い至ると、やはり緊張は解けない少年だった。


「あ、あの……オレ何かしました? 何を仰っているかよく分からないんですけど…………」


「まず自己紹介させていただこう。私はエリオット・ドレイヴン。英国人だ」


「あ……影文理人です。日本語お上手ですね」


「ありがとう。妻が日本人でね」


 うっかり自己紹介を返してしまう理人。自分から素性バラしてどうするんだ馬鹿、と思うがもう遅い。


 すぐに、個人情報どころの騒ぎではなくなるのだが。


「それに、この事も言っておかなければならない。

 私もキミと同じだ」


 『同じ』とは、いったい何を言っているのか。

 理人がそんな疑問を口にする暇も無く、たまたまアスファルト上に転がっていた50円硬貨が、顔の前に浮かび上がっていた。

 サイコキネシスによるモノだが、理人が動かしているワケではないし、そもそもこれ程の力はない。


 これが、師となる英国紳士の超能力者と、影文理人の出会いだった。




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