仲間 / option

「やりすぎなんじゃない?」


 すっかり縮んでしまったオロチはツキヒメに向かって話す。ツキヒメはため息を吐き、オロチの方へと倣った。妹を心なく惨殺したあとの会話である。


「あれくらいやらないと姫は死なない」

「そ、そうなんだ・・・」


オロチは姫を侮っていたのか、末恐ろしいことを知ってしまった気がした。ツキヒメが立ち去ろうとしたとき。


「ツキヒメ!!」


 ツキヒメが振り向くと首の皮1枚状態のキヨヒメが立っていた。顔、身体中に血が糊となり紅葉が張り付いている。腹部に刺さった刀を引き抜くと地面へと投げ捨てた。顔に張り付いた紅葉を取るとツキヒメへ投げる。

 【巨刃】を発動するつもりだ、この近さだと衝突する。換装間に合わず避けることもできない、素手で身体を咄嗟に守ろうとするが藁の盾。


 と思ったとき、キヨヒメが胴体真っ二つに横に割れ胴体と下半身が別物になった。急な出来事に目を閉じてしまったツキヒメは、何の攻撃も来ないことに目を開ける。

 そこには2つになった妹・キヨヒメが居た。崩れ落ちるキヨヒメだった物、後ろには侍従のアンチンが刀を持ち立っていた。


「よくもまあ。色々と良くして頂きましたね。俺が最後まで看取ってあげますよ。・・・このクソアマ!!!@!”#$%&’+*」


 アンチンという侍従は、ツキヒメの刀を振り回し自らの主であるキヨヒメの骸を刺したり斬ったりとやりたい放題。散々な乱暴狼藉を働いた。


「それ、ワタシの刀・・・」

「このクソ姫。くたばれ、くたばれ!もうくたばってるのかアッハッハ!」


 アンチンの耳には届いていない。これ以上は倫理的にアウトなので省略。


 切り刻まれたキヨヒメから輝く“謎の光物”が溢れ出す。何かはツキヒメへと向かい衝突すると身に染み込むように溶けて無くなった。おそらく姫の力がツキヒメへと還ったのだろう。

 狂乱化したアンチンは思う存分やったあと、ツキヒメへ刀を返した。通常の侍従は姫に絶対服従、裏切ってはいけない。それは姫君からの継続事項だったはず。


「其方はキヨヒメの後を追おうとかないのか?」

「は?なにそれ、そんなことクソ死んでもやらないよ」

「口の聞き方に気を付けろガキ」


 ツキヒメは此処で死ぬか(この世から)消えるかの選択を迫ったが、アンチンは。


「たかが仕えるクソ姫が変わっただけでしょ」


 微動だにせずアンチンは言い返した。


「で、次のクソ姫。誰を殺すんです?」

「手っ取り早いのは北部だな。オトヒメの所へ向かう」



 かくして、ツキヒメは「子守りはしないからな」と寝返ったアンチンを仲間へ受け入れるのだった。侍従とは姫たちの身の回りの世話をし、姫に忠義を尽くす存在であるはずだったがアンチンは何もかもが壊れていた。

 ツキヒメ一行は次の標的、北部地帯を治めるオトヒメの元へと向かうのだった。

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