墜落 / war
辺境にあった比咩(ひめ)神社からオロチに乗って移動するツキヒメ。オロチは空さえも飛べるため移動には困らないはず・・・だった。教区教会へと差し掛かったとき、上空から見下ろすと要塞と化していた。要塞の縁から赤色のセンサーで捉えられたオロチ。その瞬間に警報が鳴っているのが聞こえる。
「高度成長期か、クソッたれ」
「あんなの前になかったね。五年、世間知らずだったボクたちは無事浦島太郎になったとさ」
「物語終わってしまってるじゃないか」
ツキヒメとオロチが漫才じみた会話をしていると要塞の壁から砲台が頭を出し、こちらに大砲を撃ってきた。それをギリギリ回避するとツキヒメが落ちそうになる寸前、オロチは体勢を立て直した。
「あっぶな―――。なんだアレは、こちらが襲ってくる準備でもしていたのか?」
「あんな砲台なんてデカい怪物でも襲ってくるとでも?デカい怪物なんていないよー。まさかそんな怪物いたらボク、見てみたいものだね」
「其方のことです」
オロチは「え?」と素っ頓狂な声を出すと大砲に撃ち落とされてしまった。
「このクソ鈍間(のろま)蛇」
「前から言ってるでしょ、蛇じゃない竜です」
「どうでもいいわ」
オロチが反論するも、どうでもいいと一蹴されてしまった。「えぇ・・・」と小さくオロチが落ち込んでいる間もない。恐らく教区教会の兵士の鬨が聞こえる。落下した地点を観測し、攻め込んできたのだろう。
「ま、うまく忍び込むなんて性に合わないな」
「戦うのは苦手だなあ」
「それでよく忠義を誓って姫君に飼われていたな。さっさとアイツらを焼け」
兵士が近づいてくるのが分かる距離になってきた。落ちた地点は林になっており、草を踏む音が鳴り響いている。オロチは林にスッポリと入るほどに縮んでいる。
「裏切りの
敵の兵士がこう叫んでいるのが聞こえる。
「ワタシいつの間に鬼になっていたんだ?」
「さあ・・・?」
オロチが返事するも、どうやら様々な脚色されて嘘の情報が出回っているらしい。デマを流したヤツらは妹たちに違いないと思ったツキヒメは怒った。
「
「姫君!!!いたぞ!!!殺せ!!」
ツキヒメが呟いたあと、敵兵に見つかりツキヒメに刃を向け走ってきた。
「向こうはやる気満々ってか」
ツキヒメは腰に携えた刀を抜いた。姫の力を封印されたツキヒメは文字通り、真剣勝負でしか戦えない。
「長い間、休んでいたけど戦えるの?」
「舐めるな蛇」
「だから、蛇じゃないって――あ、」
走り出すツキヒメ、次々と敵兵をなぎ倒し草木を血で染めていった。
「囲め、囲め!!」
兵士の一人が叫ぶと、敵兵はツキヒメの周りを円で描くように囲んだ。囲まれたツキヒメ、オロチは心配そうに見つめる。
「やあ、やあ。一人の女に、こんな大勢で歓迎してくれるなんて」
「うるさい!裏切り者!!クロヒメさまが、どれだけ心を痛め――」
敵兵の一人が話している途中でツキヒメは飛び掛かり、敵兵の喉元を刀で貫いた。
「え?よく聞こえなかったな。もう一度言ってみろ」
喉元に刺した刀を引き抜くと血が噴き出し、ツキヒメの顔を真っ赤に染め上げた。血の噴き出す音を聞き。
「元気の良い返事だこと」
ツキヒメは刀についた血を素振りをして払う。敵兵たちに刃を向けると、固まっていた敵兵は一斉に斬りかかってきた。
「雑魚が、消えろ」
それはまな板の上に食材があるかの如く、四肢胴体が切り分けられた死体や首がへし飛び枝に引っ掛かっていたりと地獄絵図。血なまぐさい臭いが鼻につく。幾分かの敵兵は逃げ惑うもオロチの下敷きになってしまった。
「せっかく服を新調したのに血だらけになっちゃったね」
「遅かれ早かれ、こうなるんだ。覚悟はしていたさ」
屍を踏みつけ歩き出すツキヒメ。林を抜け川を渡り、太陽の位置からすると昼頃になっただろう。オロチで移動するのは目立つため徒歩で移動することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます