休養 / reborn
新たな姫君が反逆したと情報が流れてから五年の月日が流れた。あのときツキヒメは、姫君を守護する
ツキヒメは姫君の後継者となることは嫌だった。それは母なる姫君が居なくなることを指しているため。妹たちより姫君と多く接したツキヒメは妹たちに羨ましがられることが多々あり、妹たちは
「ツキヒメ姉さまばっかりィ、ヒメギミさまに会っててずるいよォ!」
「仕方ないだろう、姫君になる予定なんだから」
幼い頃、オトヒメと交わした会話。オトヒメは頬を膨らませてウソ泣きをしていた。
「あたしもヒメギミさまとお話ししたい!ツキヒメ姉さまだけお話ししてる!ふじょうどー!」
「不平等、だ。ちゃんと言葉を覚えて出直しな」
コトヒメと交わした会話。コトヒメは話すのが大好きな妹だった。
「姉さまだけ遊んでもらって酷い、ヒメギミさまと遊びたいのかな!ですかな!」
「言葉遣いを直して、人生やり直せ」
オリヒメと交わした会話。遊ぶのが大好きな妹だった。
「「ツキヒメ姉サまだけヒメギミサまに舞踊を習って、わたシたちも褒められたい!」」
「褒められたいだけじゃないか、帰れ」
ユキヒメ・ベニヒメと交わした会話。伝統的なものが大好きな双子の妹たちだった。
「ツキヒメ姉さまだけ一緒に寝て貰ってるのオカシイのです。一人で寝るなんて無駄なのです、弁償するべきです!」
「一人で寝るのが怖いだけじゃないのか?あと使い方間違えてるぞ」
キヨヒメと交わした会話。のんびりすることが大好きな妹だった。
「・・・・・・・・・・・・。」
「何か話せ、話さないなら帰る」
ハシヒメと交わした会話(?)人と接するのが苦手な妹だった。
「ツキヒメ姉さま。」
「なんだ?クロヒメ」
「ツキヒメ姉さま、大好き!これからも一緒にいようね」
クロヒメと交わした会話。クロヒメだけは我が儘を言わず懐いてくれた。稽古も何もないときは、ワタシの後を付いて回ったっけ。
「ハッ・・・!」
夢を見て恐らく笑っていたのだろう。懐かしい過去の出来事を夢で見るとは、ワタシは姫君さまや妹たちとの些細な会話さえ取り戻したいのか?
いや・・・、ワタシは妹たちに殺されかけ左脚さえ失った。もう帰れる場所も待っている人なども居ない。
「なーに、幸せな夢でもみた?起きた
「殺すぞ、
ツキヒメに話し掛けるのは危機を救ってくれたオロチ。いつもの調子で暴言を吐き捨てるツキヒメ。オロチはため息を吐いた。
「ツキヒメ、汚い言葉を使っちゃ駄目だって言ったでしょ?」
「母親か、
「母親も同然でしょ?五年も一緒に居て面倒見てあげたのだから」
オロチはとぐろを巻き、ぺろぺろと舌を時折出しながら話している。先代の姫君に飼われていたオロチは姫君に忠義を誓っていた。それは末代まで添い遂げると。
「面倒見てたのはワタシだろ?恩着せがましいことを言うな」
「助けたのと、おあいこでしょ?」
その事を出されるとツキヒメが黙り込み、言い返せなかった。ツキヒメは無言で立ち上がると義足の調子を確認し、全裸だったため衣服に袖を通した。髪を結い、支度を終えたツキヒメ。
「もう良いの?」
「五年もかけたんだ。アイツらにお礼してあげないとな」
面倒くさがりでガサツなツキヒメ、意外にも負けず嫌いだったらしい。オロチは地を蛇行しながらツキヒメの後について行った。
「ツキヒメ、どうしても
「当たり前だろう?あんなことをされたんだ、向こうだってそういうつもりじゃないのか?ワタシは舐められたままなのは嫌いなんだ」
五年前に射られた左脚を触り、あの時受けた激痛を思い出す。オロチは身体の大きさを変えられるため見る見るうちに大蛇となった。
ツキヒメとオロチは辺境の地にある
「なんと御大層な名前の神社、ゴミみたいな神社だろうな」
「安直すぎない?罠とか?」
「まさか、そんな頭なんて妹たちにはない。行けば分かるさ」
五年の間休養した比咩神社を後にし、ツキヒメとオロチは教区教会と東部地帯の境界にある清明神社へと向かった。
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