反逆 / error

 怒り狂ったツキヒメ。ツキヒメは武器を換装すると再び刀を翁へと投げた。怒りに身を任せたツキヒメに冷静な判断はできないかもしれない。


「なぜこんなヤツに手を貸す!」

わたしたちを大切にしなかった罰なのです。無駄にツキヒメだけを可愛がられ、愛情が無駄になったのですよ」


「は?」

「弁償してください」


 キヨヒメはオトヒメが持っていた和傘を奪い刀へと放り投げた。


「あらァ、わたくしの傘がァ」


 オトヒメは自分の傘を投げられシクシク泣いている。きっとこれはウソ泣きではない。


二つ投げられた物は巨大化し相殺した。姫の力【巨刃】武器等を巨大化させる力。ツキヒメは攻撃が無効化や相殺され地団駄を踏む。


「無駄です、ツキヒメ姉さま。超無駄な力を使わせたのです、弁償してください」

「あらァ、あらァ、もう御終いかしらァ?」


 ツキヒメの攻撃を相殺したキヨヒメは自慢げな顔をしている。傘を失った腹いせかオトヒメは煽るが、小物臭がして仕方ない。


「「姉サま、大人シくシて。ソれジゃあ首が取れない」」


 ユキヒメ・ベニヒメも口を出した。相変わらず手を繋いだままで。


「姉さま、一人で可哀そうかな!早く楽にしてあげようかな!ですかな~」


 オリヒメがツキヒメに向かい話しかけると、オリヒメの姿が消える。すぐさまツキヒメの後ろに立っており、ツキヒメを転ばせた。姫の力【瞬間移動】


「クソガキが!」


 ツキヒメも転んでいた所からオリヒメの後ろへ回った。換装していた刀で斬り掛かるもオリヒメの姿は消えていた。空ぶったツキヒメ、地面を叩きつける音が虚しく響く。


「幼い頃から一緒だったね。私たち」

「何を今更」


 ツキヒメは刀を投げ捨てた。ツキヒメが弓を引く動作をすると手元が発光し始める。光でかたどられた弓が完成し、矢は真っ白く光り翁を捉える。姫の力【光の弓】弓を引く動作で幻の弓矢が現れ相手を貫く。

 クロヒメが翁の前に出る。


わたしたちは、ツキヒメと比べられながら日々を過ごしてきたのよ。その苦痛や苦悩が分かる?それに病んだハシヒメは禁忌さえ起こしたのよ。考えたことある?考えたことないでしょうね、最初から何もかも持っている人は」


「ゴチャゴチャ、ゴチャゴチャと・・・遺言はそれだけか?」

「ツキヒメ。わたしたちの為に」


 翁の前に出たクロヒメの額に狙いを定める。クロヒメが発言を溜めてこう言った。


「死んで」


 ツキヒメが弓を深く引くと光が一層ギラギラと光りはじめる。射られそうな間際も平然としているたちひめたち。


「さあァ、翁。姫君ツキヒメの力を封じなさいィ?後で良いコトしてあげるわァ」

「ハッ。オトヒメさまの言う通りに。・・・伊邪那岐大神よ、我が言葉を成し遂げたまえ」


 翁が祓詞の最後の句を読み上げるとツキヒメが構えていた光の弓が霧散した。霧散し弓を引いて力を込めていたツキヒメは手のひらを見詰め、翁の方を向き直しこう言った。


安倍晴明あべのせいめい!!」


「終わりね」


 クロヒメが言うとコトヒメが光の弓を構えておりツキヒメに向けて放った。するとツキヒメの左大腿に突き刺さり、左脚が千切れた。


「「下手くソー。ノーコン姫ここにあり」」

「全くの無能だったわねェ」

「一発で仕留められないとか無駄な時間です、弁償して下さい。ちゃんと頭を狙わないと」


 的を外したかの如く、非難されるコトヒメはガチ泣きしている。クロヒメは特に非難せず、他の姫はブーイングしている。地に這う姫君となったツキヒメは、妹たちを見上げるしかなかった。左脚の断面より血が流れており、血の池が形成されそう。

 クロヒメはツキヒメを見下ろし虫けらを見るような目で見つめた。


「さようなら、月姫姉ひめぎみさま」


 オトヒメの手から波動砲が放たれる。波動砲は地を這う月姫へと目掛けて進み、ツキヒメは皆死んだと思った。安部清明は後の愉しみが待ち遠しくて仕方なさそうである。凄まじい爆発と閃光に妹たちは目を細めた。

 しかし、その場にはツキヒメの姿はなく千切れた脚と、竜と思われる鱗が散乱していた。


「殺し損ねたわ」


「「なーんで、警戒シなかったのでスかー?」」


「使えない老人のせいかしらァ?」


「じゃあー、ご褒美はお預けってことかな?ですかなー」


 妹たちは国中に新たな姫君が反逆したと嘘の情報を流し、目撃情報を集めた。一方の安倍晴明は計画遂行できなかった為、ご褒美はツキヒメ討伐後とされるのだった。

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