目論見 / idea


「本気ですよ」


 コトヒメは冷酷な目で、目の前にいる姉が宿敵であるかの様に睨み付けた。


「翁。御戯れはよして、こちらに来なさい」


 コトヒメがそう言うと馬乗りになっていたクソジジイ改め翁は、その場を離れていき妹たちの後ろへと回った。手にしていた祓串を投げ捨てながら。


「裏切ったな、翁」

「裏切ったのではありません姫君さま。姫さま達の、その麗しい御身体・・・とても堪能でき利害が一致しているのです。」


「・・・・」


 ツキヒメは黙り込んだ。翁はしきりに自分の股間を撫で回した。


「先代の姫君さまの身体、とても良かったんですよ?ハァハァ、思い出すだけでってしまいました」

「黙れゴミカス」


 完全にブチギレたツキヒメ。手を伸ばすだけで、その手には一本の刀が現れた。姫の力【武器の換装】ストックしておいた武器の切り替えが行える。

 ツキヒメが素振りをすると髪を結っていた布が切れ、髪が垂れ下がり顔を覆った。髪の間から覗かせる目は血走っていた。


「わたくしめは、ツキヒメさまの身体も愉しみたかったですよ」


 火に油を注いだ翁はイヤらしくツキヒメを見詰めた。ニヤニヤと口元からはよだれが垂れており、妹たちの暴走は翁が手引きしたのが分かった。怒りにより動悸が収まらず震える手も止まらない。ゆっくりと翁が居る場所へと歩いていく。


「震える手で殺せるとでも?」


 クロヒメは毅然とした態度で向かってくるツキヒメに話しかける。他の姫たちもクスクス笑い、乙姫だけウソ泣きを見せている。


「あァ、そこまで怒り狂うお姉さまァ・・・。大好きですわァ、大好きで大好きで大好き、お姉さま大好きィ・・・だから殺してしまいますわァ」

五月蠅うるさい、ガキども。今、翁共々刻きざんでやるから待ってろ」


 ツキヒメは刀を地面に叩きつけると衝撃波が迫る。ユキヒメ・ベニヒメは手のひらを前に差し出すと衝撃波が掻き消された。姫の力【無効化】大概の攻撃、モノは無効化できる。


「チッ。腐っても姫か」

「さあ。姫さま達、姫君を殺しわたくしめを美女の楽園へと連れて行って下さい」


 翁がそう妹たちに言う。ケラケラ笑う妹たち。ツキヒメも手のひらを前に出すと光る波動が翁へと放たれた。


「クソジジイ消えろ」

「駄目よォ。まだァ、翁には生きてもらわないといけないのォ」


 オトヒメがツキヒメを指さすと指先から光る波動が放たれる。姫の力【波動砲】波動砲同士がせめぎ合うと消滅した。


「姫君さまの大きな乳房、あの感触が未だ手の感触に残っています。あァ、思い出すだけで射精してしまいそうです。知っていましたか?」


 もはや翁の言葉には耳を貸さないつもりのツキヒメだったが。


「あの姫君さまは、もはや力は行使できなかったのです。わたくしめが封印していたのですから、ヒッヒ。それをバラさない代わりに・・・毎晩毎晩毎晩、わたくしめとお遊戯してくれたのですよ」

「黙れ黙れ黙れ黙れ!!!」


ツキヒメは叫んだ。声帯が千切れるかと思うほどに、翁は話すのを止めず。


「ツキヒメさまが寝ている隣でも、姫君さまは喘いでくれましたよ」

「ボケナスゴミカス、@”#$%&’!!」


 もはや言葉にならず。姫君はそんなことをしない、翁は姫君の力を封印し弱みにつけ込んでいたと確信する。

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