第15話 27

ある男がいた。

男は2度目のギブアップをした。

社会からのギブアップである。

理由はなんだろうか。

人間関係、繋がり、他人、自分以外の存在の重さ、一緒にいることによる負担、、、、

とにかく、自分の以外の存在がいると、何かしら男の負担になる。

そんな男だった。一応言っておくが男にとって1度目のそれまでと2度目のそれまでに大きな違いなく、男の周りにいる人間だちは良い人たちだった。どんな意味の含みもなく立場が上でも下でも横でもなんでも、良い人たちで、男にとって害になる人はそうそういたかった。そうそうとつけたのは、男は危ない人間を分別し避けることは出来たからである。

なので2度のドロップは先に述べた理由であり、男の内側のみが問題なのである。


さて、そんな男は貯金を使いながら

次の人生を思案していた。もつ転げ落ちることのない人生を。

男はひとりで生きていきたかった。そんなことできるのだろうか?


男は思いついた。

物書きになろうと。


物書きである。

文字書きできである。


頭の中に思いつくことを書き起こし

生計を建てられたいかと考えたのである。

頭の中を文字に起こし、人の目に触れるところに置きそれを見た人に金を置いていってもらう。

それならばひとりで生きていけるのではないだろうか。


そう思ってから、男はただただ男の頭に思いつくことを文字に書き起こしていった。考えたり考えなかったりするなかで思いつくことを書くだけ。


ここまでの工程はひとりで進んでいる。

あとはいつの日かこの文字の羅列たちを人目の着くところに置いておく。そして、見た人が金を置いていく。そんなシステムをつくる。もしくは、そんなシステムに乗せてもらうことが必要である。


さてさて、男の人生はこれからどうなっていくのか?

話はどうやらまだ終わらなそうである。

そろそろ貯金もなくなるようだ。男はこれからどうするのか?


そんなことを考えている男の前には鏡があった。もちろん鏡には男が写っている。男は目を見た。見た目を男はもう覚えていない。男は鼻を見た。見た鼻を男は覚えていない。男は口を見た。男は笑っていた。笑っていた。似他離(ニタリ)と笑っていた。上がった口角はヒクヒクと動いている。笑っている。定まらずに口角をヒクつかせながら。

昔こんな顔をいくつも見たなと思った。他人には笑顔に見えるその顔を男は自分の顔で初めてみた。他人のその顔を見た時男は怖いと思った。自分のその顔を見た時男は怖いと思った。


こんな物語

昔だったら、あれよあれよかふんだりけったりか男は文字書きとして生きていく物語なのだろう。

しかし、現代はそうはいかない。人は簡単に死ぬ。

男の書いた文字は誰の目にも触れることもなく、何も産まず、男と共に朽ち果てていくか、またどこかへ落っこちていくのか。


どちらにしても、文字の羅列であることに変わりはない。

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