第13話 花
ある男がいた
男は近所に老人と犬が住んでいることを知っていた。
何度かすれ違ったことがあり
会釈をするくらいの間柄であった。
老人は犬を花と呼び可愛がっていた。
ある日花が一人で座っているのを見つけた。
ある商店の前であった。
老人が中で買い物をしている間まっているのだろう。
すると商店の中から、何やら騒がしい音が聞こえてきた。
覗いてみると老人が倒れていた。
老人は病院に連れて行かれたがそのまま死んでしまったらしい。
しばらくして、また商店の前を通りすがると
そこには花が座ってした。
男は近寄っていき
「花」と声をかけた。
すると後ろから声がした
「その子花というのかい?」
店主の声だった。
どうやら老人が死んでからずっとここで老人の帰りを待っているらしい。
店主は犬嫌いではないらしいが、得意でもなく体質も合わないそうで、できれば犬が好きな人に引き取ってもらいたいと言っている。
男は花を見た。
男は犬が好きだった。
犬好きであるために飼い主へ愛情と忠誠心の深さを知っている。
しかし、花は以前より痩せ細っていた。
その姿に胸が打たれ、花を引き取ることにした。
花を家に連れて帰るのは、非常に骨が折れた。
花はやはり商店の前を動こうとしない。
そればかりが手を出そうとすると、唸り声を上げて男を威嚇してくる。男は、まあそうだろうなと思い噛みつかれる覚悟で無理やり花を抱きかかえた。
案の定噛みつかれ、ひっかかれもう散々であったが、なんとか家に連れ帰ることができた。
しかし、花は何度も脱走を試みた。そんな花が家に上がることはまずなく、なんやかんやあって玄関にいるようにんsり扉が開くのをジッと待つようになった。
散歩も朝晩必ず商店の前に行きたがった。
結局、男には懐かない日々が続いていたが、犬とはこういうものであり、逆に花という犬の主人を思いやる気mぽちに感服していた。食事と散歩と安全な寝床を提供するだけの関係がそれなりの月日が経つくらいに続いていた。
ある晩のこと、花が珍しく吠えた。
男はその声にびっくりして飛び起きた。すると裏口の方から複数の見知らぬ人間の声がした。まさか、強盗か。と男は思い、急いで吠える花のもとへ向かい。花を抱きかかえて玄関から飛び出した。最近は物騒なもので、自分の私利私欲のために簡単に人を殺す輩がいる。家のものならいくらでもくれてやる。それよか命の方がよっぽど大切だと思ったからである。
そのまま、できるだけ家から離れた河川敷で朝を待ち。家に帰宅した。どうやら、花の声に驚いたのか家は荒らされた形跡はなく、とりあえず一安心した。一応警察に連絡を入れた。男は花にありがとうと言って頭を撫でた。
思えば、頭を撫でたの初めてかもしれない。それよかとっさのことだとはいえ、なんの抵抗もなく花を抱き抱えることができたのも昨晩が初めてだった。
男はいつもの毎日に戻った。
あの晩以降も花は玄関で外に出る機会を伺っており、散歩には必ず商店の前を確認しにいく。触ろうとすれば唸り声をあげ、抱きかかえ用ものなら噛みつかれ引っ掻かれそうな日々に戻った。
しかし、夜になると花は男の寝床にやってきて
男の隣で寝るようになった。
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