第8話 ひも

ある男がいた

男は部屋の外の世界と関わりたくなかった

常にカーテンをしめ扉も開けずに

できるだけ部屋の中で過ごしている

外の世界の情報はたまにラジオで聞くくらいだった


男はある朝目覚めた

男はいつも通り電気をつけようと

電球からぶらさがっている紐をひっぱった

カチッと音がする

しかし電気がつかない

男は気がつく

自分がひっぱった紐は電気に続くものではなく

天井から直接伸びる紐であった

まったく見覚えの無い紐が電気に続く紐の隣におりていた。

その紐を引っ張った感覚は電気をつけるあのカチッという感覚と同じものであった

男はその天井から伸びる紐をもういちどひっぱった

カチッ

また電気をつけたりけしたりするのと同じ感覚同じ音がした。しかし、なにも変化は起こらない。試しにもう一度ひっぱったがやはりなにも起こらなかった。

はて、と思いつつも男は隣の電気の紐を引っ張り灯をつけて、いつも通りに一日を過ごす。なんとなくラジオを付けてみるとラジオはこういっていた。今朝空に正体不明の閃光が走ったと。専門家やなんやらか達にはよれば隕石が空中で爆発したのではないか、と見解しているらしい。

男はふーん、そうか、ぐらいに思いその話を聞いていた。

一日が終わり、電気を消しとこに入る。

と、また男は電気の横の紐を引っ張ってしまった。案の定ひっぱっても何も起きないので、男は電気の紐をひっぱりそのまま寝た。


以降数日間

男は起床と就寝の際

いつも通り電気の紐を引くはずが謝って天井の紐を引くということを繰り返した。


男はいい加減無意味なしヒモを引き間違えるのは止めようと思い、天井のヒモと電気のヒモとがひと目でわかるように天井のヒモに印をつけた。印といってもその辺に落ちていた紐を括りつけて見た目にはっきり違いを持たせただけである。


それから数日は紐を間違えることはなくなった。


ある日男はラジオをつけた。

ラジオはこういっていた。

最近は日照不足による不作が問題になっているらしい。


男はふーん、そうか、ぐらいに思いその話を聞いていた。


そして、その日も電気を消し布団に入った。


次の日朝起きると電気がつけっぱなしだった。

確かに昨日の夜のカチッという感覚と音は頭の中に残っている。

ということは、間違えて天井の紐をひっぱって寝たのかと男は思った。


そしてその日もいつもどおりの1日が過ぎていった。

その日の夜はきちんと電気が消えたことを確認し

布団に入った。


数日後


男はラジオをつけた

今度は日照りが続いているらしい。

これはこれで不作の原因となりまた世の中は大変なことになっているらしかった。


しかし、男はふーん、そうか、ぐらいに思い話を聞いていた。


その夜男は寝ようと電気を消そうとしたが

間違えて天井の紐に手をかけていた。

今度は引っ張る前に気がついた。

なんどもなんども間違えてしまうので

もういっそうのこと引きちぎってしまおうと思った。


一瞬悩んだが

いつのまにかどこからかわからぬ得体のしれない紐なのでないに越したことはないないと思い


ふんっと思いっきりひっぱった。

はやり、カチッという感覚と音とともにブチッと紐は根元から切れてしまった。


電気の方の紐をひっぱり電気を消し

布団に入った。


それから夜が開ける日は二度と来なかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る