第6話 御百度参り


ある男がいた。

男はお金が欲しかった。

お金が欲しいという願いを叶えるため、御百度参りをすることにした。

男の家から少し離れたところにある少し有名な神社へ祈願へいった。


最初の十数回がたったころ男はいつものように参拝を終えた帰り道の途中、足元に小銭が落ちているのを見つけた。男は、早速祈願の効果が出始めたのだろうと思い喜んだ。


それから男は参拝で向かう道中、よく目をこらし、地面に銭が落ちていないかを注意するようになった。もちろん、祈願と信仰の気持ちは強くなった。


二十数回がたったころ、また小銭を拾った。視界の端にきらりと輝くものをみつけ、茂みの中をあさって見ると今小判が出てきた。男は大いに喜んだ。男はより一層注意深く道を歩くようになった。今までは神社へ行く道中だけだったが、それ以外に外出する時もほとんど下を向き、ゆっくりと歩き視線を隅々まで行き渡らせるようになった。


三十から四十、四十一、二、三、四、五、六、七、となにも拾うことはなかった。四十八回目。男は家の戸棚を掃除していた。すると、ぽとりと何かが地面に落ちた。小銭だった。男はまたも大いに喜んだ。それから男は、外にいる時だけでなく家の中にいる時も注意深くまわりを観察するようになった。さらには、小銭を見つけたきっかけである掃除も常に家の隅から隅まで行うようになった。


それから五十六十七十八十九十と過ぎていき男は町中、家中を散策するようになりたまに小銭を拾った。


そして百回目。男は神社へ行き、これまでの幸運に感謝の気持ちを伝え男の御百度参りは終わった。


ある男がいた。

男は家族の病気が治ることを願っていた。

家族の病気が治るという願いを叶えるため、御百度参りをすることにした。

男の家から少し離れたところにある少し有名な神社へ祈願へいった。


十数回がたった。男は信仰心が高かったため参拝をするときはしっかりと手を合わせ言葉遣いに注意して誠意をもってお願いをした。

二十数回がたった。男は賽銭を置くようになった。さらには参拝の前に社を少し掃除してからお祈りするようになった。

三十四十数回目、男は参拝に行く前に身を清めるために滝行へ行くようになった。

五十六十七十八十九十と男はお祓い、撫で物、垢離、禊等ありとあらゆる加持祈祷を行なった。


百回目のお参りが終わった。家族の病気が治る気配はない。


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