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第5話 面
ある男がいた。
男は人気役者だった。
男の演技は多くの人を魅了した。
それだけでなく男はとても愛想の良い人間だった。
男には技術もあれば人望もあった。
そんな人望の厚さもあってか
芸事だけでなくなにか困りごとがあると男の元に相談に訪れるものも少なくなかった。
男は笑顔で話を聞いてくれるが、それだけでなく、きちんとしかってくれることもあった。
時にやさしく、時に厳しい態度は多くの人々から多くの信頼を買う。
男は舞台に立つ。
仮面をつけて舞台に立つ。
男の演技は迫真で見る者を魅了する。
明るい演目の時は笑顔の仮面をつけ人々を笑わせ、暗い演目の時は鬼の仮面をつけ人々を怖がらせた。
男は暗い演目は好きだった。鬼の仮面をつけ人々が怯えている姿を見るのが好きだった。鬼の仮面をつけ演技をしていると、そこから見えるお客の姿を見てニタニタと仮面の下では笑っていた。
男は明るい演目は嫌いだった。笑顔の仮面をつけている自分が人々に笑われるということに腹がたっていた。笑顔の仮面をつけ演技をしていると、自分を見て笑い物にしているお客に腹を立て、仮面のしたはいつもおぞましい顔をしていた。
舞台終わり仮面を外し、一息ついていると
ある人間が男の元に相談に訪れる。
男は話を聞く
男の表情はいつも通り笑顔である。
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