第6話

「いじめて欲しい女?」

「そう散々私を馬鹿にした女。その女をいじめていじめていじめ抜いて、学校に来なくなったら友達辞めてもいいわよ」

「あんまりそういうのは」

「友達の言う事訊けないって言うの?」

 俺はあまりの勢いに思わず頷いてしまった。

「ターゲットだけど同じクラスの和田 香里(わだ かおり)よ」

 和田香里ねー。

 その名前を聞いてもピンと来る外もなく、むしろ知らない名前だ。

「何でその人をいじめるんだよ?」

「私の大切な大切な人を取ったのよ」

「大切な人ってやっぱり彼氏?」 

「何であんたにそんな事言わなくちゃいけないのよ」

 まぁ協力関係だから知っといた方が、やりやすいんだけどな。

 でも何か言ったら絶対怒られるから、俺は何も言わずにいた。


『ガシャンガシャン』

 サンドバッグがまた大きく揺れている。


 次の日になり俺は学校で栗山に近付いた。

「何か用?」

「えっと和田香里ってどいつ?」

 栗山の席は教室の入口から逆の窓際で真ん中の席だ。

 自分の席側の逆方向にいる人物に向かってアゴをくいっと上下させた。

 あいつか。

 見た目はとてもじゃないけど人をいじめる様には見えない。

 むしろ真面目で誰かに手を差し伸べる事が出来そうな人だ。

『何されたの』と言っても栗山は何も答える事がなくだんまりだ。

「で俺はどうすればいいんだ?」

「それをあたしに訊かないで」

「分かったよ」


『キャー』

 クラスで一人の女子生徒が騒いだ。

 それは和田だ。

『私の机の中にイガグリを入れたのは誰?』

 俺だよ。

 だがそんな事を名乗る事はしないがな。

 イガグリの針の様にお前の長くて綺麗な髪の毛を全部抜くって考えだよ。

 正直ちょっと胸が痛むのは気のせいか。


「こんなもんでどうだい?」

 一応栗山に陰湿の嫌がらせについて訊いた。

「さすがは陰湿のスペシャリストね。だけどこれじゃあまだまだ足りないわよ」

 俺は無言で何も答えなかった。

「いじめられてるって認識が相手に伝わればそれでいいんだから」

 

 日に日に陰湿な行動はエスカレートし靴や鞄を隠し学校でいじめられてると完全に認識した。

 

 あまりにもいじめが続いたので和田が先生にいじめらてると言い急遽クラス会議が開かれる事になった。


「このクラスで非常に残念だがいじめが起きた。皆机に伏せてくれ」

 言われた通りにクラスにいた全員机に突っ伏した。

「いじめをしたと思う者は正直に手を挙げて下さい」

 果たしてこの問いかけに手を挙げる人はいるのだろうか。

「下げて。皆さん顔を上げて下さい」

 俺は目を擦りながら顔を上げた。

「皆さんの中にいじめてる人はいなかったです」

『先生』

 先生の悩みを吹き飛ばすかの様に先生に誰か問いかけた。

『はい。栗山さんどうしましたか?』

 栗山だと。

「あたし犯人知っます」

 なっ。

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