第2話

『テスト返すぞ』

 先生から一枚一枚生徒にテスト用紙が返されていると、明らかに一人だけテンションが下がった生徒を見つけた。

 昨日放課後にいた名前忘れた女子生徒だ。

 全てのテスト用紙が行き届いた所を見ると先生から赤点者の発表が始まった。

『長野 代(ながの だい)、栗山 京香(くりやま きょうか)』の二名の名前が上がった。

 俺は逆に名前が上がる事を期待していたので予想通りだ。

『お前ら二人は今日の職員室に来い』

 先生からレーザーポインターを向けられて俺達は放課後に別々で職員室に向かった。


 そろそろ行くかな。

 栗山が先に行って一時間以上は経つので、そろそろいいかなと思い職員室の扉を開くと何やら揉めていた。

 お呼びじゃないのでそっと扉を締めクラスに戻ろうとすると先生に見つかってしまった。

「長野お前から先に処理してやるから来い」

 処理って。

 生徒を何だと思っているんださ。

 俺は先生の所で怒られてる栗山をチラっと見ると顔を下に俯いていた。

 あらら。 

 これは随分としぼられたね。

「長野お前今回のテスト0点とはどういう事だ」

「すいません勉強不足でした」

「私は今回たまたま点が低くかっただけです」

 先生と俺が話してる最中に栗山が割って入ってきた。

「そうかも知れないな。だけどお前が将来を本当に考えているならこの点数じゃ厳しいぞ」

「失礼します」

 栗山は先生の了承を得ないまま職員室を出てしまった。

「長野お前ちょっと栗山を慰めて来てくれないか?」

「え、何で俺が」

「先生とかよりもクラスメイトから声をかけられた方が嬉しいもんだよ」

「でも俺存在感ないし」

「いいから行ってきな」

 先生から半ば強制で栗山を慰める事になり、急いで俺は教室に向かった。


 教室に着くと栗山は帰宅する支度をしていた。

 こういう時言ったい何て声をかければいいのだろうか。

 俺がしどろもどろしていると向こうが俺に気付き近付いてきた。

「元気だしなよ」

 栗山は鳩が豆鉄砲くらったような表情をした。

「あんた今あたしに言ったの?」

「そうだけど」

「あんた知ってる。みんなから陰キャラで存在感がない奴で『幽霊』ってあだ名付いてるの」

「あ、知らなかった」

「あたしに気安く話しかけんな」

 俺はただ立ち尽くし栗山が帰る後ろ姿をただ見ていた。


 俺は家に着くと早速ストレス解消方のサンドバッグに怒りの鉄拳をぶつけ始めた。

『あの担任マジで怠慢だわ。ふざけるなよ。誰が幽霊だ。あの栗山とか言う女。マジでふざけるなよ。イライラするな本当に。このままじゃ収まりきんね。陰キャの力明日思い知らせてやる』

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