第66話 告白
公園のベンチに腰かけて、黒田くんがスポーツドリンクをおごってくれた。
「ぼく、だれかのことをわすれているような気がするんだけど、天羽知らない?」
言いたいことはわかる。でも、今はそれが聞きたいわけじゃないよね。
あたしは、黒田くんの目をはっきりと見た。
「あたし、黒田くんのことが好きでした」
ミチルちゃんとおなじ過去形だけど、あたしは弱虫だから涙がこぼれた。
「ごめんね、黒田くん」
告白しておいて、すぐふって。でもね、黒田くんにも自分にも、うそはつきたくないから。これから先、黒田くんが好きになる子は、あたしなんかよりずっと素敵な子だから。
だから、大丈夫だよ。今日のことは、もう、わすれて。
「そっか。ぼくは、天羽のことが好きになりかけていたんだけどな」
「ありがとう。それだけで充分だよ」
本当ならここで、黒田くんの記憶を操作するつもりでいたんだけど、もう、その必要はないよね。だって気持ちに決着がついたもの。
あたしたちは、ただのクラスメイト。おっちょこちょいで泣き虫なあたしをはげましてくれた黒田くん。あたしの勝手で気持ちがなくなっちゃって、ごめんね。
そうしてあたしたちは、解散した。
去りゆく黒田くんの、長い影を見送りながら、あたしはこっそり涙をふいた。
つづく
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