第50話 面談っ!!
そして放課後。アイビーにやさしくされたことで大満足してくれたらしい三人は、にこにこしながら面談にのぞんでいた。そう、アイビーもいっしょだからだ。
「はじめまして、山田 アイビーです。たぶん、すべての根源はおれにあると思い、また昨日の現場にもいた証人として、およばずながら参加させていただきます」
うぉ。アイビー、敬語もちゃんとしゃべれるんじゃない。っていうか、とっても上品。三人の母親からもため息が聞こえた。でも、そうは問屋がおろさないのがあの三人の母親だ。ひとりが口を開けば、次々と口を開く。
「はぁ、山田くん。おうわさはかねがね。おほん。ですがあなたは天羽さんの遠い親戚なのでしょう?」
「そうですわ。それならば、天羽さんよりの証言になりかねませんわっ」
「そんなの、卑怯ですわ」
「ちょっと、お母さん」
さすがの当事者たちも、これ以上アイビーの機嫌を損ねたくないのだろう。必死に言いつのるけれど、三人の母親たちはそれぞれ眉を釣り上げている。
「だいたい、おたくの娘さんが悪いのではなくて?」
「お守りだかなんだか知りませんけど、学校にネックレスをつけてくるだなんて、非常識ですわ」
「おっしゃる通りですわ。お守りと言えども、アクセサリーじゃありませんか」
そうですわ、そうですわ、の大合唱が始まってしまった。
ママ、自己紹介をしてからずっとだまっている。きっと、あたしのことあきれちゃっのかもしれない。やっぱり、天使の羽根が生えた時点で学校をお休みしておけばよかったのかもしれない。今さらおそいけど。
深く、息を吸うママの気配がした。
「みなさんの、娘に対する意見はおうかがいいたしました」
それはとても凛として透き通った声で、みんなをだまらせるには十分だった。
「みなさんが、ユイナの十字架をアクセサリーだとおっしゃるお気持ちもわかります。ですがこれは、まぎれもないお守りなのです。みなさんはご存じないでしょうが、夫は長期の海外赴任をしております。あまやかしているという意見もあるかもしれません。ですが、このお守りは、祖母から夫にたくされた、れっきとしたお守りなのです。それを否定なさるのですね?」
しんと静まり返った空気が、緊張しているのがわかった。
「それではみなさんは、大切な娘さんたちと長期で離れなければならない時に、お守りのひとつも持たせないと、そういうことなのですね?」
ママは、みんなの顔を順番にながめていった。
「承知いたしました。それでは今後、娘に十字架を持たせるのはやめにしておきます」
「あのっ、待ってくださいっ!!」
ママがじょうずにまとめてくれようとしているのはわかっている。それでもあたしは、自分の意見を言わずにはいられなかった。
つづく
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