第49話 天使の秘策

 そんなわけで、へぼへぼなあたしの頭に、アイビーの声が入り込んできた。


『どう? 調子は?』


 アイビーにあたしの気持ちなんて筒抜けだから、さっきのあたしだけのアイビー的なやきもちにも気づいてないはずなのに、それなのに、やさしかった。それがまた、なんとも言えなくくやしくて、なんだかあたし、矛盾してる。


『あんまりよくないかな? 井川くんに、きちんとおことわりしたの』

『うん。よく言えてた』

『でも、やっぱりシーちゃんが好きみたい。あたし、どうすればいいんだろう?』


 もう、どうしたらいいのかわかんないよーっ。


『しかたない。天使の秘策を使うか』

『天使の秘策?』

『弓矢のことだよ。知らないのか? これからシーちゃんとやらに連絡を取って、井川と会わせる』

「ちょっ!?」


 おもわず口から声が出て、あわてて両手でおさえた。シーちゃんと会わせちゃったら、ますます混乱しちゃうじゃないっ。


『ところがそうはならないんだな。あいつ、一応キューピッドだからさ。例の弓矢と松明も持ってるってわけ』


 弓矢はともかく、松明って?


『松明は、恋の取り持ち役っていう意味がある。ってまぁ、そういうわけで明日、パーフェクト・ロイヤル・スリーエンジェルが学校に来る』


 意表を突いたアイビーの言葉に、あたしは無理やり言葉を飲み込んだ。なんてこと、なんてこと、なんてことっ!! 今日は面談、あしたはアイドル!? ちょっとつめこみすぎじゃないのっ!?


『心配すんな。あいつらなら、なんとかやってくれるって』


 そうは言うけど、あたしは心配でしかたないよぉ。


 つづく


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る