第42話 天使の個人情報
教室にたどり着くと、さっそくミチルちゃんが声をかけてきた。顔はとってもにやけている。
「おっはよー、ユイナ。黒田くんとはどう?」
「え? あ、その。たまたまいっしょに登校しただけだよ。それより、ミチルちゃんはどうなの?」
「あー、あいつねー。あいかわらずパーフェクトでロイヤルな天使だか知らないけど、シーちゃんに夢中だよ。まったく、ご当地アイドルなんてつい最近できたばっかりなのにさっ」
あははっ。今朝の感じだと仲良しなのかなって思ってたけど、やっぱりダメか。
「あたし、協力するから」
「いいよ、無理しなくっても。ユイナは自分のことで大変じゃん。それなのにぼくのことまで気を回さなくてもいいんだよ」
うーん? 黒田くん情報だと、ミチルちゃんが自分のことを『ぼく』呼びするようになったのは最近で、そして井川くんとはふつうに仲良しだったんだよね? どこでこじれちゃったんだろう?
『そりゃ当然、井川がご当地アイドルに会ってからだろう? それまで異性を意識したこともない井川にとっては、カミナリに撃たれたような衝撃だったはずだぞ?』
アイビー。窓際で男の子たちの真ん中にいるアイビーに心の中で呼びかけられて、首をかしげる。
『でも、アイドルだよ?』
『実の所、ロイヤルなんちゃらは本物の天使なんだ』
えっ!? うぐ。叫び出しそうになったのを両手でおさえる。
「どうした? ユイナ。挙動不審だけど?」
「ううん、なんでもない」
それ、どこ情報なのよ。なんで本物の天使がご当地アイドルなんてやってるのよっ!?
『そこら辺はほら、神の采配ってやつ? この地域でなにかが起きそうな予感があったんじゃないか?』
『なにかって?』
『実際、黒羽根の天使の件が起きてるわけだ』
なるほど、そう考えれば、この地域を守るために派遣された天使と考えればわかりやすいけど、でも、それじゃあますます井川くんは見込みなしだし、井川くんがシーちゃんをあきらめてくれなければ、ミチルちゃんとのことも進展する見込みがないじゃないよ。
『ねぇ、シーちゃんに連絡って取れないの?』
『うーん? それは秘密ってことでいいか? 悪いがうかつに天使の個人情報を話せないんだ』
あー、なるほどね。じゃなくて、もう少し融通きかせてくれないかな? やっぱり無理かなぁ。
『無理』
そこまで断言されちゃったんじゃ、どうにもできないや。
「でも、ほーんと、ユイナってシーちゃんに似てるよねー」
不意打ちでミチルちゃんに言われて、あわてて否定する。現役天使でご当地アイドルに似てるだなんて、おこがましい。
「いやもう、本当、あたしなんか似てないよぉー」
そう言った瞬間、ミチルちゃんの表情が変わった。なにか、嫌なものでも見るみたいな目で見られてたじろいでいるところにチャイムが鳴って、なにも言えないまま、ミチルちゃんは席に着いた。
つづく
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