第41話 黒羽根の天使はだれ?

 ミチルちゃんに井川くん、それに黒田くんの三人が自分のことを『ぼく』って呼んでいることにあらためて気がついちゃった。


 黒羽根の天使も、自分のことを『ぼく』って呼んでいる。そして、女の子のミチルちゃんはともかく、黒田くんと井川くんの背丈はおなじくらい。


 ひょっとして、三人のうちのだれかが黒羽根の天使だったりするのかな?


「どうした? 天羽」


 人さまにお見せできないほど真剣な顔をしているところを、よりによって黒田くんに見られちゃって、あわあわと両手を顔の前で振った。


「な、なんでもない。あのさぁ、黒田くんってミチルちゃんたちとおなじ小学校だったよね? ひょっとして知り合いかな、って思って」


 なんとかごまかした。しかも、有力な情報になるかもしれないことを聞き出せそうっ!!


「五年生の時に両親が離婚して、転校してきたんだ。あの二人は昔はもっと仲良しだったんだけど、どうしたんだろうな?」

「たしか、井川くんはミチルちゃんのことを名前で呼んでいたんだって、聞いたんだけど?」


 こんなこと、黒田くんに聞いたら誤解されるかもしれない。だけど、好奇心が止まらないんだ。


「そうだな。それに、清野は自分のことをあたしと呼んでいたはずだが、どうしたんだろうな?」


 うん? そうすると、ミチルちゃんは黒羽根の天使ではない? のかしら? 確定できないけど、そんな気がしてきた。


 じゃあ。だったら黒田くんか井川くんが黒羽根の天使ってこと? そんな。二人ともやさしいのに。


「天羽はいつも、むずかしいことを考えているみたいだな」

「そ、そんなことないっ!! ないない。ただ、ちょっと最近よくないことがつづいているから」

「そうだよな。面談なんてことになったら、うちは大変なさわぎになるだろうし。天羽はよくがんばってるよ」


 あの、さぁ。って声をかけることができない。もしかして、黒田くんのパパって、すっごくきびしいの? なんて、立ち入ったことはとてもじゃないけど聞けない。あたしにそれを聞く権利なんてない。でも、あたしでたすけられることだったら、力になりたい。黒田くんがあたしにやさしくしてくれるみたいに。


「あたし、黒田くんの味方だよ?」


 思い切ってそう口に出してしまってから赤面しちゃう。やだ、はずかしい。黒田くんも、すごくびっくりした顔をしている。それから、すごくやさしい顔になって微笑んだ。


 あの時、ワンちゃんをたすけた時の笑顔だ。


「ありがとう、天羽。おれも、天羽の味方でいるつもりだからさ。なにかあったら相談してよ」

「うんっ!!」


 なんだか少しだけ、黒田くんの力になれたような気がして、昨日からずっともやもやしていた気持ちが晴れたような気がした。


 よしっ、今日もがんばるぞーっ!!


 つづく





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