とても短編とは思えない、密度の濃い素晴らしい物語でした。何より、ぜひとも2回読んでほしいです。2回目が一番楽しめ、そして心に沁みてきます。音の表現や情景が浮かぶ繊細な描写も見所のひとつですが、まるで一曲の音楽を聴いているかのような「物語の繋がり」が本当に心地良いです。ラストは、演奏が終わった時のようなスッキリとした気持ちに満ちていました。まさに。ソルフェジオ音階のような物語でした。
この作品で注目すべき点の一つに、「空間」の使い方が挙げられると思う。「空間」とは、文章上の空白や改行、もしくは小説内世界での空白の時間やその流れも含んでいる。 この「空間」の把握と活用が非常に活きていて、最後に「あっ」と思わせてくれるいい作品です。