第5話 禁煙
この度、マコトは禁煙することにした。
が、気になることがあった。
「飛鳥さんと会えないのか・・・」
そんなことを考えながら最後の一本だと思い切り紫煙を飲み込んだ。
それからしばらくして食堂でマコトは何かに肩がぶつかった。それがここ二週間ほどあっていない飛鳥の肩だったことに気がついた。
「よぉ」
挨拶してきたのは飛鳥のほうだった。
マコトは少し会釈してその場を去ろうとした。すぐに去る理由などはないはずだった。が、なぜか煙草をやめたことに対して飛鳥に後ろめたさを感じた。
そもそも、やめた理由は・・・
「おい」
飛鳥はマコトの腕をつかんだ。久々にあったのにそれは冷たいんじゃないかと軽く笑ってぼやきながら。
それに対し、マコトはその手を思い切り振り払った。
「離してくれませんか」
出てくる一言も冷たい。マコトはさすがにやりすぎたかと後悔して飛鳥のほうをあわてて振り返った。
さすがに飛鳥もむっとした顔をしている。
「何だ、その態度?」
やばいとは思っているが謝る一言をマコトは飲み込んだ。そうしなければ禁煙した意味がなくなるのだ。
マコトは早歩きで外のほうへと向かった。飛鳥がその後を走って追いかける。
「本当にこないでください」
「お前が意味わかんねえ行動すっからだ。何だ?」
「とにかくほっといてください」
マコトが振り払おうとすると飛鳥は思い切り腕をつかみ、その勢いでマコトの頬を思い切り殴った。
「この俺が気ぃ使ってんのにその態度は何だ!!」
飛鳥の行動にマコトもだんだんといらだち始めた。しかし、彼は言い返すこともなくそこをさっさと立ち去った。
「・・・一緒にいるとまずいんだよ」
マコトは誰にいうわけでもなくつぶやいた。彼がこっそりと振り返るとその場でまだたったままでいる飛鳥が見えた。表情は見えないが影が悲しそうに伸びていた。
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