第2話 タバコのにおいに誘われて
このあと、マコトは授業を受けることはできなかった。宿題を忘れたために教室から追い出されたのだ。
「聞くだけでもいいじゃねえか・・・」
マコトはこの授業が好きというわけではなかったが、マコトの選考では特に重要と考えていた上に、クラスメイトに友人が多かった。だからいるだけでもマコトはよかったのだがそれを教師が許さなかった。
普段このくらいではいらだたない彼だったが、その日は何故か異常にむしゃくしゃした。
こんな時こそ精神安定に煙草だ、思い切り一人で吸ってやる。そう思ってポケットに入った煙草の箱を取り出してみると、空。財布を取り出してみると、空。
いやなことというのは続けざまに起こるものである。
そして、喫煙所にいたのは
「よう。」
案の定、飛鳥一人だった。
「飛鳥さん、すみません。一本恵んでもらいませんか?」
「は?やだよ。自分で買って来い。っていうかここに何でいるんだ?」
彼はむすっとしながら隣に黙って座った。
彼がガクッと肩をおろしているのを飛鳥はしばらく見て、後頭部を思い切り叩いた。
彼は苛立っているせいでうまくリアクションがとれず、黙って飛鳥のほうを見た。
一方、飛鳥はどうしてそんな態度を取られるのかわからず、すっと目をそらして
「ちっ、なんだよ、つまんねえな。」
といった。
その言葉に、マコトの苛立ちはピークを迎えてしまった。
マコトは飛鳥の肩を強くつかんでゆすった。
「いい加減俺で遊ばないでください!!俺はあんたのモノじゃない!!」
「うわっ!!!!」
いきなりのことに動揺した飛鳥はバランスを崩し椅子から落ちてしまい、肩をつかんでいたマコトも崩れ落ちた。
気がつくと飛鳥が寝そべって、その顔の両側にマコトが手をつく体制になっていた。
「いってぇ・・・何すんだてめぇ!!」
飛鳥は少し頭を打ったらしく、目の端に涙がたまっていた。
マコトはゆっくりと今の状況を考えた。いつもも上から目線だったが今は違う。小柄な彼が弱々しくこちらをにらみつけている。今は自分が主導権を握っている。
マコトはそのとき耳の横に心臓があるかのごとく、自分の鼓動が聞こえた。
強く打ったのか目がうつろでまた体制を直すことができない彼を見て、マコトの中で何かが弾けた。
息を吸うと先ほど飛鳥が吸っていた煙草の香りが体中に広がった。
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