第16話 プライドが高いやつを騙すと面倒

「…ニアタイスル…」

ティカにナイフを向けていた男が倒れた。まる焦げである。

 ティカが火山のごとく立っていた。目を見開き手に杖を握り締め、長い髪が完全に逆立っていた。

「ミサ、今のお話、本当ですの?」

 ティカは杖の力で出した炎ともはや同化していた。

「ええ本当ですよ、ティカさん。どうしますか?」

ミサが尋ねるとティカは般若のように口を曲げその杖を振り上げた。

「万死に値する!!」

 男たちが腰を抜かしだし、床を這いつくばりながら逃げようとしている。

「この虫けらども、私を侮辱しおって!火やぶりの刑に処しますわ!」

 床が一面の炎に包まれた。

 サタナは天井まで跳んで照明につかまった。彼はミサが大丈夫かと探すと、ユキとともにテーブルの上に座って残ったワインを飲みながら談笑していた。

―――こいつら、俺より悪魔に近いんじゃないか。

 そのとき一人の男がサタナを向いた。髪が八割燃えてなくなっている。

「おい、用心棒!何とかしろ!こういうときのために雇ったんだぞ!」

 サタナは足元の火が消えていることを確認して下に降りた。

「確かに俺の出番だな。」

「まだ、生き残りがおりましたの…」

 ティカの怒りの炎はまだ消えていなかった。彼女の髪の先も少しこげている。

もう一度杖を振ろうとするティカの手をミサが止めた。

「離しなさい、ミサ!」

「ティカさんがなにもしなくても…」

 ミサはサタナと目が合った。

 ミサが微笑みかけると、サタナは胸に手をあてお辞儀をした。

 そして、床に倒れる男たちを見回し、ゆっくりと目を瞑った。

「主よ、我、カリブ=サタナエル。裁きの力を我に。」

 サタナの周りを赤黒い光が囲み、次第にその光に彼が包み込まれ、光がだんだんと長く、巨大になっていった。その光の中からぬらぬらと光る鱗と緑色の鋭い目が出てきた。

 気を失っていない男たちはそのことを呪った。

「大蛇…」

 サタナは舌をちろちろと出した。

「俺だってお前らみたいな汚い男より、綺麗な女喰いてえよ。でも仕事だしな。」

 振り絞った力で逃げようとするものもいたが遅かった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――バクッ。

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