第14話 相手が焦るほうがいたずらは楽しい

「ねえ、その甲羅何なの?」

 老人が鏡を必死に隠し、ユキがその鏡を取ろうとする攻防が先ほどから続いていた。

「ちょっと見せてよ。」

「だめじゃ。」

「いいじゃん。」

「だめじゃ。」

 ユキは頬を膨らまして老人を睨んだ。目をそらす老人。

「………あ!!!!」

 ユキは扉のほうを指差した。

 老人がそちらに目をやる。

 ユキはその瞬間を狙って鏡を取り上げた。

「!」

「今時こんな手にひっかかるなんて、亀さん偉いね。」

 老人の顔がこれ以上無いほど青ざめた。恐らくもう一回驚かせたら顔が黒くなるのではないだろうか。

 ユキは鏡を老人の手の届かない位置まで高く上げてまじまじと観察した。彼女にはこれが何かあらかた予想がついていた。

「魔鏡でしょ?」

 魔鏡とはこの世界で言うと魔法に使う鏡である。そう、彼女の継母も持っていたものだ。ただ、あの意思を持った鏡は特殊でほとんどは術に使う道具だ。

 いろいろなことに疎い彼女も七人の小人に教わっていたので少しは勉強していた。

「ねえ、これの名前はなんていうの?」

「…タマテバ鏡。」

「玉手箱?」

「タマテバ鏡。」

 ユキはふーんといいながらまた鏡に目をやった。

「亀さん知ってる?玉手箱は開けるとみんなおじいちゃんになるんだよ。」

 震えた老人の耳にはその言葉は届いておらず、ただ返してと繰り返していた。

 たちのかなり悪い悪がきがにやりと笑う。

「タマテバ鏡は割ったらどうなっちゃうのかなぁ?」

 老人の顔が黒ずんだ。もう泣きそうである。

「えい。」

パキンッ

心地よい高い音をたて、鏡は真っ二つに割れた。

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