2 訳あり幼馴染み
家を出ると、太陽の日差しが俺を照りつける。四月だと言うのにここ最近は、昔より朝から強い日差しが差し込むことが増えた気がした。そんな時だ。隣の家から「ガチャ」とドアが閉まる音が聞こえてくると俺は、条件反射かの様に右手に建っている家の玄関を見る。そこには、俺の着ている白いブレザーにチェク柄の女子用スカートを履いた女性が少し遅れながら家から出てきた。彼女の視線は、家の中へと向けていることからまだ親と話しているみたいだ。俺は、まだ両親と会話をしている彼女が着こなしている新しい制服姿に自然と目が奪われていた。彼女は、そこらの女子高生に比べれば、きゅっと引き締まったモデルの様なスタイルに目のやり場が困る。その制服似合っているね。そう言いたいのだが、俺の思いは彼女には届かない。そんな目線に気がついたのか、女子高生は、こちらを向くと折角似合っていた制服を両腕で隠す様にしてから俺に背を向ける。
「──変態」
そう言い残して彼女──
俺と陽葵は、幼馴染だ。他にも二人居たが、お隣である田屋家には料理の出来ない父さんの代わりに良くお裾分けに来てくれたことから家族ぐるみで陽葵とは付き合いが長いのだ。
当然昔は今のような関係ではなく、よく近所の公園などで楽しく遊んでいたのだが……。
ある日を境に陽葵は、俺に冷たくなった。理由は、一つしかない。
5年前の11歳の頃、いつものように俺と陽葵は外へ出ては仲良く遊んでいたのだが、子供を誘拐する犯罪異星人によって捕まったのだ。陽葵や他の子供たちを誘拐して自分たちの私利私欲の為にに使おうとする異星人を許すことが出来なかった俺は、怒りで我を忘れ暴れてしまったのだ。そこからの事は記憶が曖昧で、気が付くと誰も居なくなった後ろで一人座り込みながら泣き続ける陽葵の姿が俺の脳裏に刻まれている。それ以降、彼女から俺と接することをしなくなった。きっと事件のことを思い返すのが辛いのだろう。俺は、あれから冷たく接する陽葵を見てそう思うようになった。会話なんてあの日からろくにした事がない。常に言われるのは、「キモい」や「変態」と言った罵声のみだった。
まぁ、自業自得なんだけど……。と自分のした行いを反省しながら俺は、陽葵のあとを追うかのように家から出発した。
20年前の異星人からの防衛戦争を得て日本は大きく変わった。16の歳つまり高校生になると同時にある一つの条件をクリアした子供たちは、地球警備隊の予備学生になる。地球人が、異星人の侵略から自らの手でこの星を守る為の警備隊。それが地球警備隊だ。日本に本部を置くこの組織の予備生が集まる警備隊専門高等学校は、完全寮制度で三年間防衛のための知識や異星人と戦える戦士としての素質を磨く為に親元を離れて日夜勉学に励んでいる。そして、俺は書面などの一次審査を突破してしまい、今日から警備隊専門高等学校に通うことが義務化されているのだが、正直怖いと思っている。事前に検索しても何も出てこない情報の少なさと参加してリタイアした人のコメント「生き地獄」それが頭から離れないでいた。ましては、俺は昔に世界を救った英雄の息子だ。他の奴から注目される分、他人に隠している事が一つある。その為、「裏口入学」などと言われたくないのだが。入学義務を記した紙が届いたからには、必ず入学しなければならない。正直、地球慣れしていない父さんを置いて一人暮らしをするのには抵抗があるのだが、あれだけ家を出る前に励まされてしまえば、心配してもしかたない。
俺は、陽葵とは数メートルの距離を置きながら目的地のバス停までたどり着く。ここで、警備隊の人が迎えに来るのだが……まだ着いていないみたいだ。
「えっと、陽葵さん。」
俺は、この無言の圧に耐えられず思わず目の前にいる彼女の名を呼ぶ。陽葵は、静かに本読んでいたが、俺の声を聞くなり本を鞄にしまうと明らかに話したくないオーラを出しながら鋭い眼光で俺を睨みながら話し始めた。
「何?あなたと話していると暇ないんだけど?」
「まぁ、そう言うなって……幼馴染だしさ、少し話そうぜ?」
ここで退いてしまえばこの先も話す機会がない。そう思った俺は、眼光に耐えながら答えるとため息をこぼした陽葵が右手でゆっくりと手招きしながら話し始める。
「──話すのにそんな遠くにいたら周りに迷惑でしょ?」
「そ、そうだな。じゃあお言葉に甘えて」
俺はそう言いながら陽葵の横に並ぶ。数年ぶりにここまで近づいたせいか、心臓の鼓動が少し早まるのを感じた。チラと陽葵の方を見ると彼女はしまったはずの本を再び取り出して続きを読み始めた。この状況に俺は、戸惑うと数秒の間が空いてから陽葵の口が再び動いた。
「──で、話したいことって?何も無いなら離れてくれない?」
凛とした表情でそう言われた俺は事前に何を話そうか考えていたのだが、彼女の冷たい態度のおかげですっかり忘れてしまった。何かを言わなければと焦る。珍しく隣にいるのだ、ここで挫けるわけにはいかない。数年ぶりにまともな会話が出来る。これまで密かに会話練習をした成果を発揮しなければ。俺は、意を決した覚悟で口を開こうとした時だった。
「──あれ?ひまりっちにのあっちだ!」
俺達ふたりのことを遠くの方から呼ぶ声が聞こえた。俺は、その声の方をむくと俺たちをみつけ嬉しそうに駆け寄る女子生徒の姿があった。同じ真新しい制服を着た生徒は、宝石のような赤い髪を後ろで一つに束ねたポニーテールが特徴的な俺や陽葵の幼馴染、
「彩花、おはよう!」
彼女を見るなり陽葵は、すぐさま彩花の方へと近づくと元気よくハイタッチして笑顔を向ける。それが彼女本来の表情なのだ。陽葵は、良く喜怒哀楽の激しい明るい人なのだ。そんな彼女の笑顔の向け先が俺出ない事に少し落ち込みながら肩を落とすと、その肩を励ますかの様にトンと誰かが叩いた。
聖王伝説~地球に選ばれた勇者の話~ ミヤイリガイ @ryusei120525
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