モスバーガー
もう二月も終わりというのに、風は冷たく吹付けて、コートの隙間に風送り、体はぶるぶる寒さに震え、スマートフォンの画面を見れば、時刻は午後一時を過ぎて、昼も
と、駅前までとぼとぼ歩き、ちょうどいいところに、目の前に緑の建物、モスバーガーが構える。
入ってレジへ向かえば、茶色がかった黒髪の映えた、可愛らしい女の子だった。背は自分より低い、黒く潤う純粋気な丸い瞳が、此方を見つめ、
「ご注文は?」
予め決めておいた品を、僕は即座に、
「モスバーガーのポテトセットを」
と少し小声で言う。
「はい?」
店員さんが小首を傾げて問い返す。
僕はまた、「モスバーガーのポテトセットを」
少し小声。
「はい?」
目を合わせれば、やはり純粋気な瞳が、此方を見つめ返す。ボソボソと喋る此方を馬鹿にした風情もない。
「モスバーガーの、このセットを」
小声で、指差す。
「はい、モスバーガーのポテトセットですね」
彼女は微笑んで、頬には笑窪ができていた。
ドリンクはアイスティーを頼み、席に着こうとするが、どうやら席は決まっているらしい、彼女がレジから出て案内をしてくれる。親切だ、と心中褒めそやす。
待っている間、なんとなしに、スマートフォンのカメラを見て髪を整えた。モスバーガーに来たのはこれが初めてだった。受け取って食べ終わると、僕は満足して店を後にした。
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